子が親を呼ぶのは魂の叫、だから外国語で呼ばすような躾けをしてはならないと前に書いた。
ところが近頃の親はパパ、ママの方が小さい子にはの方が言い易い、どこの家庭でも使っているのという理由でパパ、ママとよばせている。
子供は教えればちゃんと母親を呼ぶ時「お母さん」「お母ちゃん」と呼べるのである。昔は皆それで育ってきた。私も幼い時は、「お母ちゃん」、長じては「お母さん」と呼んでいる。
娘たちには端から「お父さん」「お母さん」と呼ばせている。
さて、子は声のかぎりに親を呼ぶと同時にわが名を呼んでくれることを心底から願っているのである。パパ、ママ族にはその心情が理解できない、いや、考えてもいない。
最近紐解いた書物の中に詩人三好達治の「わが名をよびて」という母を思う絶唱が紹介されていたがこのような心情が日本人の心の奥底には存在しているのである。
わが名をよびてたまはれ
いとけなき日のよび名もてわが名をよびてたまはれ
あはれいまひとたびわがいとけなき日の名をよびてたまはれ
風のふく日のとほくよりわが名をよびてたまはれ
庭のかたへに茶の花のさきのこる日の
ちらちらと雪のふるひのとほくよりわが名をよびてたまはれ
よびてたまはれ
わが名をよびてたまはれ
子は親に呼びかけ、呼びかけられるのを待っているのである。そこにいのちの絆がある。絆となる言葉が軽薄に使われた外国語で
切れてしまう。
親は子に呼ばれたら必ず答えてやらなくてはならない。面倒くさがっていては駄目である。そして名前を呼んでやる。
は