僕は、あろうことか中学受験で
男子校に入ってしまった!
1年もしないうちに毛が生えて
異性への関心が100万倍になることも
つゆ知らず・・・
とはいえ、都営バス通学のなかでは
おんなじ御年頃の女学生に逢える。
話しかけるわけにも行かぬが、
担任の教師が俳句好きで
僕も紛々たる思いを
31文字の短歌にのせて書き綴っていた。
…おなじバス 乗り込んでくる 眠たげな
きみ見たとたん 我が目ぱっちり…
友達はみな電車通学なので、
僕は1人バスの最後部シートで
古典文法のテキスト片手に
あふるる思いを歌にした。
…あのころは 桜のつぼみのやうな君
いまや車内で プリン飲みけり…
男子校バス通学は高校にも引継ぎ、
僕はNHK歌壇という番組に
短歌を投稿していた。
若者の応募が珍しかったのもあり、
馬場あき子先生の選で紹介された。
…学校へ いそぐ8時の女子高生
髪を氣にして 速度おとせり…
僕は「青森県の奥地に、昔ことばで話す村をつくる!」という
夢を語るようになるが、ある先生から
「昔は、書きことばと話しことばは全然違うよ。
話し方は今とあまり変わらないかも」
と言われてあきらめる。
結果的に、6年間バスの中で
様々な乙女たちに
独り坦々と和歌を詠みつづけ、
青いまま成人へと向かった。
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