尸 シ・しかばね・かたしろ 尸部しかばね
解字 甲骨文は、足が不自然に曲がった人の側面形であり、人間の屍体を表す。祭祀の供物として用いられており、人牲であろう[甲骨文字辞典]。金文の用法は不明。篆文第一字は人が椅子に腰かけた姿勢の象形。祖先の祭祀の時に亡き死者に代わって近親者が椅子に座った姿をいう。(祖父の祭祀には、孫が代わりに座ったとされる)。正体ではないが時々見られるタイプで、正字である第二字への移行を示す段階の字といえる。現代字は尸となった。意味は、①しかばね。②死者の代わりになるので、かたしろの意となる。
意味 (1)しかばね(尸)。かばね。死体。なきがら。「尸諌シカン」(しかばねとなって主君をいさめる)「尸所かばねどころ」( 死体を埋めるところ。墓場) (2)かたしろ(尸)。亡き死者に代わって座る人。また、代わりの人形など。「尸位シイ」(①人が死者に代わって祭祀の死者の位置につくこと。②才能がないのに高い位置について何もしないこと)「尸位素餐シイソサン」(しかるべき地位にいながら職責をはたさず無駄に俸禄をもらっていること。素餐は、ただ食事をすること)「尸者シシャ・ものまさ」(①祖先の祭祀に神霊の代わりになって祭りを受ける者。②葬儀で死者に代わって弔問を受ける人)「尸童よりまし」(神霊がよりつく人間。特に、祈禱師きとうしが神霊を乗り移らせたり、託宣をのべさせたりするための童子や婦女)
参考 尸は部首「尸しかばね」になる。漢字の垂れ(上部から左下にかけた位置)となり、(1)死体・死者、(2)すわる形から腰をおろした部分である「おしり」、(3)さらに「人のからだ」などの意味となる。また、(3)垂れの形から「建物の屋根・建物」の意ともなる。常用漢字では15字あり、約14,600字を収録する『新漢語林』では、尸部に49字ある。尸部の主な字は以下のとおり。
(1)死体の意。屍シ・しかばね・届カイ・とどけ・屠ト・ほふる
(2)おしりの意。尻コウ・しり・居キョ・いる・尾ビ・お・尿ニョウ・屈クツ・かがむ・屎シ・くそ・属ゾク・つく
(3)人のからだの意。尼ニ・あま・履リ・はきもの・展テン・のべる
(4)建物の意。屋オク・や・層ソウ
(5)便宜的に含めたもの。尺シャク・尽ジン・つきる・局キョク
このうち、居・屈・尼・展・屋・尽・局は音符になる。
イメージ 「しかばね・死者」の他、死者の代わりに椅子に座るので、座ったとき椅子に着く部分である「おしり」のイメージがある。
「しかばね・死者」(尸・屍)
「おしり」(屎)
音の変化 シ:尸・屍・屎
しかばね・死者
屍 シ・しかばね 尸部
解字 「尸(しかばね)+死(死者)」 の会意形声。尸シは人のしかばねの象形。篆文になり死ぬ意がついた屍ができた。屍は死者のからだ・しかばねの意を表す。
※音符「死シ」にも重出した。
意味 しかばね(屍)。なきがら。死体。「屍骸シガイ」(=死骸。死者の骨の意だが、人や動物の死体の意で使われる)
おしり
屎 シ・くそ 尸部
解字 「米(こめ)+尸(おしり)」の会意形声。お尻から米の消化された残り物が出ること。この字は尸シが音符となり、また部首ともなっている。
意味 (1)くそ(屎)。ふん。大便。「屎尿シニョウ」(大便と小便) (2)体から出る分泌物やかす。「耳屎みみくそ」「目屎めくそ鼻屎はなくそを笑う」
<参考 尸を含む音符>
尸には「人が腰をおろす」「おしり」「ひと」のイメージから成る音符がある。(なお、さらに「屋根」を表すイメージなどがあるが、省略する。)
人が腰をおろす
居 キョ・いる 尸部
解字 金文・篆文は「人が腰をおろす形+古(=固。固定させる)」の会意形声。人が腰をおろす形を固定させること。ひとところにずっといる意となる。現代字は、人が腰をおろす形⇒尸に変化した「居」になった。ひとところにずっといることから「おちつける」「腰をおろす」イメージがある。
意味 (1)いる(居る)。おる(居る)。腰をおろす。「居心地いごこち」「居所キョショ」 (2)住む。住む所。「住居ジュウキョ」「居宅キョタク」 (3)いながら。そのまま。「居然キョゼン」(じっとする)
イメージ
「おちつける」(居・据)
「腰をおろす」(踞・裾)
「同音代替」(鋸)
音の変化 キョ:居・据・踞・裾・鋸
音符「居キョ」を参照。
おしり
尾 ビ・お 尸部しかばね
解字 「尸(おしり)+毛(け)」の会意。お尻に生え下がっている毛。
意味 (1)お(尾)。動物のしっぽ。「尾行ビコウ」「首尾シュビ」(首と尾。初めと終わり)「交尾コウビ」「尾花おばな」(ススキ) (2)細長い物の末端。「末尾マツビ」
イメージ 「動物のしっぽ」(尾・梶)
音の変化 ビ:尾・梶
音符「毛モウ」を参照。
屈 クツ・かがむ 尸部
解字 金文・篆文は「尾(お)+出(でる)」の会意。うずくまった獣の尾が地上にのび出ている形を示し、獣がうずくまる意を表す。現代字は、尾から毛がとれて屈となった。一般に、身体をかがめる意味となる。また、うずくまる姿から屈服(したがう)する意ともなる。
意味 (1)かがむ(屈む)。まげる。「屈折クッセツ」「屈曲クッキョク」 (2)くじける。したがう。「屈服クップク」「屈辱クツジョク」 (3)ゆきづまる。きわまる。「窮屈キュウクツ」「理屈リクツ」(①理がゆきづまる意で、理由をこじつける。②また、道理・ことわりの意味にも使う) (4)つよい(=倔)。「屈強クッキョウ」
イメージ 「身をかがめる」(屈・掘・堀・窟・倔)
音の変化 クツ:屈・掘・堀・窟・倔
音符「屈クツ」を参照。
ひと
展 テン・のべる・ひろげる 尸部
解字 篆文は、篆文は㞡テンで「尸シ(人のからだ)+𧝑テンの略体」。 𧝑テンは「衣(ころも。上下に分かれる)+㠭テン(工具四つで、極めて巧み)」で、極めて巧みに織った絹の衣の意、王后(きさき)の礼服の一つを表す。それに尸(人のからだ)を付けた㞡テンは、人のからだに𧝑テン(王后の礼服)を、ひろげてのばし、視ること。貴婦人の着付けのさまと思われる。ひろげのばす意から転じて、ならべる意ともなる。また、許慎は[説文解字]で「展は轉テン(ころがる)也」としており、ころがる意がある。字体は隷書レイショ(漢代)で㠭テン⇒龷 に変化し、現代字で衣あしのノがとれた展になった。
意味 (1)のべる(展べる)。のびる(展びる)。のばす(展ばす)。ひろげる。ひらく。「展開テンカイ」(くりひろげる。ひろがる)「進展シンテン」(すすみひろがる)「発展ハッテン」(はじまりひろがる) (2)ならべる。つらねる。「展観テンカン」(ならべて多くの人に見せる)「展示テンジ」(ならべ示す。作品をならべて見せる) (3)みる。「展望テンボウ」(ながめ見渡す) (4)ころがる。「展転テンテン」(ころがる)
イメージ
「ひろげてのばす」(展)
意味(4)の「ころがる」(碾・輾)
音の変化 テン:展・碾・輾
音符「展テン」を参照。
尼 ニ・あま 尸部
解字 「尸(ひと)+ヒ(ひと)」の会意。二人の人がもたれあっている形で、二人が相親しむさまを示す。のち、尼(あま)の意に用いる[字統]。
意味 (1)ちかづきしたしむ。 (2)あま(尼)。女の僧。出家した女性。梵語を漢訳した比丘尼ビクニ(出家して戒をうけた尼僧)の略称。「尼僧ニソウ」「尼寺あまでら」
イメージ 「あま」(尼)
二人が相親しむ形から「ちかづく」(昵)
「くっつく」(泥)
「同音代替」(怩)
音の変化 ニ:尼 ジ:忸 ジツ:昵 デイ:泥
音符「尼ニ」を参照。
バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。
解字 甲骨文は、足が不自然に曲がった人の側面形であり、人間の屍体を表す。祭祀の供物として用いられており、人牲であろう[甲骨文字辞典]。金文の用法は不明。篆文第一字は人が椅子に腰かけた姿勢の象形。祖先の祭祀の時に亡き死者に代わって近親者が椅子に座った姿をいう。(祖父の祭祀には、孫が代わりに座ったとされる)。正体ではないが時々見られるタイプで、正字である第二字への移行を示す段階の字といえる。現代字は尸となった。意味は、①しかばね。②死者の代わりになるので、かたしろの意となる。
意味 (1)しかばね(尸)。かばね。死体。なきがら。「尸諌シカン」(しかばねとなって主君をいさめる)「尸所かばねどころ」( 死体を埋めるところ。墓場) (2)かたしろ(尸)。亡き死者に代わって座る人。また、代わりの人形など。「尸位シイ」(①人が死者に代わって祭祀の死者の位置につくこと。②才能がないのに高い位置について何もしないこと)「尸位素餐シイソサン」(しかるべき地位にいながら職責をはたさず無駄に俸禄をもらっていること。素餐は、ただ食事をすること)「尸者シシャ・ものまさ」(①祖先の祭祀に神霊の代わりになって祭りを受ける者。②葬儀で死者に代わって弔問を受ける人)「尸童よりまし」(神霊がよりつく人間。特に、祈禱師きとうしが神霊を乗り移らせたり、託宣をのべさせたりするための童子や婦女)
参考 尸は部首「尸しかばね」になる。漢字の垂れ(上部から左下にかけた位置)となり、(1)死体・死者、(2)すわる形から腰をおろした部分である「おしり」、(3)さらに「人のからだ」などの意味となる。また、(3)垂れの形から「建物の屋根・建物」の意ともなる。常用漢字では15字あり、約14,600字を収録する『新漢語林』では、尸部に49字ある。尸部の主な字は以下のとおり。
(1)死体の意。屍シ・しかばね・届カイ・とどけ・屠ト・ほふる
(2)おしりの意。尻コウ・しり・居キョ・いる・尾ビ・お・尿ニョウ・屈クツ・かがむ・屎シ・くそ・属ゾク・つく
(3)人のからだの意。尼ニ・あま・履リ・はきもの・展テン・のべる
(4)建物の意。屋オク・や・層ソウ
(5)便宜的に含めたもの。尺シャク・尽ジン・つきる・局キョク
このうち、居・屈・尼・展・屋・尽・局は音符になる。
イメージ 「しかばね・死者」の他、死者の代わりに椅子に座るので、座ったとき椅子に着く部分である「おしり」のイメージがある。
「しかばね・死者」(尸・屍)
「おしり」(屎)
音の変化 シ:尸・屍・屎
しかばね・死者
屍 シ・しかばね 尸部
解字 「尸(しかばね)+死(死者)」 の会意形声。尸シは人のしかばねの象形。篆文になり死ぬ意がついた屍ができた。屍は死者のからだ・しかばねの意を表す。
※音符「死シ」にも重出した。
意味 しかばね(屍)。なきがら。死体。「屍骸シガイ」(=死骸。死者の骨の意だが、人や動物の死体の意で使われる)
おしり
屎 シ・くそ 尸部
解字 「米(こめ)+尸(おしり)」の会意形声。お尻から米の消化された残り物が出ること。この字は尸シが音符となり、また部首ともなっている。
意味 (1)くそ(屎)。ふん。大便。「屎尿シニョウ」(大便と小便) (2)体から出る分泌物やかす。「耳屎みみくそ」「目屎めくそ鼻屎はなくそを笑う」
<参考 尸を含む音符>
尸には「人が腰をおろす」「おしり」「ひと」のイメージから成る音符がある。(なお、さらに「屋根」を表すイメージなどがあるが、省略する。)
人が腰をおろす
居 キョ・いる 尸部
解字 金文・篆文は「人が腰をおろす形+古(=固。固定させる)」の会意形声。人が腰をおろす形を固定させること。ひとところにずっといる意となる。現代字は、人が腰をおろす形⇒尸に変化した「居」になった。ひとところにずっといることから「おちつける」「腰をおろす」イメージがある。
意味 (1)いる(居る)。おる(居る)。腰をおろす。「居心地いごこち」「居所キョショ」 (2)住む。住む所。「住居ジュウキョ」「居宅キョタク」 (3)いながら。そのまま。「居然キョゼン」(じっとする)
イメージ
「おちつける」(居・据)
「腰をおろす」(踞・裾)
「同音代替」(鋸)
音の変化 キョ:居・据・踞・裾・鋸
音符「居キョ」を参照。
おしり
尾 ビ・お 尸部しかばね
解字 「尸(おしり)+毛(け)」の会意。お尻に生え下がっている毛。
意味 (1)お(尾)。動物のしっぽ。「尾行ビコウ」「首尾シュビ」(首と尾。初めと終わり)「交尾コウビ」「尾花おばな」(ススキ) (2)細長い物の末端。「末尾マツビ」
イメージ 「動物のしっぽ」(尾・梶)
音の変化 ビ:尾・梶
音符「毛モウ」を参照。
屈 クツ・かがむ 尸部
解字 金文・篆文は「尾(お)+出(でる)」の会意。うずくまった獣の尾が地上にのび出ている形を示し、獣がうずくまる意を表す。現代字は、尾から毛がとれて屈となった。一般に、身体をかがめる意味となる。また、うずくまる姿から屈服(したがう)する意ともなる。
意味 (1)かがむ(屈む)。まげる。「屈折クッセツ」「屈曲クッキョク」 (2)くじける。したがう。「屈服クップク」「屈辱クツジョク」 (3)ゆきづまる。きわまる。「窮屈キュウクツ」「理屈リクツ」(①理がゆきづまる意で、理由をこじつける。②また、道理・ことわりの意味にも使う) (4)つよい(=倔)。「屈強クッキョウ」
イメージ 「身をかがめる」(屈・掘・堀・窟・倔)
音の変化 クツ:屈・掘・堀・窟・倔
音符「屈クツ」を参照。
ひと
展 テン・のべる・ひろげる 尸部
解字 篆文は、篆文は㞡テンで「尸シ(人のからだ)+𧝑テンの略体」。 𧝑テンは「衣(ころも。上下に分かれる)+㠭テン(工具四つで、極めて巧み)」で、極めて巧みに織った絹の衣の意、王后(きさき)の礼服の一つを表す。それに尸(人のからだ)を付けた㞡テンは、人のからだに𧝑テン(王后の礼服)を、ひろげてのばし、視ること。貴婦人の着付けのさまと思われる。ひろげのばす意から転じて、ならべる意ともなる。また、許慎は[説文解字]で「展は轉テン(ころがる)也」としており、ころがる意がある。字体は隷書レイショ(漢代)で㠭テン⇒龷 に変化し、現代字で衣あしのノがとれた展になった。
意味 (1)のべる(展べる)。のびる(展びる)。のばす(展ばす)。ひろげる。ひらく。「展開テンカイ」(くりひろげる。ひろがる)「進展シンテン」(すすみひろがる)「発展ハッテン」(はじまりひろがる) (2)ならべる。つらねる。「展観テンカン」(ならべて多くの人に見せる)「展示テンジ」(ならべ示す。作品をならべて見せる) (3)みる。「展望テンボウ」(ながめ見渡す) (4)ころがる。「展転テンテン」(ころがる)
イメージ
「ひろげてのばす」(展)
意味(4)の「ころがる」(碾・輾)
音の変化 テン:展・碾・輾
音符「展テン」を参照。
尼 ニ・あま 尸部
解字 「尸(ひと)+ヒ(ひと)」の会意。二人の人がもたれあっている形で、二人が相親しむさまを示す。のち、尼(あま)の意に用いる[字統]。
意味 (1)ちかづきしたしむ。 (2)あま(尼)。女の僧。出家した女性。梵語を漢訳した比丘尼ビクニ(出家して戒をうけた尼僧)の略称。「尼僧ニソウ」「尼寺あまでら」
イメージ 「あま」(尼)
二人が相親しむ形から「ちかづく」(昵)
「くっつく」(泥)
「同音代替」(怩)
音の変化 ニ:尼 ジ:忸 ジツ:昵 デイ:泥
音符「尼ニ」を参照。
バックナンバーの検索方法
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