漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「享キョウ」<先祖を祀る建物>「亨コウ」「烹ホウ」と「郭カク」「廓カク」「槨カク」

2020年12月07日 | 漢字の音符
 キョウ・うける  亠部

   上は享、下は亨
解字 甲骨文・金文は、基礎となる台の上に建っている先祖を祀った建物の象形で「高」の字と似た高い建物を表す。祖先神に飲食物をたてまつって、祖先神をもてなす意を表わす。また、その結果、神の恩恵を受ける意ともなる。篆文から形のことなる第二字が出現し、現代字はその字の系統を受けつぎ、さらに下部が子になった。なお、その下の亨は同源字。
意味 (1)たてまつる。すすめる。ささげる。「享祭キョウサイ」(物を供えて神を祭る)「 (2)(祖先神を)もてなす。ふるまう。「享宴キョウエン」(もてなしの酒盛り) (3)(神の意志を)うける(享ける)。受け納める。「享年キョウネン」(神からさずかった年数)「享楽キョウラク」(楽しみを受ける。十分に楽しむ)「享有キョウユウ」(生まれながらに身に持っているもの)

イメージ  
 「先祖を祀る建物」
(享) 
  「変形字(とおる)」(亨・烹)
音の変化  キョウ:享  コウ:亨  ホウ:烹

享の変形字(とおる) 
 コウ・キョウ・とおる  亠部
解字 篆文は享と同じ形で、下部が了に変形した亨となった。享キョウの意味は祖先神に飲食物を奉って、もてなし、神の恩恵をうける意だが、亨は、神がそのもてなしを受け入れて物事がうまくとおる意味で使われる。
意味 (1)とおる(亨る)。さしさわりなく行なわれる。「亨通コウツウ」(順調にいく)「亨運コウウン」(順調な運命) (2)ささげる。すすめる。(=享) (3)煮る。(=烹)
 ホウ・にる  灬部
解字 「灬(火)+亨(とおる)」の会意。火がとおる意で、にる意味を表す。
意味 にる(烹る)。「割烹カッポウ」(切ったり煮たりする⇒料理する。料理屋。)


   カク <城壁と南北の城門>
 カク・くるわ  阝部おおざと 

 城郭「BTG城郭都市研究会」から

解字 甲骨文・金文は真ん中に囗で表された城壁があり、その南北に城門のあい対するさまを描いた象形。都市のまわりを囲む城壁を意味する。篆文は、高(高い城門)を上と下から合わせた形に都市を表わす邑(阝)をつけた。現在の字は篆文左辺の下部が子に変形し、郭の字形となった。したがって郭の左辺と享キョウは、成り立ちがまったく違う字である。
意味 (1)くるわ(郭)。都市のまわりを囲む壁。「城郭ジョウカク」(城も郭も、城壁の意。また、城壁をめぐらした都市。日本では外囲いを作った城の意)「郭門カクモン」 (2)物の外がこい。「輪郭リンカク」「外郭ガイカク」 (3)大きい。ひろびろとした。「郭大カクダイ」 (4)「郭公カッコウ」(鳥の名。カッコウと鳴くから)「郭公花ほととぎす」(山地に自生するユリ科の多年草)

イメージ
 「くるわ」
(郭・廓)
 意味(2)の「外がこい」(槨・椁)
音の変化  カク:郭・廓・槨・椁  

くるわ
 カク・くるわ  广部
解字 「广(やね)+郭(くるわ)」の会意形声。くるわで囲まれた家屋。
意味 (1)とりで。都市やとりでの周囲にめぐらす外かこい(=郭)。 (2)大きい。「廓然カクゼン」 (3)[国]遊里。くるわ(廓)。「遊廓ユウカク」(遊女屋がたくさん集まっている外かこいで囲まれた地域。いろまち)

外がこい
 カク・うわひつぎ  木部
解字 「木(き)+郭(外がこい)」の会意形声。木製の外囲いの意で、棺(ひつぎ)をいれる外側の箱をいう。
意味 (1)うわひつぎ(槨)。棺をおさめる外箱を槨(椁)という。「木槨モッカク」(木製の槨)「木槨墓モッカクボ」(棺のまわりを木材で取囲んで造った墓室をもつ墓のこと。中国古来の重要な葬制であった)「石槨セッカク」(石でつくった、棺を入れる外箱)
 カク・うわひつぎ  木部
解字 「木(き)+享(=郭カクの略体。外がこい)」の会意形声。木製の外囲いの意で、棺(ひつぎ)をいれる外側の箱をいう。槨カクは異体字。
意味 うわひつぎ(椁)。そとかん。「棺椁カンカク」(棺とその外箱。ひつぎ)
<紫色は常用漢字>

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