精子の動きに新しい事実が発見されたので、以前に書いた文章に手を加えました。
「生命誕生ー3億分の1の確率」
自分がどのように生まれてきたか考えてみたことがあるだろうか。
両親の生殖行為の結果生まれてきたことぐらいは誰でも知っているがそれはどのようなものか。
母親の体内で精子と卵子の結びつきで受精卵ができて、子宮内で細胞分割を繰り返し次第に大きくなって十月十日後誕生となる。
ここで問題とするのは精子と卵子の結びつきまでである。
性交時に男性から1回に放出される精子の数は3億といわれる。そのうちの一つが卵子と結びつくのである。3億というとたいそうな数という気はするが大方の人にとってピンとこないのではないか。
そこで3億の精子を米粒に見立てるとどうなるか見てみたい。かつて内山興正老師が1勺の米粒を数えてみたことがあり730粒あったそうでその数を使ってみる。
すると、3億の米粒の体積は約7.4立方メートルとなる。これを例えば4畳半の部屋に敷き詰めると高さ1m になる。その米粒一つ一つに尾っぽをつけておたまじゃくしのように 動き回っていると想像してみるといい。その中からたった一つが選ばれるのである。これほど強烈な生存競争はない。
ヨーイドンで一斉に飛び出して卵子めざしての競泳。真っ先かけても駄目で、先駈けするのは皆討死にする。女性の身体には細菌等の異物を排除する防御機能がはたらく。前の精子が切り開いた道を後ろの精子が進んで行く。力も必要でもあるが展開にも運にも恵まれんと優勝は覚束ない訳である。
3億が動き回っている中での確率だから、それは3億どころか無限可能性の中から生まれてくる。1/∞だから、0の確率である。
最近、精子はらせん状に回転しながら進んで行くことが分かった。卵子に突入する時も回転力が役立つのかも知れない。
最善のコースを最善のペースで 泳ぎきらなければならない。その軌跡はその瞬間その瞬間に確実にその位置におらなけ ればならない。非常に微妙だから母親の体の動き一つで位置は変わってしまう。たとえば前日に蚊にかまれたような軽微な出来事でもその有る無しで生まれる子は違ってしまう。
自然界の仕組みは微妙精緻で極微の動きも増幅されて新しい生命がそこから生まれてくるのである。死んでから自分だけが生まれかわるのではない。生きている命からその分身として新しい命が次々と生まれてきているのである。一切衆生皆我が子なのである。