●TPPやTFAは経済ブロック協定
TPPは、貿易自由化ではない。貿易不自由化だ。
経済ブロック協定=仲よしクラブの中心の米国は、対中国戦略=中国排除政策を考えている。米国は、日本は入れるが、中国は入れない。
中国には、TPPに加入するメリットはない。TPPに中国が加入しようと加入しまいと、中国の輸出は伸びる。
TPPにISD条項があることからしても、中国の参加はありえない。
●TPP=中国排除政策への中国の対抗策
米国がTPPで日本と組めば、中国は別のところと組む。中国はすでにアジア諸国と組んでいるが、EUとFTAを結ぶ可能性がある。EUの関税は米国の倍ぐらいあるから、中国にとって輸出増となるメリットがある。EUにとっても、中国が関税を下げるメリットがある。EUといっても独国が中心だ。独国は歴史的に中国と深い関係がある。だから、中国版新幹線もシーメンスがとった。フォルクスワーゲンも中国で強い。そういうことが拡大されて、中国市場は独国に席巻される可能性がある。
日本は、自動車生産のための部品や機械(中間財)を輸出している。日本の最大の輸出先は中国だ。
中国とEUが結べば、日本車は排斥される。日本は輸出の生命線を失う。TPPによって、日本の製造業は壊滅する。
●経済効果のないTPP参加
野口の試算によれば、TPP参加で増える輸出はわずか0.4%だ。10月25日に内閣府が出した試算でも、TPPの経済効果は年平均0.5%だ。
要するに、TPP参加による経済効果はほとんどない。
米国に対する自動車輸出は、もう望めない。経済危機前は、住宅ローンで車を買っていた。しかし、2007年にキャッシュアウト・リファイナンスのメカニズムは崩れた。だから、もはや関税の問題ではない。
関税より為替変動効果のほうが大きい。
●国際経済の中で日本はどうすべきか
島国が生きる道は、英国のように、世界中と付き合うことだ。それこそ貿易自由化だ。
第二次世界大戦の遠因となった世界経済のブロック化、戦後のEUやNAFTAには反対だ。
以上、記事「野口悠紀雄がTPPに吠える TPPで崩壊するのは製造業だ」(「AERA」2011年11月21日号)に拠る。
*
TPPに参加すると、製造業が打撃を受ける。殊に、日本の製造業が打撃を受ける。何故か。
APECで参加表明すると、TPP参加国の承認が必要になる。米国の場合、交渉参加の90日前までに議会に報告し、上下院の承認を得ることになる。しかも、議会承認の前に事前協議を行う必要がある。
根回しのような事前協議では、例外が設定されることなく、あらゆるものが対象になる。日本の除外項目が認められる余地はない。日本が除外項目を要望できるのは、米議会で承認された後、交渉が始まってからだ。【外務相の担当者】
事前協議(3ヵ月程度)を経て交渉に参加する2012年春から夏頃には、ルール作りはほぼ終了する。日本は関与できない。【政府の内部文書】
ところが、これまで政府は、APECでTPP交渉への参加表明をすればルール作りには間に合う、と説明してきた。
漆原良夫・公明党国対委員長は、11月6日、NHK公開討論番組で、ルール策定作業への日本の参加は実質的に困難になりつつある、と米側が指摘した政府内部文書について質問したが、平野博文・民主党国対委員長は、よく知らない、と答えるだけで、政府の情報隠蔽/改竄疑惑を認めなかった。
ところで、事前協議で話し合われるのは、米国産牛肉の輸入規制のほか、保険、非関税障壁など。米国は、自動車の非関税障壁について、日本の自動車の低燃費やハイブリッドの技術を透明にせよ、と要求している。エコカーへの補助金も競争ルールに反する、とも言っている。【山田正彦・元農水相/「TPPを慎重に考える会」会長、於11月7日の集会】
日本の代表的な製造業である自動車にも悪影響を及ぼすおそれがあることが、今頃わかった、というのだ。
「農業だけが打撃を受ける」「農業対製造業」というTPP推進派の説明は、事実に反していた。
以上、横田一(フリージャーナリスト)「壊滅するのは農業だけじゃない 党内対立激化で野田政権も崩壊か」(「AERA」2011年11月21日号)に拠る。
*
情報隠蔽どころか、ろくに調べていない。
野田佳彦・首相は、11月11日の国会質疑で、ISD条項のことを「あまり詳しく知らなかった」と答弁した。
以上、直木詩帆/藤後野里子「TPPで製造業も壊滅、自殺行為」(「サンデー毎日」2011年11月27日号)に拠る。
【参考】「【経済】中国がTPPに参加しない理由 ~ISD条項~」
「【社会保障】TPP参加で確実に生じる医療格差」
「【社会保障】「貧困大国アメリカ」の医療 ~自己破産原因の5割強が医療費~」
「【経済】TPPとウォール街デモとの関係 ~『貧困大国アメリカ』の著者は語る~」
「【経済】TPP賛成論vs.反対論 ~恐るべきISD条項~」
「【経済】米国は一方的に要求 ~TPP/FTA~」
「【経済】伊東光晴の、日本の選択 ~TPP批判~」
「【経済】伊東光晴の、TPP参加論批判」
「【経済】TPPはいまや時代遅れの輸出促進策 ~中国の動き方~」
「【震災】復興利権を狙う米国」
「【読書余滴】谷口誠の、米国のTPP戦略 ~その対抗策としての「東アジア共同体」構築~」
「【読書余滴】野口悠紀雄の、日本経済再生の方向づけ」
「【読書余滴】野口悠紀雄の、中国抜きのTPPは輸出産業にも問題」
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TPPは、貿易自由化ではない。貿易不自由化だ。
経済ブロック協定=仲よしクラブの中心の米国は、対中国戦略=中国排除政策を考えている。米国は、日本は入れるが、中国は入れない。
中国には、TPPに加入するメリットはない。TPPに中国が加入しようと加入しまいと、中国の輸出は伸びる。
TPPにISD条項があることからしても、中国の参加はありえない。
●TPP=中国排除政策への中国の対抗策
米国がTPPで日本と組めば、中国は別のところと組む。中国はすでにアジア諸国と組んでいるが、EUとFTAを結ぶ可能性がある。EUの関税は米国の倍ぐらいあるから、中国にとって輸出増となるメリットがある。EUにとっても、中国が関税を下げるメリットがある。EUといっても独国が中心だ。独国は歴史的に中国と深い関係がある。だから、中国版新幹線もシーメンスがとった。フォルクスワーゲンも中国で強い。そういうことが拡大されて、中国市場は独国に席巻される可能性がある。
日本は、自動車生産のための部品や機械(中間財)を輸出している。日本の最大の輸出先は中国だ。
中国とEUが結べば、日本車は排斥される。日本は輸出の生命線を失う。TPPによって、日本の製造業は壊滅する。
●経済効果のないTPP参加
野口の試算によれば、TPP参加で増える輸出はわずか0.4%だ。10月25日に内閣府が出した試算でも、TPPの経済効果は年平均0.5%だ。
要するに、TPP参加による経済効果はほとんどない。
米国に対する自動車輸出は、もう望めない。経済危機前は、住宅ローンで車を買っていた。しかし、2007年にキャッシュアウト・リファイナンスのメカニズムは崩れた。だから、もはや関税の問題ではない。
関税より為替変動効果のほうが大きい。
●国際経済の中で日本はどうすべきか
島国が生きる道は、英国のように、世界中と付き合うことだ。それこそ貿易自由化だ。
第二次世界大戦の遠因となった世界経済のブロック化、戦後のEUやNAFTAには反対だ。
以上、記事「野口悠紀雄がTPPに吠える TPPで崩壊するのは製造業だ」(「AERA」2011年11月21日号)に拠る。
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TPPに参加すると、製造業が打撃を受ける。殊に、日本の製造業が打撃を受ける。何故か。
APECで参加表明すると、TPP参加国の承認が必要になる。米国の場合、交渉参加の90日前までに議会に報告し、上下院の承認を得ることになる。しかも、議会承認の前に事前協議を行う必要がある。
根回しのような事前協議では、例外が設定されることなく、あらゆるものが対象になる。日本の除外項目が認められる余地はない。日本が除外項目を要望できるのは、米議会で承認された後、交渉が始まってからだ。【外務相の担当者】
事前協議(3ヵ月程度)を経て交渉に参加する2012年春から夏頃には、ルール作りはほぼ終了する。日本は関与できない。【政府の内部文書】
ところが、これまで政府は、APECでTPP交渉への参加表明をすればルール作りには間に合う、と説明してきた。
漆原良夫・公明党国対委員長は、11月6日、NHK公開討論番組で、ルール策定作業への日本の参加は実質的に困難になりつつある、と米側が指摘した政府内部文書について質問したが、平野博文・民主党国対委員長は、よく知らない、と答えるだけで、政府の情報隠蔽/改竄疑惑を認めなかった。
ところで、事前協議で話し合われるのは、米国産牛肉の輸入規制のほか、保険、非関税障壁など。米国は、自動車の非関税障壁について、日本の自動車の低燃費やハイブリッドの技術を透明にせよ、と要求している。エコカーへの補助金も競争ルールに反する、とも言っている。【山田正彦・元農水相/「TPPを慎重に考える会」会長、於11月7日の集会】
日本の代表的な製造業である自動車にも悪影響を及ぼすおそれがあることが、今頃わかった、というのだ。
「農業だけが打撃を受ける」「農業対製造業」というTPP推進派の説明は、事実に反していた。
以上、横田一(フリージャーナリスト)「壊滅するのは農業だけじゃない 党内対立激化で野田政権も崩壊か」(「AERA」2011年11月21日号)に拠る。
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情報隠蔽どころか、ろくに調べていない。
野田佳彦・首相は、11月11日の国会質疑で、ISD条項のことを「あまり詳しく知らなかった」と答弁した。
以上、直木詩帆/藤後野里子「TPPで製造業も壊滅、自殺行為」(「サンデー毎日」2011年11月27日号)に拠る。
【参考】「【経済】中国がTPPに参加しない理由 ~ISD条項~」
「【社会保障】TPP参加で確実に生じる医療格差」
「【社会保障】「貧困大国アメリカ」の医療 ~自己破産原因の5割強が医療費~」
「【経済】TPPとウォール街デモとの関係 ~『貧困大国アメリカ』の著者は語る~」
「【経済】TPP賛成論vs.反対論 ~恐るべきISD条項~」
「【経済】米国は一方的に要求 ~TPP/FTA~」
「【経済】伊東光晴の、日本の選択 ~TPP批判~」
「【経済】伊東光晴の、TPP参加論批判」
「【経済】TPPはいまや時代遅れの輸出促進策 ~中国の動き方~」
「【震災】復興利権を狙う米国」
「【読書余滴】谷口誠の、米国のTPP戦略 ~その対抗策としての「東アジア共同体」構築~」
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「【読書余滴】野口悠紀雄の、中国抜きのTPPは輸出産業にも問題」
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