語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【食】半致死量と摂取許容量 ~違いを知らないマルハニチロ~

2014年02月06日 | 社会
 (1)昨年12月29日のマルハニチロホールディングス事件(冷凍食品から高濃度の農薬マラチオンが検出)について、1月25日、容疑者が逮捕された。
 1月26日、マルハは「お詫びとお知らせ」を発表。今回の問題点として3点を挙げた。
  (a)従業員による農薬混入を許してしまったこと。
  (b)お客の申し出から商品の自主回収決定まで1ヶ月半かかったこと。
  (c)食品安全基準の認識に誤りがあったこと。

 (2)ここでは、(1)-(c)の社内の品質保証体制に係る問題点を指摘しておく。
 こうした回収騒ぎになるたびに、事業者の発表では、「1日に○○個食べないと健康に影響はでません」という但し書きが繰り返される。
 しかし、今回、マルハは影響を過小評価させようとしてとんでもないミスを犯してしまった。
 マルハは当初、記者会見で、急性参照用量ARfD(急性毒性が出ないようにするための基準値)と比較すべきところを半致死量(動物実験ですら半数が死ぬ量)の値を参考に、「20kgの子どもで、1回にコロッケを60個食べないと有害影響は出ない」と説明していた【注】。
 急性参照用量とは、1回の摂取量で有害影響が出ない値だ。動物実験で影響が出ない値の100分の1の値だ。
 12月31日には、マルハも自ら誤りを認め、訂正している。

 (3)問題は、なぜこんな間違いが起きたか、だ。
 12月30日、植田武智・科学ジャーナリストは、マルハの担当窓口に電話取材を行った。
 Q:子どもでコロッケを60個食べても大丈夫という根拠は如何?
 A:動物実験で体重1kg当たり1gのマラチオンを一度に摂取した場合に毒性が出ます。20kgのお子様ですと、20gになります。今回、一番残留濃度が高かった(15,000ppm)コーンクリームコロッケ(22g/個)の場合ですと60個という計算になったわけです。
 Q:今の値は、動物実験で毒性が発生した値なんでしょ? 安全率を掛ける前ですね?
 A:そこはですね・・・・えっと。
 Q:厚生労働省などには報告しているんですね?
 A:報告しております。

 (4)(3)の翌日、12月31二のマルハの記者会見では、佐藤信行・品質保証部長いわく、
 <ARfDを算出すべきところを、半数致死量を計算していた。食の安全にかかわる部署で検討したが、ARfDに関する知識もなかった。保健所に相談するのも忘れていた>
 「食の安全にかかわる部署」が安全基準のイロハも知らなかった、とは。
 間違って一口でも食べたら急性毒性が起きかねない商品が出回っている、という緊急事態において、マルハの体制はあまりにもずさんだ。

 【注】最高濃度(15,000ppm)コーンクリームコロッケは、何個で子ども(体重20kg)に影響がでるか。
  (a)1日許容摂取量(ADI)・・・・6mg 【1/53個分】
  (b)急性参照用量(ARfD)・・・・40mg 【1/8個分】
  (c)半数致死量・・・・20,000mg 【60個分】

□植田武智(科学ジャーナリスト)「半致死量と摂取許容量の違いを知らず? マルハニチロのずさんな認識」(「週刊金曜日」2014年1月31日号)
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 【参考】
【食】マルハニチロ農薬事件の背景 ~厳しい労働環境~