語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【後藤謙次】脱走、漂着、密貿易 ~北朝鮮で連続的に異変が発生~

2017年12月06日 | 社会
 (1)2017年9月の国連安保理の北朝鮮制裁決議の実施強化後、北朝鮮国内で「何かが起きている可能性がある。2018年1月に大きなヤマ場が来る」(政府高官)という見方もある。確かに、これまでにない変化が起きていることをうかがわせる事態が連続的に起きている。

 (2)11月13日、韓国と北朝鮮を隔てる北緯38度線。その軍事境界線を挟んで南北の兵士が間近で向き合う板門店(パンムンジョム)で、北朝鮮兵士の脱走劇が起きた。北朝鮮兵士は銃撃を受けたが一命を取り留め、韓国内の病院で治療を受けている。
 22日に板門店の国連軍司令部が、まるで映画のような監視カメラが捉えた映像を公開した。発生直後に日本政府当局者が注目したのは亡命の動機だ。可能性として考えられるのは、
  (a)軍の規律が緩んでいて、たまたま脱走のチャンスが生まれた。
  (b)北朝鮮の体制に強い不満を抱いておりチャンスをうかがっていた--などとしているが、韓国政府は今も沈黙を守る。
 
 (3)この脱走劇と符節を合わせたように、日本の東北、北陸地方の沿岸部に北朝鮮の漁船が相次いで漂着している。11月に入ってその急増ぶりが目立つ。
  ・23日に秋田県由利本荘市に漂着した木造船では、8人の北朝鮮人の男が保護された。
  ・27日の同県男鹿市の漂着船からは8人の遺体が発見された。
  ・29日に10人を乗せた北朝鮮の漁船が北海道に漂着した。
 この時期の日本海は風が強く波も高い。日本の常識では粗末な木造船で漁に出ることはあり得ない。
 11月初めに朝鮮中央通信は「冬季漁業戦闘」と称し、国策としての漁獲量増大を命じた。背景には、北朝鮮国内の慢性的な食糧不足の深刻さがあると指摘されている。ただでさえ冬季は農産物の流通量が極端に減る。加えて今年は国連の制裁が追い打ちをかける。

 (4)トランプは中朝協議が不調に終わったのを見届けると、北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定した上で米国独自の制裁を発表した。
 その対象には中朝国境の街、丹東で暗躍していた中国人実業家がいる。それほど異例の圧力をかける。

 (5)しかし、表向きは国連制裁の強化で北朝鮮貿易の大半を占める中朝間の貿易が大幅に縮小したことになっているが、「密貿易」が後を絶たない。米国によるテロ支援国家再指定直後に丹東を取材したジャーナリストの証言は興味深い。
 丹東の港には今も中小の船が出入りを繰り返す。岸壁のガソリンスタンドには大量のポリタンクが並べられ、これを中国人の業者が船に積み込む。そして沖合で北朝鮮の船と落ち合う。そこで北朝鮮の鉱物資源や水産物との交換が行われる。北朝鮮では外貨の使用が厳しく制限されているため、物々交換で取引が行われるようだ。
 丹東に戻ってきた中国の船には漁具もないのにカニが満載されていたという。最近の特徴として、北朝鮮側からはガソリンだけでなくジャガイモやニンジンなどの根菜類のリクエストが増えているという。平壌ではガソリン価格が上がり、タクシー料金の値上げや市民の足となっている路線バスの本数が減ったという情報もある。
 こうした北朝鮮の厳しい状況を救っているのが「密貿易」というわけだ。中朝貿易が完全にストップしてしまえば、中朝国境付近で暮らす中国人も疲弊する。現に、成長を続ける中国経済の中で丹東が所在する遼寧省だけGDPがマイナス。“中朝共倒れ”となり、中央政府への不満が表面化する可能性も否定できない。

 (6)29日の弾道ミサイル発射は、北朝鮮があらためて国際社会の圧力に屈することはないとの強烈なアピールとみていい。米朝電撃対話の可能性は排除できない。しかし、日本側にこれを阻止する手立てはないのが現実だ。「圧力外交」の限界が見える。

□後藤謙次「脱走、漂着、密貿易…/北朝鮮で連続的に異変が発生~永田町ライブ!No.367」(「週刊ダイヤモンド」2017年12月9日号)
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【本】“立憲主義”の由来を知る ~『立憲非立憲』~

2017年12月06日 | 批評・思想
★佐々木惣一『立憲非立憲』(弘文堂書房、1918/講談社文庫、2016)

 元京都帝国大学教授の佐々木惣一は、戦後の憲法改正の草案作りに携わった。その佐々木が、帝国憲法下で立憲主義に基づく君主制(立憲君主制)の要諦を説いたのが本書である。民主主義を取り上げなかったのは、吉野作造が、民主主義ならぬ民本主義を唱えたことと通底する。
 ただ、行間には民主主義への道筋が滲んでいるし、王権や君権の制限とそれを担保する憲法の意義が、選挙で生まれる今日の政治権力にも十分妥当することに気付かされる。先の総選挙でも大きな話題となった憲法。その憲法とは、権力に箍(たが)をはめることによって国民の自由と権利を守り、かつ、国の進む方向を過たないようにするためにあることを、本書で今一度確認しておきたい。

□片山善博(早稲田大学大学院政治学研究科教授)「“立憲主義”の由来を知る ~名著未読・再読~」(「週刊ダイヤモンド」2017年12月2日号)
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 【参考】
【本】日本語特殊論に与せず ~『英語にも主語はなかった』~
【本】小国の視点で歴史を学ぶ ~『石油に浮かぶ国/クウェートの歴史と現実』~
【本】日本における婚姻を考える ~『婚姻の話』~
【本】元財務官僚のエコノミストが日本経済復活の処方箋を説く ~『日本を救う最強の経済論』~
【本】歴史を知らずに大人になる不幸 ~『戦争の大問題 それでも戦争を選ぶのか。』~
【本】私たちの食卓はどうなるのか ~工業化された食糧生産の脆さ~
【本】歪み増殖していく物語に迷う ~『森へ行きましょう』~
【本】加工食品はどこから来たのか ~軍隊と科学の密な関係~
【本】80年代中世ブームの傑作 ~『一揆』~
【本】万華鏡のように迫る名著 ~『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』~
『【本】『世界をまどわせた地図』
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~」」
【本】舌鋒鋭く世の中の本質に迫る/地球規模で読まれた洞察の書 ~『反脆弱性』~
【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~
【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~
【本】仮想通貨が通用する理屈 ~『経済ってそういうことだったのか会議』~
【本】進化認知学の世界への招待 ~『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『動物になって生きてみた』~
【本】「戦争がつくっった現代の食卓」 ~ネイティック研究所~
【本】IT革命、コミュニケーションの変容、家族の繋がりが希薄化 ~『「サル化」する人間社会』~
【本】生命はいかに「調節」されるかを豊富な事例で解き明かす ~『セレンゲティ・ルール』~
【本】メディアの問題点をえぐる ~『勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』~
【本】テイラー・J・マッツェオ『歴史の証人 ホテル・リッツ』
【本】中国から見た邪馬台国とは
【本】核兵器は世界を平和にするか ~著名学者2人がガチンコ対決~
【本】『戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係』
【本】梅原猛『梅原猛の授業 仏教』
【本】東芝が危機に陥った原因は「サラリーマン全体主義」 ~『東芝 原子力敗戦』~
【本】バブル崩壊後の経済を総括 ~『日本の「失われた20年」』~
【本】20世紀英国は実は軍事色が濃厚 ~通念を覆す『戦争国家イギリス』
【本】時代による変化、方言など ~『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』~
【本】冷笑的な気分に喝を入れる警告と啓発に満ちた本 ~『日本中枢の狂謀』~
【本】物質至上主義批判の古典 ~『スモール イズ ビューティフル』~
【本】日本近現代史を学び直す ~『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』~
【本】精神の自由掲げた9人の輝き ~『暗い時代の人々』~
【本】遊牧民は「野蛮」ではなかった ~俗説を覆すユーラシアの通史~
【本】いつも同じ、ブレないのだ ~『ブラタモリ』(1~8)~
【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
【本】読書の効用、ゆっくり丹念な ~より速く成果を出すメソッド~
【本】国谷裕子『キャスターという仕事』
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【南雲つぐみ】痛みを我慢しない ~痛みは異常のサイン~

2017年12月06日 | 医療・保健・福祉・介護
【南雲つぐみ】痛みを我慢しない ~痛みは異常のサイン~

 足をぶつけた後、痛みが続くので病院に行ったら骨折していたということがある。このように、体の痛みには、異変を知らせるサインであることが多い。無痛なら、骨折に気付かず、もっと悪化させてしまうからだ。
 痛みをサインだと考えれば、我慢するのはよくないと思うだろう。このサインを有効に使うためにも、体全体のことを考えて早めに対処したい。
 では、慢性の痛みはどうだろう。頭痛や腰痛、肩凝りなど、特に原因がなく長く続く痛みには、サインの意味も薄そうだ。だからといって、我慢するのはよくない。
 「痛みに強い人ほど、寝たきりになる」というのはペインクリニックを開業する富永喜代医師。著書である「気力をうばう『からだの痛み』がスーッと消える本」(アスコム、1,188円)では、我慢しないで早めに痛みのケアをすることを提案。さらに「痛みがあっても体を動かす」「怒ってばかりいる人は痛みが悪化しやすい(感情のコントロールをする)」などのアドバイスも並ぶ。
 痛みで気分が落ち込むときの、解消するヒントになりそうだ。

□南雲つぐみ(医学ライター)「痛みを我慢しない ~歳々元気~」(「日本海新聞」 20175年月19日)を引用
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【本】日本語特殊論に与せず ~『英語にも主語はなかった』~

2017年12月06日 | 批評・思想
★金谷武洋『英語にも主語はなかった』(講談社、2004)

 英語の授業が少ないと、大学のランキングが下がる時代になった。しかしながら、岡潔(1901~78年)という数学者は、英国留学から帰ってくると、未解決問題を解く前に『奥の細道』を熟読したという。英語万能にしてしまって、日本人の創造性は発揮されるのだろうか──。
 米国留学以来、そんな疑問を持っていた評者を「なるほど」と頷かせてくれた本だ。著者は、カナダ在住の言語学者。本書は、1066年の「ノルマンの征服」以降のフランス語という外国語支配によって、英語に主語が発生したと推測する。
 文法論から、「ここまで言えるのだろうか」というところもあるが、日本人には日本語を使いこなすことが大切だということを気付かせてくれる本である。

□松元 崇(国家公務員共済組合連合会理事長)「日本語特殊論に与せず ~名著未読・再読~」(「週刊ダイヤモンド」2017年月日号)
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 【参考】
【本】小国の視点で歴史を学ぶ ~『石油に浮かぶ国/クウェートの歴史と現実』~
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【本】国谷裕子『キャスターという仕事』

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【南雲つぐみ】腰痛ベルト

2017年12月06日 | 医療・保健・福祉・介護
 人は二足歩行に進化したことにより、腰痛の原因を抱え込んだといわれる。立つ、座る、歩く動きだけでも、腰には負担が掛かる。重いものを持つ、体をねじってしまった、運動不足で腹筋や背筋が弱ったなど、腰痛の原因はいろいろだ。また、内臓の病気から腰痛を感じることもある。
 腰の痛みが強いのに、動かなければならないとき、腰痛ベルトは役に立つ。ベルトを締めることで腰を支える筋肉の緊張を和らげることができるからだ。
 いろいろな種類があるが、「一般的に、症状が重ければ動きの制限の強い、長めのもの、硬い素材のベルトのほうが支える機能は高い」というのは、埼玉協同病院整形外科部長の仁平高太郎医師。ただし、愛用し過ぎるのは良くないらしい。
 「腰痛」に対してのベルトは急性期の2~3週間に限って使うようにして、楽だからといって慢性的に着けないでほしい」という。着け続けると腰の筋力低下がますますひどくなり、さらなる腰痛の原因になりやすいからだ。

□南雲つぐみ(医学ライター)「腰痛ベルト ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年11月9日)を引用
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【欧州】欧州各国が進める脱石炭の時期 ~意見が割れるドイツ~

2017年12月06日 | 社会
 (1)欧州では、日本以上に地球温暖化問題への関心が強い。各国で石炭・褐炭によるエネルギー供給の段階的な停止を求める声が高まっている。
 英国は2025年までに石炭火力発電所を全廃する方針を明らかにしている。2017年11月にドイツのボンで開かれたCOP23(第23回国連気候変動枠組み条約締約国会議)では、英国やフランス、カナダなど25カ国が「石炭エネルギー廃止連合」というグループを結成した。

 (2)欧州最大の経済国、ドイツは、「石炭エネルギー廃止連合」に参加していない。同国の連邦環境省は不参加の理由を、「参加するかどうかは、次期政権の判断に委ねる」と説明している。連邦議会選挙後、各党間の連立交渉が決裂し、新政権成立のめどが立っていないからだ。
 だがドイツ政府の本音は、「石炭・褐炭による火力発電の比率が約40%と、他国に比べて高いので、急激な脱石炭は経済や雇用に深刻な影響を与える」というものだ。

 (3)英国やフランスは、原子力によって石炭を代替する方針だが、ドイツは22年までに原子力発電所を全廃する。しかも再生可能エネルギーの比率はまだ約30%前後で、それを50年に80%まで高める方針だ。だから、英国並みに迅速な脱石炭については消極的なのだ。つまり、ドイツは脱原子力を決めているが故に、直ちに脱石炭に踏み切れないというジレンマを抱えている。
  (a)ドイツの科学者や左派政党は、脱石炭の加速を求めている。
  (b)政府の諮問機関・環境問題有識者協議会(SRU)は、石炭・褐炭火力発電を30年代末までに段階的に廃止するべきだとする提言書を発表した。
  (b)’SRUは、まず最もCO2排出量が多い老朽化した石炭・褐炭火力発電所を20年までに閉鎖させることを要求した。ただし、電力の安定供給を確保するために、残りの発電所については、稼働率を抑えながら、約10年間運転させることを提案している。さらに、「石炭・褐炭火力の比率削減を今すぐ始めるべきだ」と主張する。
  (c)環境保護政党・緑の党も、30年までに石炭・褐炭火力発電所の全廃を要求している。
  (d)経済界には、急激な「脱石炭」に対する懸念もある。ドイツ商工会議所は、「多額の費用が掛かる脱石炭に踏み切るのは無責任だ」と主張する。11月7日には、ドイツの三つの環境保護団体と約50社の企業が「次期政権は、地球温暖化防止のためのエネルギー転換を、最も重要な政策課題の一つにするべきだ」という共同声明を発表した。
  (d)’声明に署名した企業は、「石炭・褐炭火力発電の段階的な停止」に言及しながらも、その時期については明言を避けている。さらに「この種の発電キャパシティーの削減については、CO2削減目標だけではなく電力の安定供給と、雇用保護についても配慮するべきだ」と述べ、政府に対して拙速を戒め、バランスの良い脱石炭政策を取るよう求めている。

 (4)11月19日に4党連立政権の交渉が決裂した理由の一つも、企業寄りの自由民主党(FDP)が、緑の党の要求する急激な脱石炭政策を拒絶したことだった。
 次期政権は環境保護と経済成長のバランスを取るための、慎重なかじ取りを求められることになる。

□熊谷徹(ドイツ在住ジャーナリスト)「欧州各国が進める脱石炭の時期めぐり意見が割れるドイツ」(「週刊ダイヤモンド」2017年12月9日号)
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 【参考】
【アジア】難産の末「イレブン」がTPPチームを再結成 ~米国抜きでの勝算は?~
【中国】世銀ランキングが示す中国のビジネス環境鍵は「時間」の読み方
【米国】ハリウッドに蔓延するセクハラ、男性支配の構図は崩れるか? ~ハリウッドのパンドラの箱~
【米国】とメキシコ国境に建つトランプの「壁」の試作品 ~国境の街の反応は?~
【中国】日本の6倍売り上げる店もローソン快進撃の理由 ~日系コンビニ初の南京出店~
【アジア】タイとマレーシアが外国人労働者の人権対策を進める理由
【欧州】もう一つの東西分裂 ~ LGBTへの偏見が深く残る東欧諸国~
【中国】新任常務委員お披露目 ~ネクタイの色が示す習総書記の権力基盤~
【米国】トランプ大統領が描く従来と違うレッドライン ~北朝鮮は世界の問題に~
【欧州】英航空・防衛大手企業が受注苦戦で大リストラ ~英国のEU離脱も影響か~
【アジア】度重なる不祥事で日本企業のイメージ失墜 ~アジア商戦にも逆風~
【中国】で日本の「どら焼き」や「カステラ」が売れない理由 ~風土で違う味覚~
【中国】ユニコーンが55社、加速する起業ブーム ~課題は人材確保~
【欧州】ドイツ議会選挙で極右政党が大躍進 ~危機感強める経済界~
【米国】サンオノフレ原発の核廃棄物移転を訴えた地域住民が“勝った”理由
【欧州】カタルーニャ独立は正しい選択なのか? ~住民投票で9割支持~
【米国】トランプ大統領のころころ変わる政策に振り回される不法移民
【中国】信用情報システム「芝麻信用」とは? ~個人の信用力を点数化~
【米国】北朝鮮問題の深刻化で浮上する開戦シナリオ ~1937年不況の再来?~
【欧州】英国のEU離脱選択で中東欧からの移民が激減 ~人手不足で農業は窮地に~
【欧州】ドイツ自動車業界を襲うディーゼル締め出し判決 ~EV普及の契機となるか~
【欧州】身近で頻発するテロで苦境に陥る欧州の観光業 ~ISが戦術を転換~
【中国】住宅を入手しやすい「新一線都市」が人気 ~地方の生活水準が向上~
【欧州】総工費8兆円超の英高速鉄道プロジェクト ~高まる期待と漂う懸念~
【欧州】スペイン経済は大打撃、欧州金融危機の再来か ~カタルーニャ独立~
【欧州】のゴミ箱扱いに憤慨する東欧諸国 ~深まるEUの東西分裂~
【英国】の地政学的優位性がBrexitで喪失 ~領内で高まる独立気運~
【欧州】北欧も難民入国規制強化へ ~形骸化するシェンゲン協定~
【スウェーデン】文化多元主義の限界 ~移民問題~
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