第6回漢字音符研究会 2017年11月11日(土)
テーマ 人の姿の音符 そのⅡ
講 師 石沢誠司氏 ブログ「漢字の音符」編集者
人の姿の音符Ⅱの概要
人の姿の音符Ⅰで取り上げた以外の主な字は、大きく分けると「女ジョ」「母ボ」「子シ」「老ロウ」がある。
女ジョは、人がひざまずいて手を前に交えている形で女性を表す。その横に口を置いた如ジョは、「いかが」「ごとし」の意味になるが、本来は神に祈って神意に「したがう」意。女に又(右手の意)がついた奴ドは、女を手で捕らえ自由をなくし奴隷とする意。女だけでなく男女の奴隷に用いる。
女が建物の中にいる形が安アンで、静かで落ち着いた安らかなさまの意。「日+女」の妟エンは、日が穴のあいた玉であると考えられ、玉を頭部につけ陽の力をえて生き生きとする女を表す。宴エンの原字。一方、妟エンを匸(はこ形のかこい)に入れた匽エンは、女が陽気を失くして伏せる意。
手にカンザシを持ち頭髪にさすかたちが妻サイで、婚儀のときの髪形であり結婚した女性を示す。女のうえに辛シン(入れ墨をする針)をつけた妾ショウは、針で女の額に入れ墨をするかたち。入れ墨で識別された女奴隷をいう。後に、貴人につかえる女性、正妻以外の夫人の意となった。
女に両方の乳房を点で加えた形が母ボで、子を生み育てる母の意。母の字は、また、否定・打消しに仮借カシャ(当て字)して用いられたが、のち両方の乳房を直線化したのが毋ブで、禁止・否定を表す助字となる。母(=女性)の頭髪にカンザシをさして髪をととのえたかたちが毎マイで、朝起きるたびに髪をととのえなおすので、ごと(毎)の意味になる。
若い巫女(みこ)が右に頭をかたむけた形が夭ヨウで、身をくねらせる形。夭とは逆に左に頭をかたむけた形が夨ショクで、同じく身をくねらせる形。これに口をつけた呉ゴは、身をくねらせて笑うのが原義で娯ゴの原字。また、若ジャクの甲骨文は巫女が髪を振り乱して手を上げ、神意をききとる形。若い意のほか、ごとし(若し)などの意味になる。
小さな子供をかたどったのが子シで、円で頭を交差する十字で両手と胴を表わす。孚フは、子に上からの手をつけた形で子供を手でかかえあげるさま。皿(たらい)の上に子があるのが孟モウで、生まれた子に産湯をつかわせる形。生まれて最初の儀礼であるから始めの意味を表す。兄弟やその他の序列にも及ぼして用いる。呆ホウは、子をおむつや産衣で包んだ形。生まれた子は何も分からないため、転じて、おろかの意となった。子が下向きになったのが𠫓トツで、赤子が頭を下にした正常な姿で生まれるさま。これに出産の羊水を加えたかたちの㐬リュウは、ながれでる意で流の原字。
長髪の人が杖をついている形が老ロウで、老人を表す。孝コウは、老の略体に子をつけた形で、子が老人を大切にすること。また、老の略体に丂コウ(まがる意)をつけた考コウは、腰のまがった老人の意だが、同音の校コウに通じ、かんがえる(校比=考え比べる)、くらべて調べる(校書・校訂)意味でつかわれる。老人の長髪を象ったのが長チョウで長い意。人がかくれる姿が亡ボウで、かくれる・なくなる意となる。
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テーマ 人の姿の音符 そのⅡ
講 師 石沢誠司氏 ブログ「漢字の音符」編集者
人の姿の音符Ⅱの概要
人の姿の音符Ⅰで取り上げた以外の主な字は、大きく分けると「女ジョ」「母ボ」「子シ」「老ロウ」がある。
女ジョは、人がひざまずいて手を前に交えている形で女性を表す。その横に口を置いた如ジョは、「いかが」「ごとし」の意味になるが、本来は神に祈って神意に「したがう」意。女に又(右手の意)がついた奴ドは、女を手で捕らえ自由をなくし奴隷とする意。女だけでなく男女の奴隷に用いる。
女が建物の中にいる形が安アンで、静かで落ち着いた安らかなさまの意。「日+女」の妟エンは、日が穴のあいた玉であると考えられ、玉を頭部につけ陽の力をえて生き生きとする女を表す。宴エンの原字。一方、妟エンを匸(はこ形のかこい)に入れた匽エンは、女が陽気を失くして伏せる意。
手にカンザシを持ち頭髪にさすかたちが妻サイで、婚儀のときの髪形であり結婚した女性を示す。女のうえに辛シン(入れ墨をする針)をつけた妾ショウは、針で女の額に入れ墨をするかたち。入れ墨で識別された女奴隷をいう。後に、貴人につかえる女性、正妻以外の夫人の意となった。
女に両方の乳房を点で加えた形が母ボで、子を生み育てる母の意。母の字は、また、否定・打消しに仮借カシャ(当て字)して用いられたが、のち両方の乳房を直線化したのが毋ブで、禁止・否定を表す助字となる。母(=女性)の頭髪にカンザシをさして髪をととのえたかたちが毎マイで、朝起きるたびに髪をととのえなおすので、ごと(毎)の意味になる。
若い巫女(みこ)が右に頭をかたむけた形が夭ヨウで、身をくねらせる形。夭とは逆に左に頭をかたむけた形が夨ショクで、同じく身をくねらせる形。これに口をつけた呉ゴは、身をくねらせて笑うのが原義で娯ゴの原字。また、若ジャクの甲骨文は巫女が髪を振り乱して手を上げ、神意をききとる形。若い意のほか、ごとし(若し)などの意味になる。
小さな子供をかたどったのが子シで、円で頭を交差する十字で両手と胴を表わす。孚フは、子に上からの手をつけた形で子供を手でかかえあげるさま。皿(たらい)の上に子があるのが孟モウで、生まれた子に産湯をつかわせる形。生まれて最初の儀礼であるから始めの意味を表す。兄弟やその他の序列にも及ぼして用いる。呆ホウは、子をおむつや産衣で包んだ形。生まれた子は何も分からないため、転じて、おろかの意となった。子が下向きになったのが𠫓トツで、赤子が頭を下にした正常な姿で生まれるさま。これに出産の羊水を加えたかたちの㐬リュウは、ながれでる意で流の原字。
長髪の人が杖をついている形が老ロウで、老人を表す。孝コウは、老の略体に子をつけた形で、子が老人を大切にすること。また、老の略体に丂コウ(まがる意)をつけた考コウは、腰のまがった老人の意だが、同音の校コウに通じ、かんがえる(校比=考え比べる)、くらべて調べる(校書・校訂)意味でつかわれる。老人の長髪を象ったのが長チョウで長い意。人がかくれる姿が亡ボウで、かくれる・なくなる意となる。
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