語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【南雲つぐみ】深い睡眠と寝返り

2017年12月02日 | 医療・保健・福祉・介護
 イルカやクジラは、泳ぎながら右脳と左脳を片方ずつ眠らせる「半球睡眠」という眠り方をしているそうだ。彼らは人間と同じ肺呼吸のため、定期的に水面に浮き上がらなくてはならない。全ての脳を眠らせてしまうわけにはいかないのだ。
 人間の場合は、レム睡眠とノンレム睡眠があるので、脳と体を交互に休ませているといえる。レム睡眠は、体は寝ているが脳が動いている睡眠。このとき夢を見る。
 反対に、ノンレム睡眠は、脳が寝ていて体は起きている睡眠。寝返りを打つのはこの睡眠のときだが、実は脳はしっかり眠っている。
 ノンレム睡眠には4段階の深さがあり、非常に深い3~4段階目の睡眠で免疫力を高める成長ホルモンが分泌されるという。だから、ゴロゴロと寝返りを打ちながら寝ている人を、起こそうとしてはいけない。
 深い睡眠を取る条件のひとつに、「気持ちよく寝返りが打てる」ということがある。枕やマットの硬さ、掛け布団の重さ、吸湿性、室内の温度も関係している。

□南雲つぐみ(医学ライター)「深い睡眠と寝返り ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年10月29日)を引用
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【本】元財務官僚のエコノミストが日本経済復活の処方箋を説く ~『日本を救う最強の経済論』~

2017年12月02日 | 批評・思想
★高橋洋一『日本を救う最強の経済論 バブル失敗の検証と後遺症からの脱却』(育鵬社 1,400円)

 (1)先の衆議院選挙において、自民党は選挙公約で2019年10月に消費税率を10%に引き上げる一方で、全世代型社会保障への転換などの“人づくり革命”を実現する、としていた。その財源は、10%となった消費税の一部が充てられるという。
 こうした中で、『日本を救う最強の経済論』は、経済政策の主眼は雇用であると謳い、アベノミクス以降の金融緩和により、成果が見られた、と指摘する。そして、この低金利下の財政支出の一案として「教育国債」を提案している。

 (2)本書は、計六つの章に分かれている。
  (a)第一~二章:日本の成功した経済政策と失敗した経済政策をまとめ、バブル時代の失政を検証する。
  (b)第三~四章:経済主義と財政主義の戦いを論じ、金融政策の効果について解説する。
  (c)第五~六章:日本経済の未来図を描く。
 具体的には、安倍政権を客観的に評価した上で教育国債を提案し、最後に戦争を防止するための経済学と地政学として、集団的自衛権について議論を展開している。

 (3)元財務官僚の著者は、日本の財政の大きな勘違いは、政府単体のバランスシート(貸借対照表)で考えてしまうことであり、日本銀行との連結ベースで考えれば純債務は激減する、という。そして、政府の財政状況はそれほど深刻に心配するようなものでなく、需要の減退によって不況が生じているとすれば、問題がない財政再建に注力するよりも大胆な金融緩和を行った方がよい・・・・と主張している。
 また、本書は、教育はその国にとって基礎を成す重要な政策だとし、教育は人を育てることであり、人への投資の意味合いが大きいとする。さらに、投資というのであれば、ゼロ金利などの投資環境の良い時期に集中してどんどんやるべきだ・・・・としている。

 (4)中でも「教育へ投資する場合には特別会計で予算とは別の財源を作り、教育国債を発行したらどうか」という提案が興味深い。
 背景には、現在の日銀が行っている金利管理型の金融政策では、政府が国債発行を増やさないと自動的に金融引き締めになりかねないことから、有形固定資産を作るために建設国債を発行するように、研究開発や教育そのものという無形資産に対して教育国債を発行すべき・・・・との著者の主張がある。
 一方で、著者は経済成長重視派の視点から、古巣の財務省やその周辺でうごめく財政再建重視派に対する批判も展開する。
 賛否両論あるだろうが、経済成長重視派と財政再建重視派の考え方の違いがしっかりと解説されている。

□永濱利廣(第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト)「元財務官僚のエコノミストが日本経済復活の処方箋を説く  ~私の「イチオシ収穫本」~」(「週刊ダイヤモンド」2017年12月2日号)
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 【参考】
【本】歴史を知らずに大人になる不幸 ~『戦争の大問題 それでも戦争を選ぶのか。』~
【本】私たちの食卓はどうなるのか ~工業化された食糧生産の脆さ~
【本】歪み増殖していく物語に迷う ~『森へ行きましょう』~
【本】加工食品はどこから来たのか ~軍隊と科学の密な関係~
【本】80年代中世ブームの傑作 ~『一揆』~
【本】万華鏡のように迫る名著 ~『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』~
『【本】『世界をまどわせた地図』
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~」」
【本】舌鋒鋭く世の中の本質に迫る/地球規模で読まれた洞察の書 ~『反脆弱性』~
【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~
【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~
【本】仮想通貨が通用する理屈 ~『経済ってそういうことだったのか会議』~
【本】進化認知学の世界への招待 ~『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『動物になって生きてみた』~
【本】「戦争がつくっった現代の食卓」 ~ネイティック研究所~
【本】IT革命、コミュニケーションの変容、家族の繋がりが希薄化 ~『「サル化」する人間社会』~
【本】生命はいかに「調節」されるかを豊富な事例で解き明かす ~『セレンゲティ・ルール』~
【本】メディアの問題点をえぐる ~『勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』~
【本】テイラー・J・マッツェオ『歴史の証人 ホテル・リッツ』
【本】中国から見た邪馬台国とは
【本】核兵器は世界を平和にするか ~著名学者2人がガチンコ対決~
【本】『戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係』
【本】梅原猛『梅原猛の授業 仏教』
【本】東芝が危機に陥った原因は「サラリーマン全体主義」 ~『東芝 原子力敗戦』~
【本】バブル崩壊後の経済を総括 ~『日本の「失われた20年」』~
【本】20世紀英国は実は軍事色が濃厚 ~通念を覆す『戦争国家イギリス』
【本】時代による変化、方言など ~『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』~
【本】冷笑的な気分に喝を入れる警告と啓発に満ちた本 ~『日本中枢の狂謀』~
【本】物質至上主義批判の古典 ~『スモール イズ ビューティフル』~
【本】日本近現代史を学び直す ~『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』~
【本】精神の自由掲げた9人の輝き ~『暗い時代の人々』~
【本】遊牧民は「野蛮」ではなかった ~俗説を覆すユーラシアの通史~
【本】いつも同じ、ブレないのだ ~『ブラタモリ』(1~8)~
【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
【本】読書の効用、ゆっくり丹念な ~より速く成果を出すメソッド~
【本】国谷裕子『キャスターという仕事』