放射性物質汚染対処特別措置法(略称)が、除染を進めるため、2012年1月から完全施行される。
これに基づく政府の基本方針では、追加被曝線量が高い「除染特別地域」は国が除染し、一部地域を除いて2014年3月までに終える。除染特別地域には、現行の警戒区域、計画的避難区域も含まれる見とおしだ。これを除く地域の除染は、原則として市町村が担う。
国などによる本格的除染に先立ち、今夏以降、福島市は渡利地区や大波地区など、地域限定で実験的な除染事業を実施している。
だが、山内知也・神戸大学大学院教授は、今のやり方では除染はまったく無意味だ、と国、福島県および福島市を批判する【注】。福島県内の高線量地域に対して、とりあえず除染するのではなく、避難を呼びかけている。
山内教授は、次のように語る。
9月14日にも、住民の要請を受けて、6,700世帯が住まう渡利地区に行った。市立渡利小学校の通学路の側溝の上と住宅前の10ヵ所で計測すると、地上1cmで4ヵ所が22.6、11.0、10.0、5.5μSv/h、同じく50cmで5ヵ所が5.2、3.3、2.94、2.05、2.0μSv/hだった。
福島県南相馬市の特定避難勧奨地点では、地上50cmで2.0μSv/h以上だったら子どもと妊婦に避難を促すことになっている。その水準をはるかに超える高線量の場所が、福島市では今も児童の通学路だ。
山内らの放射線実験施設でも、内部の取り決めによいr、空間線量が1μSv/hを示したら人は退去し、立入りできない。
それとも比べものにならないひどい放射能汚染の中に、子供たちは放置されている。
同じ渡利地区の薬師町では、ある水路が普段は干上がっていて、この乾いた川底から1cm上で最高14.8、最低4.0、50cmで最高5.30、最低3.92、1mでも最高3.87、最低2.1μSv/hだった。そんな川底で、子どもたちが土埃にまみれて遊んでいる。
同じ薬師町のある個人宅の庭の億は、地上1cmで20、50cmで4.8、1mで2.7μSv/hだった。この家には4歳の子どもがいる。相当の外部、内部被曝を受けているものと推定される。近在の個人住宅5軒の庭も、地上1mで最高11.1、指定1.2μSv/hという高さだ。
福島市は、今夏、渡利地区の2小学校の通学路などを除染モデル事業の対象とした。しかし、家屋や道路などを高圧洗浄し、仮に除染できたとしても、それは水を通して放射性物質を別の場所に移しているだけのことだ。人間環境の線量を下げることにはならない。今の除染方法は、除染したその地区に絞っても効果は出ていない。前述の渡利小通学路の場合、除染前と除染後の線量を比較した福島市の報告をみても、各除染地点は平均で除染前の7割程度しか放射線量は下がっていない。地点によっては、除染前より逆にあがっていたり、ほとんど変わりなかったりもする。莫大な経費をかけても、現状の方法は予算の無駄遣いだ。
効果が余り出ない大きな原因は、除染方法にある。
側溝の汚泥を取り除いただけでは除染にならない。汚染のほとんどを占める放射性セシウムは、屋根の瓦、側溝のコンクリート、道のアスファルトの表面の数十μmの細かい穴の中にこびり付いて、高圧洗浄しても取れない。道路のアスファルトと側溝のコンクリートの隙間にも流れこんでいる。道路のアスファルト、側溝のコンクリートを剥がし、工事をやりなおさないといけない。塀がコンクリートなら、その上部も造り変える。庭の土なども3~5cmは削り取る。このやり方なら、放射性物質を他の場所に移し替えるだけのことにならずにすむ。
しかし、こうした除染を地区全体で完遂しようとすれば、かなりの年数がかかる。
その間、子どもたちは学校集団疎開させるなど、対策を打つべきだ。
【注】「【震災】原発>除染効果の有無(2) ~効果なし~」
以上、岩田智博(編集部)「国の除染では効果がない ~山内知也・神戸大大学院教授の怒り~」(「AERA」2011年11月28日号)に拠る。
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これに基づく政府の基本方針では、追加被曝線量が高い「除染特別地域」は国が除染し、一部地域を除いて2014年3月までに終える。除染特別地域には、現行の警戒区域、計画的避難区域も含まれる見とおしだ。これを除く地域の除染は、原則として市町村が担う。
国などによる本格的除染に先立ち、今夏以降、福島市は渡利地区や大波地区など、地域限定で実験的な除染事業を実施している。
だが、山内知也・神戸大学大学院教授は、今のやり方では除染はまったく無意味だ、と国、福島県および福島市を批判する【注】。福島県内の高線量地域に対して、とりあえず除染するのではなく、避難を呼びかけている。
山内教授は、次のように語る。
9月14日にも、住民の要請を受けて、6,700世帯が住まう渡利地区に行った。市立渡利小学校の通学路の側溝の上と住宅前の10ヵ所で計測すると、地上1cmで4ヵ所が22.6、11.0、10.0、5.5μSv/h、同じく50cmで5ヵ所が5.2、3.3、2.94、2.05、2.0μSv/hだった。
福島県南相馬市の特定避難勧奨地点では、地上50cmで2.0μSv/h以上だったら子どもと妊婦に避難を促すことになっている。その水準をはるかに超える高線量の場所が、福島市では今も児童の通学路だ。
山内らの放射線実験施設でも、内部の取り決めによいr、空間線量が1μSv/hを示したら人は退去し、立入りできない。
それとも比べものにならないひどい放射能汚染の中に、子供たちは放置されている。
同じ渡利地区の薬師町では、ある水路が普段は干上がっていて、この乾いた川底から1cm上で最高14.8、最低4.0、50cmで最高5.30、最低3.92、1mでも最高3.87、最低2.1μSv/hだった。そんな川底で、子どもたちが土埃にまみれて遊んでいる。
同じ薬師町のある個人宅の庭の億は、地上1cmで20、50cmで4.8、1mで2.7μSv/hだった。この家には4歳の子どもがいる。相当の外部、内部被曝を受けているものと推定される。近在の個人住宅5軒の庭も、地上1mで最高11.1、指定1.2μSv/hという高さだ。
福島市は、今夏、渡利地区の2小学校の通学路などを除染モデル事業の対象とした。しかし、家屋や道路などを高圧洗浄し、仮に除染できたとしても、それは水を通して放射性物質を別の場所に移しているだけのことだ。人間環境の線量を下げることにはならない。今の除染方法は、除染したその地区に絞っても効果は出ていない。前述の渡利小通学路の場合、除染前と除染後の線量を比較した福島市の報告をみても、各除染地点は平均で除染前の7割程度しか放射線量は下がっていない。地点によっては、除染前より逆にあがっていたり、ほとんど変わりなかったりもする。莫大な経費をかけても、現状の方法は予算の無駄遣いだ。
効果が余り出ない大きな原因は、除染方法にある。
側溝の汚泥を取り除いただけでは除染にならない。汚染のほとんどを占める放射性セシウムは、屋根の瓦、側溝のコンクリート、道のアスファルトの表面の数十μmの細かい穴の中にこびり付いて、高圧洗浄しても取れない。道路のアスファルトと側溝のコンクリートの隙間にも流れこんでいる。道路のアスファルト、側溝のコンクリートを剥がし、工事をやりなおさないといけない。塀がコンクリートなら、その上部も造り変える。庭の土なども3~5cmは削り取る。このやり方なら、放射性物質を他の場所に移し替えるだけのことにならずにすむ。
しかし、こうした除染を地区全体で完遂しようとすれば、かなりの年数がかかる。
その間、子どもたちは学校集団疎開させるなど、対策を打つべきだ。
【注】「【震災】原発>除染効果の有無(2) ~効果なし~」
以上、岩田智博(編集部)「国の除染では効果がない ~山内知也・神戸大大学院教授の怒り~」(「AERA」2011年11月28日号)に拠る。
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