最近、更に加速度が付いた。
い、いや、我家の借金の額ではない。
我家の借金額は順調に右肩上がりだ。
それほど気にするほどじゃない。
この国の借金に比べれば微々たるものだ。
銀行は、小さな借金にこだわわりすぎる。
我家の借金は忘れてくれ。
そ、その「忘れる」だ。
加速度が付いたのは。
昔から、ワシは「忘れる」のが得意だった。
インターハイにも出場した事がある。
通常は加齢するにつれ、記録は衰える。
しかし「忘れる」は加速度がつく。
毎日のように新記録が出る。
オンリーワンで、ナンバーワンだ。
ワシにも自慢できるモノがあるのだ。
もうすぐ豚子の小学校運動会だ。
何年も前になる。
ワシは本妻からビデオを渡された。
「豚子、撮ってあげてね。私はPTA役員だから」
本妻は偉いなぁ・・・そんなの引き受けて・・・。
(アンタがしないからじゃない!)
(・・・そうでした・・・ゴメンネ)
で、その出場種目にレンズを向けた。
お、あれだな、豚子は。
スイッチ、オン!
ズーム、イン!
豚子、一生懸命だな。
誰に似たんだろう?
一生懸命のDNAはワシにない。
ま、まさか、本妻の、う、浮気の果か?
おっ、抜かれた、三着でゴール!
まぁ、こんなもんだろう。
ビデオ撮影は完璧だね。
フッ、ワシだってやるときにはヤル!
良き父親の役くらい、ちょろいもんさ。
運動会が終わって、ビデオを再生した時だ。
ワシは旧KGBかKCIAの陰謀だと思った。
ズームアップした豚子は別人に入れ替わっていた。
どう見ても、豚子には見えない。
強いて類似点をいうなら・・・女子小学生ではある。
へ、変だなぁ・・・。
一生に一度かもしれない、徒競走での一位。
スタートからゴールまで一度も映されていなかった豚子。
(はぁ~・・・とうちゃんじゃ、しょうがないよね・・・)
豚子は、とても、とても出来た子だと思う。
だが、その目に少し軽蔑の色があったような気がした。
ワシの被害妄想ならいいのだが・・・。
(本館は 「氣の空間・氣功療法院」