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横山功
昭和54年9月9日浅草生まれ
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ふろしきコラム
/
2020-07-20 04:05:52
(長文すみません)
前々からよくきかれること。
風呂敷のことを、どれほど好きであるかと。
しかし、僕はふろしきを「すき」と答えるにしても、
素直な言葉になりづらい。
そのひとことではとても、あらわせない。
これまでのたくさんの感謝、感動、思い出、
ときには風呂敷つながりで苦労した人間関係のあれやこれ。
まだまだ分からないことだらけだけど、
それでも、知るほどに、情報がふえるほどに、
ただ好きの一言で収めきれないし、
「惚れる」という距離感でもない。
ふろしきは自分のアクションへの
リアクションそのものである。
それは、部屋も同じで、片づければ
片づけた通りの部屋になる。
部屋のほうから勝手に動くことは、あまりない。
風呂敷も、ただの四角い布であり、DIYの材料。
さらにそこには色と柄と素材による、多様な種類があるため、
”風呂敷が好き”とくくるのは”音楽が好き”というくらい
対象が広くなる。
それが、ものとしての風呂敷でなければ話は別だ。
好きなのは、風呂敷という物自体ではなく、
自分で生み出す行為や志向のことで、
そのための材料として風呂敷が相当便利なので
選んでいる、という具合です。
物としての風呂敷の好みだと、もっと具体的に、
青系とか、ポップな柄とか、丈夫で乾きやすい麻素材がすき、
のような答え方になっていきます。
そして、このような好きさというのは、人に対してもいえること。
妻のことを好きかときかれたら、好きと答えますが、
その理由はすぐには出てきません。
一緒に暮らしはじめてから13年も経つでしょうか。
その中には、楽しかったこともありますが、
悩んだり、喧嘩をしたり、苦労をかけたり。。と
毎日のさまざまな出来事がたくさん集積されていますので、
顔が好みだから好き、とか””あかるい”やさしい”のような
単純明快な解答はありえなくて、
この先、どんなことがあっても
その内側たる心の美しさを慈しみ、
純粋な子どもたちへの敬意としても、
不器用でもきちんと夫婦喧嘩をして、
都度互いの思いを伝えあいながら、
演じあうことはしたくないと思う。
それでも、僕は取り越し苦労のきらいがある。
何らかの不安にかられたとしても、
その状況を自分に冷静に問うたとき
特に嫌じゃなければ、それ以上暗鬼をふくらませないようにと、
感情のコントロールを育てています。
友達に関しても、はじめから氣があって
意氣投合して仲良く、というパターンは
昔はよくありましたが、
そのような似た者同士は、相手に自分を見て
安心したり慰めあっている場合もあるので、
やがてどこかで衝突して縁が切れたりもします。
逆に、何がよいのか定かではないが、
なぜか氣になる、、
自分の好みでもなく、思想も異なるのに
尊重できるまなざしを感じる、
という人は、会っても会わなくても、
ふしぎな心の絆が永遠につづくような感覚があります。
昨年、ふろしきの本をつくりましたが、
きっかけはちょうど、さらに前年に
『マツコの知らない世界』への出演がありましたので、
そのタイミングに間に合わせようと
当初は考えていました。
もともと異常なほどマイペースで、
ここ20年、いろんなメディアに出ても、販売する
商品も持ち合わせず「チャンスを生かさない男」と
豪語しておったのですが(笑)、
マツコさんのときは、本があれば
多くの方に風呂敷の魅力をつたえる貴重な機会と
ならむ、と思いました。
(以前から本を出していますが、数年経って
新たに追加したい結び方がふえてきたため)。
しかし、やはり本の制作は、何かに間に合わせようと焦るのではなく、
日々たんたんと実地で風呂敷をむすびながら、
そこはかとなく氣づいたことなどを織り込んで
丁寧につくりたいというきもちのほうが勝り、
テレビの放映時にはつくり途中でした。
翌年、10年近い付き合いのあるお店に勤めている
知り合いと会ってお昼をした後、
彼女のカバンの部品がゆるんだのか、
口がひらいたままになっていました。
それを風呂敷で包むことで解決したのを、
記録として撮影しました。
後でその写真を観ると、彼女は
なんでもない表情をしているのですが、
「あ、これは風呂敷向きだ」と思いました。
風呂敷はニュートラルな材料としての四角い布であり、
ここから何にでも変化していくものなので、
テーマやキャラやコンセプトという一義的、
一面的な意味でつつみこめはしません。
自分に対して意味なり役割を固定してはいけないと思っています。
それは本音を封じて演じることや立場主義につながるから。
都度、臨機応変に意味や役割が変わりつづけるのが自然です。
だもので、友達が、口のひらいたバッグを
風呂敷で結びとめた状態の写真を撮らせてという
求めに対して、無理に表情をつくったり
決めポーズをとるのでもなく、
頼まれたままに普通にカバンを持っている写真となったところに
ピンとくるものがありました。
楽しいときには笑わなくても、どこか
楽しさが滲みわたるものだし、
イラついていたら、どんだけ微笑んでいても
微妙な筋肉の緊張によって、不快感は隠し通せない。
演技が苦手なほうが、たとえぶつかり合っても
本音のコミュニケーションができる。
おしまいまでずっと、互いに演じて合わせあっていたとしたら
表面的に円満であっても、見えない溝は埋まらない。
そのような予期せぬご縁によって、
仲間がすこしずつふえてきました。
そのような自然体のなかまたちは、
この記事の冒頭で書いたように
理由なきつながりがあります。
好きなところもあるし、
自分では共感できない面だってたくさんある。
誰しも、人と豊かに交流しながら、
日々の毎日を、有意義に送りたいと思っている。
そのなかでの期待や失望によって
つらくなったりもあるけれど、
うまくゆかなくたって、ほどけば
いつでも元にもどせるのが風呂敷。
結び目を複雑にして、自分自身を困らせないで。
かんたんにほどけるから。
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