語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【米国】貧困と格差がさらに拡大 ~ねじれ国会と社会保障費削減~

2014年02月19日 | 社会
 (1)米連邦・州の緊急失業保険制度は、長期失業者のライフラインだ。
 これが、昨年12月28日に失効した。同制度は、2008年の導入後、11回延長されたが、昨年可決された2014・15年度の予算には期限延長が盛り込まれなかった。
 失業保険で何とか食いつないできた長期失業者には、先行き見通しが暗い年明けとなった。

 (2)失業保険給付期間は、通常は26週間。
 その期間内に再就職できない者への救済措置として、緊急失業保険制度が始められた。多くの州では14週間、失業率の高い州では上限47週間の延長が認められた。給付額は平均300ドル(31,000円)/週。
 今回の制ぞ失効で、すでに26週間受給した130万人への給付が打ち切られる。
 もし今後、延長措置がとられなければ、今年半年間で新たに給付が打ち切られるのは190万人となる。

 (3)米議会は上院で民主党が、下院で共和党が多数を占める「ねじれ状態」で、予算など政策をめぐって常に対立している。
 民主党と共和党とは、社会保障政策に大きな開きがある。民主党は予算審議で同制度の延長を強く押したが、共和党は景気上向きを理由に廃止を主張し、折り合いが付かなかった。

 (4)米連邦議会予算事務局は、この制度失効で、求職者の消費が押し下げられ、2014年の米国内総生産が0.2から0.4%下がる、と見ている。さらに、負の経済効果で、24万人の新たな雇用が失われる可能性がある、としている。
 2013年11月の失業率は7%で、緩やかに上がり気味とはいえ、求職者の130万人を切ろうという政策に非難の声が高まっている。
 その批判を受け、上院議員は超党派で制度の3か月延長を提案。オバマ大統領は、「タフな時こそ我々はお互いを切り捨てはしない」と3か月延長案を後押ししている。

 (5)保守派茶会運動から絶大な支持のあるランド・ポール上院議員は反論する。
 「失業保険延長はいいことのようだが、実際には失業者に害を与える。彼らを永遠に失業者とさせることになる」

 (6)社会保障費削減で苦境に立たされているのは、「フードスタンプ」受給者もそうだ。
 2009年、景気刺激策の一環として始まったフードスタンプ予算増額措置が昨年11月に打ち切られたのだ。
 現在の受給者は4,760万人、うち47%が18歳未満。国民の7人に1人が受給している。1人当たり平均受給額は133ドル(13,800円)/月。それが7%削減で、4人家族で36ドル(3,700円)/月、食費が削られる。他に削るところがなく、ギリギリで生活している世帯には痛手だ。

 (7)削減は、これだけにとどまらない。
 上下院は、財政赤字削減を理由に、フードスタンプ予算をさらに減らす予定だ。下院可決案は、今後10年間で受給者を400万人減らし、390億ドル(4兆円)を削減。これに対して上院案の削減額は40億ドル(4,200億円)。
 共和党はフードスタンプ不正受給を挙げ、受給資格を厳しくするよう提案している。受給カード転売など、不正は今までも指摘されてきたが、昨年末フードスタンプを所轄する農務省は、不正取引件数は全対比で1.3%と激減したと報告している。

 (8)財政タカ派の共和党ポール・ライアン下院議員は、セーフティネットのあり方に批判的だ。
 「健常者を依存と自己満足の生活へと押しやる。意志とやる気を彼らから奪う」
 政府はセーフティネットへの予算をおさえ、もっと雇用機会を重視すべきだ、とライアンは考える。
 しかし、将来の雇用機会を明確に打ち出さない限り、失業保険給付を絶たれた求職者は、低賃金の仕事を受けざるを得ない。失業率は下がるだろうが、経済格差はより広がる。

 (9)「全米市長会」(メンバー1,300)が、昨年12月、「食料援助とホームレス」調査(2012年9月から1年間、25都市の飢えとホームレスの広がり)の結果を発表した。 
 調査都市の83%で食料援助需要が増加し、52%でホームレス人口が増えた。全米で、昨年60万人以上(推定)がホームレス経験を持ち、うち3割強が家族だ。
 失業保険給付と食料費削減政策が社会的な大惨事を引き起こすのではないか、とレポートは警告している。

□マクレーン末子(在米ジャーナリスト)「民主は緊急失業保険制度を延長、共和は廃止で対立 折り合いつかず失効し、貧困と格差がさらに拡大へ」(「週刊金曜日」2014年1月17日号)
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