福岡市の感染拡大が止まらない中、先週金曜日、福岡市役所の職員が一斉にベランダから拍手をしている姿がテレビで映し出されていた。これは医療現場で奮闘する人たちに感謝の意を表現しようと、高島市長が「フライデー・オベーション」と銘打ち、職員に指示して行われたものである。この映像を見た瞬間、何とも言えない感情がこみ上げてきた。
そもそも、”感謝の拍手”は、新型コロナウイルスと闘う医療従事者らにエールを送ろうと、フランス(パリ)市民の中から自然に発生したもので、その後、イギリスなど欧米各国へと広がっていった。イギリスでは、市民の呼びかけにジョージ王子、シャーロット王女など王族やボリス・ジョンソン首相が応えて参加し、大きな話題となった。これに目をつけた高島市長が、市長の権限でもって職員に拍手することを強要した。もちろん、拍手を望んでいた職員もいただろう。しかし、こういうことを行政トップが指揮することなのか。
今、福岡市は感染者の急激な増大により、患者に対応するためのマスクや防護服が足りず、医療現場は悲鳴を上げている。報道によれば、医療従事者は「武器を持たずに戦うのと同じで怖い」と吐露している。そういう武器も持たずに戦場にいる方々に、今、拍手をすることに違和感を禁じ得ない。(拍手を否定しているわけではない)まして、他国のように市民が率先して行っているのとわけが違う。それゆえ、拍手を送られた人たちの心中はいかばかりかと、本音も言えないような風潮になりはしないかと危惧している。
そもそも、医療従事者の方々に感謝をしていない市民は一人もいないだろう。皆、感謝をしている。しかし(福岡市に限ったことではないが)、PCR検査は十分に行われておらず、患者の半数以上が感染経路不明という最悪な状況で、市民の不安は日々増している。だから今、市がすべきは感謝の押し売りではなく、市民の不安を少しでも減らすことではないのか。医療従事者には、一つでも多くのマスクや防護服が届けられるよう、あらゆる手段を尽くす時ではないのか。そういうことをしないで”拍手”をするから、多くの市民からパフォーマンスだと言われるのだろう。高島市長の本質を見ようとしない性格は、何年経っても変わらない。もう諦めてはいるが。
4月10日金曜日正午、職員約250人が拍手 (写真:デイリースポーツより)
《福岡市が休業支援 2020.4.14.9:30更新》
文句を言っていたら、動き出した。福岡市は13日、休業や営業時間を短縮する市内の事業者を対象に独自の財政支援に乗り出す方針を固めた。店舗や施設の賃料補助を軸に検討しているという。支援期間は当面、緊急事態宣言の期限となる5月6日までとし、宣言が発効した4月8日までさかのぼって補助することを検討。また最前線で戦っている医療や福祉関係者などへの経済的な支援も検討しているという。それにしても、福岡県は何をしているのか。小川知事の行動力のなさもかなり問題だ。
・福岡市が独自の休業支援へ 政令市で異例、賃料補助を検討(西日本新聞 2020.4.14)
《関連記事》
・奮闘の医療従事者に感謝の拍手を 福岡市が金曜正午に呼び掛け(西日本新聞 2020.4.11)
・コロナ最前線「防護服足りない」「院内感染怖い」 未知の闘いに緊迫(西日本新聞 2020.4.9)
《関連資料》
・福岡市HP。Friday Ovation | 新型コロナウイルス対策のため最前線で働く方々に感謝の拍手を