(1)安倍首相は、就任1年目にあたる昨年末、靖国神社を電撃的に参拝し、中国・韓国の十分に予測しえた反発と、米国の意外な不同意を招いた。
政教分離の原則からすれば、そもそも首相の靖国公式参拝自体が憲法違反と指摘する声も根強いが、安倍首相は靖国参拝後の記者会見でさりげなく、「この一年の安倍政権の歩みをご報告」してきたと語った。
(2)安部のこの一年・・・・
(a)3月、日銀総裁を取り替え、「異次元」金融緩和を断行。
(b)4月、「主権回復の日」に天皇皇后を招き万歳を三唱。
(c)7月、憲法第96条の先行改正を提唱するも、姑息との反発を受けていったん取り下げ。
(d)9月、集団的自衛権行使に道をつけるため、内閣法制局長官の首のすげ替え
(e)同月、福島第一原発の汚染水問題はコントロールされていると断言。2020年東京五輪・パラリンピックの招致に成功。
(g)10月、NHK経営委員に元家庭教師など4人の「お友だち人事」を断行。
(h)12月、一強多弱の国会を背景に、特定秘密保護法案をスピード採決。
(i)同月、防衛大綱を閣議決定、武器輸出三原則の見直しを示唆。
(j)同月、沖罠の仲井眞知事が「驚くべき立派な」と形容した振興予算(2021年度まで毎年3,000億円)を伝え、辺野古への移設同意を要請。
(3)「かくして憲法改正に邁進する環境を整えることができました」と、二礼二拍手一例・・・・だんだんとおぞましくなる。
せめて、参拝後の記者質問で、「特定秘密保護法や集団的自衛権の行使について「ご英霊」はなんと言ってましたか」と尋ねてほしかった。テレビ画面の中の安倍首相の表情の変化を見る、これこそ「国民の知る権利」ではないのか。
(4)(2)を見るかぎり、その目指す方向は一定していて、その逆はない。行けるところまで行き、形勢不利なら立ち止まる。ただし後退はせず、雌伏する。これが安倍政権の手法だ。靖国参拝に対する中韓の反発は織り込み済みなので、木で鼻をくくったように、「いつでもドアをオープンにし、謙虚に礼儀正しく誠意をもって説明する」とクリアエスのみだ。
メディアは、中韓の反発の真相を取材することなく、ここでもシニシズムに紙面や時間を割いているように見える。
いわく、中国の習近平体制は統治基盤の脆弱さを押し隠すために安倍首相の靖国参拝を反日感情に向けている。
いわく、韓国の朴槿恵大統領は経済政策で苦境に立たされているので、あちこちに従軍慰安婦像を建てる反日運動を鼓舞している。
これは、政治家の言動を公共の利益ではなく私利私欲のためのものだと決めつける「シニック・ナショナリズム」の典型的な言説だ。
その批判がなぜ外国の政治家にだけ向かい、自国の政治家に向かわないのか。
(5)最近、伊藤博文・初代韓国統監を殺害した安重根の記念館が、韓国の要請をきっかけに中国のハルビン市に建設された。
しかし、安倍政権は、中韓合作の対日批判を受け付けない。
官房長官は、安重根を「死刑判決を受けたテロリスト」と言い、首相は胸襟を開いて話し合おうとしか言わない。
(6)とはいえ、米国からの「失望」の表明には、さすがに首相周辺は狼狽したようで、次々に特使を米国に送り込んでいる。
1月4日には、小野寺五典・防衛大臣とヘーゲル米国防長官が普天間基地の辺野古移設について電話会談を行った。
翌5日朝のTBSニュースは、その際、安部首相の靖国参拝の真意は「不戦の誓い」であることを伝えたところ、米側からは「特にコメントはなかった」と報じた。これで「失望」のニュアンスが払拭されたかの印象を与えた。
直言のNHKニュースはさらに踏み込み、「防衛省によりますと、ヘーゲル長官は小野寺大臣の(靖国に関する)説明に感謝すると述べたということです」と報じた。
ところが、会談直後の米国防総省のプレス・リリースには、靖国について「ヘーゲル長官は、日本が近隣諸国との関係改善を進めることの重要性を強調した」と記されていた。
小野寺大臣は、誤情報を流し、TBS、NHKがそれを垂れ流したことになる。
これは明かな誤報だが、NHKは昼のニュースで問題の部分を何の注釈もなくそっくり落とした。メディアのモラルハザードは、誤報を隠すところまできている、ということか。
□神保太郎「メディア批評第75回」(「世界」2014年3月号)の「(2)春爛漫、安部カラーは乱調にあり」
↓クリック、プリーズ。↓

【参考】
「【NHK】呆れた新会長会見、幼稚で傲慢な偏向報道」
「【NHK】籾井会長の就任会見発言 ~どこが「間違いだらけ」か~」
「【NHK】支配計画 ~安倍晋三政権の計算がずれはじめた~」
「【NHK】権力と癒着し続けた歴史 ~NHK会長~」
政教分離の原則からすれば、そもそも首相の靖国公式参拝自体が憲法違反と指摘する声も根強いが、安倍首相は靖国参拝後の記者会見でさりげなく、「この一年の安倍政権の歩みをご報告」してきたと語った。
(2)安部のこの一年・・・・
(a)3月、日銀総裁を取り替え、「異次元」金融緩和を断行。
(b)4月、「主権回復の日」に天皇皇后を招き万歳を三唱。
(c)7月、憲法第96条の先行改正を提唱するも、姑息との反発を受けていったん取り下げ。
(d)9月、集団的自衛権行使に道をつけるため、内閣法制局長官の首のすげ替え
(e)同月、福島第一原発の汚染水問題はコントロールされていると断言。2020年東京五輪・パラリンピックの招致に成功。
(g)10月、NHK経営委員に元家庭教師など4人の「お友だち人事」を断行。
(h)12月、一強多弱の国会を背景に、特定秘密保護法案をスピード採決。
(i)同月、防衛大綱を閣議決定、武器輸出三原則の見直しを示唆。
(j)同月、沖罠の仲井眞知事が「驚くべき立派な」と形容した振興予算(2021年度まで毎年3,000億円)を伝え、辺野古への移設同意を要請。
(3)「かくして憲法改正に邁進する環境を整えることができました」と、二礼二拍手一例・・・・だんだんとおぞましくなる。
せめて、参拝後の記者質問で、「特定秘密保護法や集団的自衛権の行使について「ご英霊」はなんと言ってましたか」と尋ねてほしかった。テレビ画面の中の安倍首相の表情の変化を見る、これこそ「国民の知る権利」ではないのか。
(4)(2)を見るかぎり、その目指す方向は一定していて、その逆はない。行けるところまで行き、形勢不利なら立ち止まる。ただし後退はせず、雌伏する。これが安倍政権の手法だ。靖国参拝に対する中韓の反発は織り込み済みなので、木で鼻をくくったように、「いつでもドアをオープンにし、謙虚に礼儀正しく誠意をもって説明する」とクリアエスのみだ。
メディアは、中韓の反発の真相を取材することなく、ここでもシニシズムに紙面や時間を割いているように見える。
いわく、中国の習近平体制は統治基盤の脆弱さを押し隠すために安倍首相の靖国参拝を反日感情に向けている。
いわく、韓国の朴槿恵大統領は経済政策で苦境に立たされているので、あちこちに従軍慰安婦像を建てる反日運動を鼓舞している。
これは、政治家の言動を公共の利益ではなく私利私欲のためのものだと決めつける「シニック・ナショナリズム」の典型的な言説だ。
その批判がなぜ外国の政治家にだけ向かい、自国の政治家に向かわないのか。
(5)最近、伊藤博文・初代韓国統監を殺害した安重根の記念館が、韓国の要請をきっかけに中国のハルビン市に建設された。
しかし、安倍政権は、中韓合作の対日批判を受け付けない。
官房長官は、安重根を「死刑判決を受けたテロリスト」と言い、首相は胸襟を開いて話し合おうとしか言わない。
(6)とはいえ、米国からの「失望」の表明には、さすがに首相周辺は狼狽したようで、次々に特使を米国に送り込んでいる。
1月4日には、小野寺五典・防衛大臣とヘーゲル米国防長官が普天間基地の辺野古移設について電話会談を行った。
翌5日朝のTBSニュースは、その際、安部首相の靖国参拝の真意は「不戦の誓い」であることを伝えたところ、米側からは「特にコメントはなかった」と報じた。これで「失望」のニュアンスが払拭されたかの印象を与えた。
直言のNHKニュースはさらに踏み込み、「防衛省によりますと、ヘーゲル長官は小野寺大臣の(靖国に関する)説明に感謝すると述べたということです」と報じた。
ところが、会談直後の米国防総省のプレス・リリースには、靖国について「ヘーゲル長官は、日本が近隣諸国との関係改善を進めることの重要性を強調した」と記されていた。
小野寺大臣は、誤情報を流し、TBS、NHKがそれを垂れ流したことになる。
これは明かな誤報だが、NHKは昼のニュースで問題の部分を何の注釈もなくそっくり落とした。メディアのモラルハザードは、誤報を隠すところまできている、ということか。
□神保太郎「メディア批評第75回」(「世界」2014年3月号)の「(2)春爛漫、安部カラーは乱調にあり」
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【参考】
「【NHK】呆れた新会長会見、幼稚で傲慢な偏向報道」
「【NHK】籾井会長の就任会見発言 ~どこが「間違いだらけ」か~」
「【NHK】支配計画 ~安倍晋三政権の計算がずれはじめた~」
「【NHK】権力と癒着し続けた歴史 ~NHK会長~」