増訂しました。
旡 キ 旡部すでのつくり jì
解字 ひざまずく人が後ろを向いて口を開いている形の象形。後ろ向きのあくび、後ろを振り返る意を表すが、単独で用いられることはない。欠ケン(前をむいて口をひらいた形)の逆のかたち。
意味 後ろ向きのあくび。後ろを振り返る。
参考 旡キは、部首「旡すでのつくり」になる。この部首の主な字は既キしかない。
既 キ <いっぱいになる>
既[旣] キ・すでに 旡部すでのつくり jì
解字 甲骨文は、ご馳走を盛った食器の傍らに、後ろ向きに口をひらく人を配したかたちで、ご馳走を食べ終わり、満腹して後ろを向いてあくびをする形。旧字は旣で、「皀キュウ(ご馳走を盛った食器)+旡キ(後ろ向きのあくび)」の会意。食べることが「すでに終わる」意となる。新字体は、旣⇒既に変化。
意味 (1)すでに(既に)。もはや。「既刊キカン」(すでに発行された)「既成キセイ」(すでに出来上がっている)(2)つくす。つきる。「皆既カイキ」(すべてつきる)「皆既日食カイキニッショク」(日光がすべて尽き真っ暗になる日食)
イメージ
ご馳走を食べ終わって「すでにおわる」(既)
食べ終わってお腹が「いっぱいになる」(概・慨・漑)
「形声字」(厩)
音の変化 キ:既 キュウ:厩 ガイ:概・慨・漑
いっぱいになる
概 ガイ・おおむね 木部 gài
石垣島のトーカキゥ
解字 「木(とかきの棒)+既(いっぱいにする)」の会意形声。枡の中に米を山盛りにいれ、とかき棒(斗桝とますの上をならす丸棒)で枡の表面を平らにすること(枡の容量だけの米を入れるため)。全体をならす意味を表わす。
意味 (1)とかき(概)。一斗ますを掻くことから「とかき」という。ますかき。ますかき棒。(2)全体をならす。「概括ガイカツ」(ひっくるめて)「概観ガイカン」(全体をざっと見る)「概念ガイネン」(全体への受けとめ方)(3)おおむね(概)。「大概タイガイ」(4)(全体を強制的にならすことから)強いちから。「気概キガイ」(向かってゆく強い意気。気骨。やる気)
慨 ガイ・なげく 忄部 kǎi
解字 「忄(心)+既(いっぱいになる)」の会意形声。心がいっぱいになり嘆いたり、深く感動したりする。嘆く意と、深く感じる意の二種類がある。
意味 (1)なげく(慨く)。いきどおる。なげき。「慨嘆ガイタン」(いきどおってなげく)「慨然ガイゼン」(いきどおるさま。心を奮い起こすさま)「慨世ガイセイ」(世の有り様をなげく)(2)心に深く感じる。「感慨カンガイ」「感慨無量カンガイムリョウ」
漑 ガイ・そそぐ 氵部 gài
解字 「氵(みず)+既(既の異体字・いっぱいになる)」の会意形声。水をいっぱいになるまで入れること。
意味 (1)そそぐ(漑ぐ)。そそぎこむ。「灌漑カンガイ」(田畑に水をそそぎ土地をうるおす)(2)すすぐ。洗う。
形声字
曁[暨] キ・ギ・およぶ 日部
解字 「旦(日の出)+旣(既の旧字・キ)」の形声。日の出が地平線から昇りはじめるさまを曁キという。[説文解字]は「日が頗(すこ)し見ゆる也(なり)。旦に従い旣キの聲(声)」とする。転じて、およぶ・および、の意味となる。暨キは異体字。
意味 (1)太陽が地平線から昇りはじめる。(2)およぶ(曁ぶ)。至る。「上が求むるも曁(およ)ば不(ず)」(お上が求めても参上しない。国語・周中)(3)[接続詞]および(曁び)「東は海、曁(およ)び朝鮮に至る」(史記・始皇紀)(4)「曁曁キキ」(強く勇ましいさま)※例文は「漢字海」(三省堂)より
厩[廐・廏] キュウ・うまや 厂部 jiù
解字 「厂・广(片屋根)+既=既の異体字(キ⇒キュウ)」の形声。キュウという片屋根の建物。馬を飼う片屋根の小屋を厩キュウという。廐キュウ・廏キュウは異体字。なお、[説文解字]は現在異体字となっている廏キュウの字を「馬舍也(なり)」とする。
漢代のミニチュア陶製厩舎(中国ネット「漢代陶厩」より)
字の変遷<参考> 金文は「广(片屋根)+食(たべもの)+攴ボク」の形。攴は手に棒などをもち相手を打つ形だが、ここでは手に匙(さじ)などの道具をもつ形とされ、全体で片屋根の下で食べ物をとる形。続く楚(戦国)の字形は攴ボクの上部がクの形になり、篆文で「广(片屋根)+皀キュウ(ご馳走を盛った器。これに蓋ふたがついたのが食)+殳(るまた)」になった。ここで殳は匙をもつ手の変化形である。[説文解字]は「馬舎なり」とし馬の飼育舎としている。つまり、馬の字は出てこないが、广(片屋根)の下で食事をしているのは馬であった。この字形が楷書の廏になり、これが正字である。しかし、殳⇒旡に変化した異体字「廐キュウ」が出現したが、これは字形どおり解釈すると食事を既に終わる意である。食事をしている形でも、終わった形でも馬小屋の意味には関係がないということか。さらに广⇒厂に変えた厩キュウという俗字があるが、日本ではこの字が標準字体となった。
厩の古文字は「漢典の厩」(出た画面の字源・字形をクリック)による。
意味 うまや(厩)。馬小屋。馬などの家畜を飼う小屋のこと。「厩舎キュウシャ」(①馬を飼う小屋。②競馬において、調教師が管理する施設・組織の総称)「厩閑キュウカン」(うまや)「厩人キュウジン」(馬の飼育係)「厩肥キュウヒ」(厩舎から出た糞尿をもとに藁をまぜて作った肥料)
<紫色は常用漢字>
バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。
旡 キ 旡部すでのつくり jì
解字 ひざまずく人が後ろを向いて口を開いている形の象形。後ろ向きのあくび、後ろを振り返る意を表すが、単独で用いられることはない。欠ケン(前をむいて口をひらいた形)の逆のかたち。
意味 後ろ向きのあくび。後ろを振り返る。
参考 旡キは、部首「旡すでのつくり」になる。この部首の主な字は既キしかない。
既 キ <いっぱいになる>
既[旣] キ・すでに 旡部すでのつくり jì
解字 甲骨文は、ご馳走を盛った食器の傍らに、後ろ向きに口をひらく人を配したかたちで、ご馳走を食べ終わり、満腹して後ろを向いてあくびをする形。旧字は旣で、「皀キュウ(ご馳走を盛った食器)+旡キ(後ろ向きのあくび)」の会意。食べることが「すでに終わる」意となる。新字体は、旣⇒既に変化。
意味 (1)すでに(既に)。もはや。「既刊キカン」(すでに発行された)「既成キセイ」(すでに出来上がっている)(2)つくす。つきる。「皆既カイキ」(すべてつきる)「皆既日食カイキニッショク」(日光がすべて尽き真っ暗になる日食)
イメージ
ご馳走を食べ終わって「すでにおわる」(既)
食べ終わってお腹が「いっぱいになる」(概・慨・漑)
「形声字」(厩)
音の変化 キ:既 キュウ:厩 ガイ:概・慨・漑
いっぱいになる
概 ガイ・おおむね 木部 gài
石垣島のトーカキゥ
解字 「木(とかきの棒)+既(いっぱいにする)」の会意形声。枡の中に米を山盛りにいれ、とかき棒(斗桝とますの上をならす丸棒)で枡の表面を平らにすること(枡の容量だけの米を入れるため)。全体をならす意味を表わす。
意味 (1)とかき(概)。一斗ますを掻くことから「とかき」という。ますかき。ますかき棒。(2)全体をならす。「概括ガイカツ」(ひっくるめて)「概観ガイカン」(全体をざっと見る)「概念ガイネン」(全体への受けとめ方)(3)おおむね(概)。「大概タイガイ」(4)(全体を強制的にならすことから)強いちから。「気概キガイ」(向かってゆく強い意気。気骨。やる気)
慨 ガイ・なげく 忄部 kǎi
解字 「忄(心)+既(いっぱいになる)」の会意形声。心がいっぱいになり嘆いたり、深く感動したりする。嘆く意と、深く感じる意の二種類がある。
意味 (1)なげく(慨く)。いきどおる。なげき。「慨嘆ガイタン」(いきどおってなげく)「慨然ガイゼン」(いきどおるさま。心を奮い起こすさま)「慨世ガイセイ」(世の有り様をなげく)(2)心に深く感じる。「感慨カンガイ」「感慨無量カンガイムリョウ」
漑 ガイ・そそぐ 氵部 gài
解字 「氵(みず)+既(既の異体字・いっぱいになる)」の会意形声。水をいっぱいになるまで入れること。
意味 (1)そそぐ(漑ぐ)。そそぎこむ。「灌漑カンガイ」(田畑に水をそそぎ土地をうるおす)(2)すすぐ。洗う。
形声字
曁[暨] キ・ギ・およぶ 日部
解字 「旦(日の出)+旣(既の旧字・キ)」の形声。日の出が地平線から昇りはじめるさまを曁キという。[説文解字]は「日が頗(すこ)し見ゆる也(なり)。旦に従い旣キの聲(声)」とする。転じて、およぶ・および、の意味となる。暨キは異体字。
意味 (1)太陽が地平線から昇りはじめる。(2)およぶ(曁ぶ)。至る。「上が求むるも曁(およ)ば不(ず)」(お上が求めても参上しない。国語・周中)(3)[接続詞]および(曁び)「東は海、曁(およ)び朝鮮に至る」(史記・始皇紀)(4)「曁曁キキ」(強く勇ましいさま)※例文は「漢字海」(三省堂)より
厩[廐・廏] キュウ・うまや 厂部 jiù
解字 「厂・广(片屋根)+既=既の異体字(キ⇒キュウ)」の形声。キュウという片屋根の建物。馬を飼う片屋根の小屋を厩キュウという。廐キュウ・廏キュウは異体字。なお、[説文解字]は現在異体字となっている廏キュウの字を「馬舍也(なり)」とする。
漢代のミニチュア陶製厩舎(中国ネット「漢代陶厩」より)
字の変遷<参考> 金文は「广(片屋根)+食(たべもの)+攴ボク」の形。攴は手に棒などをもち相手を打つ形だが、ここでは手に匙(さじ)などの道具をもつ形とされ、全体で片屋根の下で食べ物をとる形。続く楚(戦国)の字形は攴ボクの上部がクの形になり、篆文で「广(片屋根)+皀キュウ(ご馳走を盛った器。これに蓋ふたがついたのが食)+殳(るまた)」になった。ここで殳は匙をもつ手の変化形である。[説文解字]は「馬舎なり」とし馬の飼育舎としている。つまり、馬の字は出てこないが、广(片屋根)の下で食事をしているのは馬であった。この字形が楷書の廏になり、これが正字である。しかし、殳⇒旡に変化した異体字「廐キュウ」が出現したが、これは字形どおり解釈すると食事を既に終わる意である。食事をしている形でも、終わった形でも馬小屋の意味には関係がないということか。さらに广⇒厂に変えた厩キュウという俗字があるが、日本ではこの字が標準字体となった。
厩の古文字は「漢典の厩」(出た画面の字源・字形をクリック)による。
意味 うまや(厩)。馬小屋。馬などの家畜を飼う小屋のこと。「厩舎キュウシャ」(①馬を飼う小屋。②競馬において、調教師が管理する施設・組織の総称)「厩閑キュウカン」(うまや)「厩人キュウジン」(馬の飼育係)「厩肥キュウヒ」(厩舎から出た糞尿をもとに藁をまぜて作った肥料)
<紫色は常用漢字>
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