学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

月について

2009-11-30 17:15:28 | その他
ええ、月は綺麗ですね。満月、半月はもとより、雲のヴェールを通して見るのもさらなり。夜空を眺めていましたら、月について何か書きたくなりましたので、筆を取って、ひとつふたつ。

月とあるものを組み合わせてみると、とても面白い趣向が生まれます。月と松で男性的な威厳のイメージ。月とイチョウで女性の華麗な美しさのイメージ、月と桜で妖艶、月と薄で儚さなど、これらの趣向は、あくまで私の個人的なイメージですけれども、こうした月の楽しみ方もありますね。

日本の美術において、月がいつ頃描かれるようになったのか。あくまで私の持っている画集からではありますが、13世紀頃の曼荼羅から多く見られるようです。これ以降は、蒔絵、屏風、浮世絵、あるいは戦国武将の兜の前立てなどにもデザインされて幅広く登場します。

文芸では、いわずもがな『竹取物語』(10世紀頃)がありますね。『枕草子』の「月のころはさらなり」の一文もありますし、『更級日記』にも月に対する一文が見られます。(おそらく『源氏物語』にもあるのでしょう)

私が生まれるずっと昔の人たちも、今と変わらぬ月を眺めていたと思うと、何だか不思議な心持がします。現在と過去をつなぐような月。改めて良いものだな、と思います。今日はそんな月について思ったことを書いてみました。
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大掃除をしないために

2009-11-26 18:19:46 | その他
昨日の願い叶ったか、今日はとても暖かい陽気でした。あまりに気持ちよくて、家でじっとしてはいられず、午前中から美術館やギャラリー巡り。帰ってきたときには、もう日が暮れて、寒くなって、もっと早く帰ってくるべきだったとちょっと後悔。しかも予定立てていた年賀状の図案も描いていない始末で(笑)

さて、もうすぐ年末。年末と言えば、大掃除。換気扇、エアコン、窓拭き、いらないものは捨てて…やらなければならないことが山ほどあって、毎年一日では絶対に終わらないのです(一日で終わらそうという私に問題があるのかもしれないけれど:笑)もう、大掃除、なんて気合を入れてやるのはよそう!それには日ごろから綺麗にしていればいい、という話でしょう、と思った私。

そこで私が実行しているのは、部屋を7ブロックに分けて、月曜日はキッチン、火曜日はクローゼット、水曜日はリビング…と週ごとに変えて、一日15分だけしっかりやるというもの。15分ならめんどうくさがりの私でも平気(笑)今のところ順調に掃除がなされていますが、さて、年末まで続きますやら。掃除をすると、身が引き締まる思いがします。このいい習慣、継続できたら、と思います!
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年賀状の季節

2009-11-25 21:20:03 | その他
日中はコートを羽織らなくてすむほどに、とても暖かい一日でした。戸外が晴れていると、気分も爽快になりますね!

郵便局に勤めている友人から、年賀状販売の案内がメールで届きました。そう、もう12月になるんですね。光陰矢の如し、と申しますが、改めて月日が経つのは早いいものと実感させられました。毎年、私は木版画で年賀状を送っています。来年は寅年。長沢芦雪風の寅を描いて、背景を銀で摺ると、なんだか古めかしい屏風のような年賀状になって面白いかな、と頭の中では考えているのですが、なかなか行動に移せません(苦笑)

幸いにも?明日はお休みです。年賀状の図案を描いて(友人に年賀状も注文して)、美術館やギャラリーを巡って、のんびり過ごしたいと思います。明日も晴れてくれることを祈ります!
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仙台の夜はやさしく

2009-11-24 20:15:59 | その他
ここ数日、実家へ帰省していました。昨日、今日と暖かな陽気。今朝は朝早く起きて(起されて)、のんびりと散歩に出かけました。しかも、千鳥足で。なぜ、千鳥足なのかはご推察のほどを…(笑)

昨日は仙台で食事会を楽しみました。待ち合わせ場所へ行く前に、しばらく仙台の街をぶらぶらと。本屋へ立ち寄ったり、光原社(宮沢賢治が命名したお店です)で民藝品にうっとりしたり、アーケード街のイルミネーションに驚かされたり。連休最終日、買い物客で街は大変にぎわっていました。

さて、肝心の食事会は、とてもおしゃれなお店!美味しい食事にお酒が入れば、話も尽きず、楽しい時間はあっという間でした。ほんとうに楽しい時間ほど、早く過ぎてしまうのですよね(泣)

帰り道、仙台駅へ向かっていると、ストリート・ミュージシャンが音楽を奏でていました。街は変わってゆくけれど、私の大学時代と変わらない夜の仙台。そして…用心していたものの電車の中でついうとうととしてしまい、危うく降りそこねるところでした。ちょっとだけ眼をつぶって、なんて思うと、もうだめなんですね(笑)

仙台の街を楽しみ、素敵な方々と食事をして、気合がしっかり入ったところで、また明日から頑張ります!
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中村真一郎『雲のゆき来』

2009-11-21 22:11:31 | 読書感想
私は芥川龍之介の小説が好きで、特に昨年は暇さえできれば本を開いて読んでいました。私が持っていたのは岩波文庫版で、解説はいつも中村真一郎さんが担当。簡潔で明快な芥川小説へのコメントが書かれています。ただ、私にとっては記憶の片隅に残る程度で、中村さんがどんなことをされた方なのかは存じ上げませんでした。それから一年。ひょんなことから、中村さんの小説を読むことになった次第です。

中村真一郎さんは戦後に小説、評論、翻訳などで活躍された方。今回読んだ『雲のゆき来』は…あらすじがちょっと書きにくい(苦笑)「私」が江戸時代の僧侶、文筆家であった元政上人の詩的考察を行いながら、父への憎しみを抱える若い国際女優と旅をすることで、文明に対する批評をするというもの。これではわけがわかりませんね(笑)うまく書けなくて申し訳ありません。…序盤、漢詩に深く精通している人ならば、中村さんの文章は頭に入るのでしょうが、私にはちょっと難しすぎました。しかし、文章内での小説の問題、批評家たちに対する堂々とした主張には興味深いものがあります。アイロニーが効いていて、クスッと笑いそうにも。

私小説ではなく、小説の体裁を取りながら、様々な評論を行ってゆく手法。ちょっと私が今まで読んできた小説とは一味違うもので、ああ、小説にはこうした書き方もあるのだなあと。中村さんの『空中庭園』は人気があるそうです。機会があれば読んでみたいと思います。

●中村真一郎『雲のゆき来』 講談社文芸文庫 2005年
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東京都現代美術館「レベッカ・ホルン展」

2009-11-20 18:00:06 | 展覧会感想
冬になると空気が澄んで、夜空がとても綺麗に見えます。小学生の時分、私は天文学者になるのが夢でした。これは卒業アルバムにきちんと書いてありますから、少なくとも思い違いではありません(笑)もしも天文学者になっていたら、今頃どんな生活をしていたんでしょうか。帰り道、星空を見上げながら空想に心を遊ばせてみた次第です。

さて、東京都現代美術館ではドイツの現代美術家レベッカ・ホルンの展覧会が開催されています。会場には機械仕掛けのアートがずらり。作品の前に立つと「どんな動きをするんだろう」と期待感が湧き上がり、いざ動き出すと息をのみ、ピタッと止むと、感心したり、疑問が膨らんだり…。機械仕掛けのアートで、心も動かされます。なかでも《アナーキーのためのコンサート》、これは逆さに吊られたピアノが音楽を奏でるというもの。私たち、逆さに吊るされたピアノの音を聴く機会なんて、一生のうちに一度もないわけですよね。モーツァルトもベートーベンも逆さになったピアノの音は聴いたことがないはず(笑)それをやってしまった面白さ。15分おきに音が鳴るそうです。

「レベッカ・ホルン展」はアートとサイエンスの世界。サイエンス、といえば先日日本の3D技術分野の研究が進み、様々な用途での使用が見込まれるとのニュースを耳にしました。いずれ、テレビも3D技術で立体的に番組を楽しめる、なんて時代が来るのかもしれません。そしてアートにおいても3D技術を利用した新しい表現方法が生まれてくることでしょう。時代が進み、これからどんなアートが生まれてくるのか、楽しみですね!
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サントリー美術館「清方ノスタルジア」展

2009-11-18 21:38:02 | 展覧会感想
吐息が見えるほど寒かったのですが、雲から日がのぞいたので東京へ行ってきました。予定通り3つの展覧会を見てきましたが、やはり疲れました。疲れると自然とまぶたが重くなります。私は眼をこすりながら、文章を書いている次第です(笑)

まず、サントリー美術館で開催されている「清方ノスタルジア―名品でたどる鏑木清方の美の世界」展を見てきました。今日が初日なんですね。鏑木清方(かぶらききよかた)は、明治から昭和にかけて活躍した日本画家です。元々は新聞の挿絵や着物の図案を描いて生計を立てていましたが、次第に日本画へ移行していきます。

この展覧会では、清方のホームグランドが日本古典文学と浮世絵(木版、肉筆)であったことがよくわかる内容になっています。それらに着想を得て、自分なりに消化していたのですね。清方の描く女性は、華のある着物を身にまとい、しなやかで艶があります。何気ない生活のなかにある女性の姿を捉えている、理想化されたフォルムに感嘆しました。

また、清方の仕掛けがとても面白い。《嫁ぐ人》は花嫁になる女性をみんなでお祝いする図ですが、花嫁の左薬指を見ると、結婚指輪が隠れていて、ちょっとだけ見えるだけなんですね。どんな指輪なのかは見る人にゆだねられるわけです。また、《一葉》は小説家樋口一葉の肖像。周りの道具から針仕事をしていることがわかるのですが、一葉の指に注目するとちょっとだけ赤い。これは一葉が慣れない家事をして生計を立てていた、ということを示すもの。清方は一葉の小説を読むだけでなく、きっと彼女の歩んだ人生についても取材していたんでしょうね。このほかにも、女性の後姿だけを描き、見る人に女性の表情を自由に想像してもらう遊び、あるいは虫を描かずに虫の存在感を出す工夫など、ちょっとしたことなんですが、非常に一点一点が練られて制作されていることがわかります。

とても面白い展覧会です。来年1月11日までの期間ですので、ぜひご覧下さい!


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絵画の順番について

2009-11-17 21:11:58 | その他
明日は休日を利用して、東京の美術館で展覧会を見てきます。ただし、晴れて暖かければの話ですけれど(笑)

予定では、サントリー美術館の鏑木清方展、山種美術館の速水御舟展、そして東京都現代美術館のレベッカ・ホルン展を見に行きます。3つは少し欲張り過ぎかもしれません…自分の体力と相談しながら、ですね。

さて、1日に2つ以上の展覧会を見る場合、私は展覧会を回る順番を意識します。交通の便で、ということではなく、絵のジャンルで順番を決めるのです。

①「版画」―②「日本画」―③「油絵」―④「現代アート」

これは言葉として適切ではないかもしれませんが、一般的な絵の強さの順番。私の場合、この順番に見ていくと比較的じっくり絵が見られます。初めに現代アートを見てから、浮世絵などの小さな「版画」を見ると、どうにも違和感といいますか、深く考えて見られなくなってしまうんですね。この感じ方については、いずれブログでテーマとして書いてみたいとは思うのですが、上記のような順番で見ると、私はしっくりきます。

明日晴れることを祈って、展覧会を楽しんできたいと思います。
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コレット『青い麦』

2009-11-16 18:50:38 | 読書感想
シドニー=ガブリエル・コレット(1873~1954)は、フランスの作家。『青い麦』は、彼女が50歳のときに出版した小説です。

夏のブルターニュ海岸を舞台とした16歳のフィリップと15歳のヴァンカの物語。幼馴染の2人は、お互い意識し合いながらも、恋にはちょっと不器用。ある日、フィリップは、ある夫人の怪しい魅力に誘惑されて関係を持ってしまいます。それから夫人の家へ通うようになりますが、ヴァンカには知られたくないため、何でもないように振舞うフィリップ。ヴァンカは何も知るまい、そう鷹をくくっていたのもつかの間…。

物語全体の流れとして、当初はフィリップの強さが随分出ていますが、夫人と関係を持った辺りから、次第にヴァンカの強さ(女性の強さといってもいいかもしれません)が前面に出てきて、フィリップが圧倒されていくような印象です。フィリップがどう動いても、結局はヴァンカの手のひらから出られないような…怖い話だなあと(笑)『青い麦』は青春小説とされますが、ただのロマンチックな話ではありません。登場人物の心理描写、特に若いがゆえの移ろいやすい心を恋愛を通して緻密に書いています。

私はあまり知らなかったのですが、近年コレットの評価がどんどん上がってきているとか。ある評論家によれば、20世紀のフランス小説はプルーストとコレットに尽きると言っても過言ではないそうです。コレットの代表作は『シェリ』。機会があれば、いつか読んで見たいなと思います。

●コレット『青い麦』 手塚伸一訳 集英社文庫 1991年
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ブリヂストン美術館『読むブリヂストン美術館』

2009-11-14 18:39:29 | 読書感想
『読むブリヂストン美術館』は、東京都京橋にあるブリヂストン美術館のカタログです。カタログといっても、展覧会のカタログではなく、自館の所蔵作品を紹介する内容になっています。

古代オリエントとギリシア・ローマから始まり、フランス近代絵画、版画、ピカソやブラックら20世紀美術、そして日本の近代絵画。石橋正二郎氏が生涯をかけて収集した作品を豊富な図版と丁寧な解説によって構成し、特に近代から20世紀美術まで続くアートの流れをたどることができる仕組みになっています。また、本からはコレクションを通して、多くの方々に絵を楽しんで見ていただければ、との美術館の想いが伝わってきます。それは館におられる学芸員の方々のコレクションに寄せる愛情と等しいともいえるのでしょう。

私が持っているカタログは、書き込みや読み過ぎでボロボロになってしまいましたが、おかげでとても勉強させていただきました。自館のコレクションをいかに魅力的に伝えるか、それは主に展覧会や図録、教育普及事業、あるいはインターネットを通してになるのでしょうが、絶えず意識して取り組むべきことだと、読むたびに思います。

●ブリヂストン美術館『読むブリヂストン美術館』2001年
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