井戸穴をもとにした字
井 セイ・ショウ・い 二部 jǐng
上は井セイ、下は丹タン、いずれも井戸穴をもとにした字
解字 上の井セイは、四角い井戸のわく型を描いた象形。篆文に見られる丼の字の中点は、つるべを示すといわれる。漢字検索のための部首は「二」。下の丹の甲骨文は、人為的に掘った穴である井の中に点を加えた形。点は顔料を意味し、井から顔料を発掘する形(下欄の丹を参照してください)。
戦国時代の井戸(一乗谷朝倉氏遺跡・ウィキペディア)
意味 (1)いど。地を掘り水を汲みとる所。「井戸いど」「油井ユセイ」「井蛙セイア」(井戸の中の蛙)(2)井の字の形。いげたの形。「井桁いげた」(細長い棒などを組むとき「井」の形にしたもの)「天井テンジョウ」(①部屋上の井字形の面、②内部の最も高い所)「井田セイデン」(井字型に区画した土地)(3)まち。人家が集まっている地域。「市井シセイ」(4)姓に用いられる。「井上いのうえ」「井沢いざわ」「井山いやま」「増井ますい」「樽井たるい」「井口いぐち」ほか。
イメージ
「井戸」(井・穽・囲)
「井戸あな」(丼)
「井の字型」(耕)
音の変化 セイ:井・穽 コウ:耕 イ:囲 どんぶり:丼
いど
穽 セイ・おとしあな 穴部 jǐng
解字 「穴(あな)+井(いど)」の会意形声。井戸のように深い穴のこと。おとし穴をいう。
意味 おとしあな。「陥穽カンセイ」(①獣を陥れる穴。②人を陥れるわな)「檻穽カンセイ」(檻 (おり) と落とし穴)。
囲[圍] イ・かこむ・かこう 囗部
解字 旧字は圍で、「口(かこい)+韋(まわりをめぐる)」の会意形声。ぐるりと周囲をかこむ意。新字体は、旧字の韋が井(井戸枠)に変わった字。新字体で解字すると、井戸枠をかこむ。井戸枠のまわりの意となる。音符「韋イ」にも重出した。
意味 (1)かこむ(囲む)。かこう(囲う)。とりまく。「包囲ホウイ」(2)まわり。「周囲シュウイ」(3)かぎり。境界。「範囲ハンイ」
いど穴
丼 <国字> どんぶり・どん 丶部 jǐng・dǎn
解字 「井(井戸あなの連想⇒鉢に見立てる)+点(食べ物)」の象形。鉢の中に食べ物のはいった姿をかたどった字。発音の「どんぶり」は、井戸に物を投げ入れたときの音が、どんぶり(どぶり・どぼん)、などと表現されるので、それが由来とされる。なお、中国では[説文解字]の字体が丼なので、井の古字としている。
親子丼(「とろとろ親子丼」より
意味 (1)[国]どんぶり(丼)。厚みのある深い陶製のはち。どんぶりばち。また、それに飯を盛り、種をのせた料理。「天丼てんどん」「牛丼ぎゅうどん」「親子丼おやこどん」(2)井の古字。中国では篆文の[説文解字]にあるので井の古字としている。①井と同字、②投物を井中に投じた聲(声)、③姓、の意味がある。
井の字型
耕 コウ・たがやす 耒部すきへん gēng
解字 「耒(すき)+井(井の字型)」の会意。耒ライは、土地を掘り起こすスキの象形。そのスキで井字型に区画した土地を掘り起こして耕すこと。
意味 (1)たがやす(耕す)。「耕作コウサク」「農耕ノウコウ」「牛耕ギュウコウ」「耕耘コウウン」(耕し草を取る)(2)働いて生計を立てる。「筆耕ヒッコウ」(筆で文章を書き生計をたてる)
丹 タン <朱砂を採取する井戸>
丹 タン・に・あか 丶部 dān
解字 甲骨文の下の字は人為的に掘った穴である井の中に点を加えた形。点は顔料を意味し、井から顔料を発掘する形。上の字は井の両横が突き出ない形で、これが篆文まで続いた。隷書(漢代)から、形が変わり現在の丹になった。井の中の点は顔料の丹(に)。丹は硫黄と水銀が化合した赤土で、水銀・赤色顔料の原料となる。朱砂の状態で出土し、井戸状に掘り下げて採取した。古代の中国では採取した丹を練って不老不死の薬としたので練り薬の意となる。また、不老不死の薬である丹を服用する代わりに、人の内側の気を高めて丹とする考え方が現れ、そこから人の気やまごころの意となった。
意味 (1)あか(丹)。に(丹)。赤い色。「丹朱タンシュ」(あかいこと)「丹頂鶴タンチョウづる」(頭が赤い鶴)「丹塗(にぬ)り」(あかい色で塗る)(2)よく練った薬。「丹薬タンヤク」(不老の練り薬)「仙丹センタン」(不老不死の薬。仙人になれる薬)(3)集中する気持ち。まごころ。「丹誠タンセイ」「丹念タンネン」「丹精タンセイ」
イメージ
「あかい」(丹・旃)
「形声字」(栴)
音の変化 タン:丹 セン:旃・栴
あかい
旃 セン・はた 方部 zhān
解字 「旗(はた)の略体+丹(あかい)」の会意形声。赤い色の旗をいう。また、氈セン(毛織物)に通じ、毛おりものの意でも使われる。
意味 (1)はた(旃)。無地の赤い旗。「旃旌センセイ」(はた。旃も旌も、はたの意)(2)毛おりもの。「旃毛センモウ」(毛織の衣服の毛)
形声字
栴 セン 木部 zhān
解字 「木(き)+旃の略体(セン)」の会意形声。センという名の木。
意味 栴檀センダンに用いられる字。栴檀とは、(1)インド原産のビャクダン科の半寄生する熱帯性常緑樹。芳香が特徴で香木として利用される。梵語でcandana(チャンダナ)と呼ばれ、中国で栴檀那の字が当てられた。栴檀は、それを短くしたもの。「栴檀センダンは双葉より芳(かんば)し」(栴檀は芽を出した双葉の頃から香気があるように、大成する人は子供の頃からその片鱗をみせる)
栴檀那(栴檀)・ビャクダンの花(「山科植物資料館の植物紹介」より)
(2)[国]センダン科の落葉高木。果実・樹皮は漢方薬として、材は建築・器具用材として使われる。古名は、おうち。
①②
①センダン・栴檀(おうち)の実。②その幹。(筆者撮影2024.11.20)
<紫色は常用漢字>
井 セイ・ショウ・い 二部 jǐng
上は井セイ、下は丹タン、いずれも井戸穴をもとにした字
解字 上の井セイは、四角い井戸のわく型を描いた象形。篆文に見られる丼の字の中点は、つるべを示すといわれる。漢字検索のための部首は「二」。下の丹の甲骨文は、人為的に掘った穴である井の中に点を加えた形。点は顔料を意味し、井から顔料を発掘する形(下欄の丹を参照してください)。
戦国時代の井戸(一乗谷朝倉氏遺跡・ウィキペディア)
意味 (1)いど。地を掘り水を汲みとる所。「井戸いど」「油井ユセイ」「井蛙セイア」(井戸の中の蛙)(2)井の字の形。いげたの形。「井桁いげた」(細長い棒などを組むとき「井」の形にしたもの)「天井テンジョウ」(①部屋上の井字形の面、②内部の最も高い所)「井田セイデン」(井字型に区画した土地)(3)まち。人家が集まっている地域。「市井シセイ」(4)姓に用いられる。「井上いのうえ」「井沢いざわ」「井山いやま」「増井ますい」「樽井たるい」「井口いぐち」ほか。
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「井戸」(井・穽・囲)
「井戸あな」(丼)
「井の字型」(耕)
音の変化 セイ:井・穽 コウ:耕 イ:囲 どんぶり:丼
いど
穽 セイ・おとしあな 穴部 jǐng
解字 「穴(あな)+井(いど)」の会意形声。井戸のように深い穴のこと。おとし穴をいう。
意味 おとしあな。「陥穽カンセイ」(①獣を陥れる穴。②人を陥れるわな)「檻穽カンセイ」(檻 (おり) と落とし穴)。
囲[圍] イ・かこむ・かこう 囗部
解字 旧字は圍で、「口(かこい)+韋(まわりをめぐる)」の会意形声。ぐるりと周囲をかこむ意。新字体は、旧字の韋が井(井戸枠)に変わった字。新字体で解字すると、井戸枠をかこむ。井戸枠のまわりの意となる。音符「韋イ」にも重出した。
意味 (1)かこむ(囲む)。かこう(囲う)。とりまく。「包囲ホウイ」(2)まわり。「周囲シュウイ」(3)かぎり。境界。「範囲ハンイ」
いど穴
丼 <国字> どんぶり・どん 丶部 jǐng・dǎn
解字 「井(井戸あなの連想⇒鉢に見立てる)+点(食べ物)」の象形。鉢の中に食べ物のはいった姿をかたどった字。発音の「どんぶり」は、井戸に物を投げ入れたときの音が、どんぶり(どぶり・どぼん)、などと表現されるので、それが由来とされる。なお、中国では[説文解字]の字体が丼なので、井の古字としている。
親子丼(「とろとろ親子丼」より
意味 (1)[国]どんぶり(丼)。厚みのある深い陶製のはち。どんぶりばち。また、それに飯を盛り、種をのせた料理。「天丼てんどん」「牛丼ぎゅうどん」「親子丼おやこどん」(2)井の古字。中国では篆文の[説文解字]にあるので井の古字としている。①井と同字、②投物を井中に投じた聲(声)、③姓、の意味がある。
井の字型
耕 コウ・たがやす 耒部すきへん gēng
解字 「耒(すき)+井(井の字型)」の会意。耒ライは、土地を掘り起こすスキの象形。そのスキで井字型に区画した土地を掘り起こして耕すこと。
意味 (1)たがやす(耕す)。「耕作コウサク」「農耕ノウコウ」「牛耕ギュウコウ」「耕耘コウウン」(耕し草を取る)(2)働いて生計を立てる。「筆耕ヒッコウ」(筆で文章を書き生計をたてる)
丹 タン <朱砂を採取する井戸>
丹 タン・に・あか 丶部 dān
解字 甲骨文の下の字は人為的に掘った穴である井の中に点を加えた形。点は顔料を意味し、井から顔料を発掘する形。上の字は井の両横が突き出ない形で、これが篆文まで続いた。隷書(漢代)から、形が変わり現在の丹になった。井の中の点は顔料の丹(に)。丹は硫黄と水銀が化合した赤土で、水銀・赤色顔料の原料となる。朱砂の状態で出土し、井戸状に掘り下げて採取した。古代の中国では採取した丹を練って不老不死の薬としたので練り薬の意となる。また、不老不死の薬である丹を服用する代わりに、人の内側の気を高めて丹とする考え方が現れ、そこから人の気やまごころの意となった。
意味 (1)あか(丹)。に(丹)。赤い色。「丹朱タンシュ」(あかいこと)「丹頂鶴タンチョウづる」(頭が赤い鶴)「丹塗(にぬ)り」(あかい色で塗る)(2)よく練った薬。「丹薬タンヤク」(不老の練り薬)「仙丹センタン」(不老不死の薬。仙人になれる薬)(3)集中する気持ち。まごころ。「丹誠タンセイ」「丹念タンネン」「丹精タンセイ」
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「あかい」(丹・旃)
「形声字」(栴)
音の変化 タン:丹 セン:旃・栴
あかい
旃 セン・はた 方部 zhān
解字 「旗(はた)の略体+丹(あかい)」の会意形声。赤い色の旗をいう。また、氈セン(毛織物)に通じ、毛おりものの意でも使われる。
意味 (1)はた(旃)。無地の赤い旗。「旃旌センセイ」(はた。旃も旌も、はたの意)(2)毛おりもの。「旃毛センモウ」(毛織の衣服の毛)
形声字
栴 セン 木部 zhān
解字 「木(き)+旃の略体(セン)」の会意形声。センという名の木。
意味 栴檀センダンに用いられる字。栴檀とは、(1)インド原産のビャクダン科の半寄生する熱帯性常緑樹。芳香が特徴で香木として利用される。梵語でcandana(チャンダナ)と呼ばれ、中国で栴檀那の字が当てられた。栴檀は、それを短くしたもの。「栴檀センダンは双葉より芳(かんば)し」(栴檀は芽を出した双葉の頃から香気があるように、大成する人は子供の頃からその片鱗をみせる)
栴檀那(栴檀)・ビャクダンの花(「山科植物資料館の植物紹介」より)
(2)[国]センダン科の落葉高木。果実・樹皮は漢方薬として、材は建築・器具用材として使われる。古名は、おうち。
①②
①センダン・栴檀(おうち)の実。②その幹。(筆者撮影2024.11.20)
<紫色は常用漢字>
千葉県の玉前神社の石碑にあった「白鳥丼」は、「白鳥井」と読む、と以前教えていただきましたが、
こちらの記事を読んで納得しました。
篆書の「丼」は
人為的に掘った穴である井の中に点を加えた形。点は顔料を意味し、井から顔料を発掘する形
だったのですね!ありがとうございました。
>コメントありがとうございます。井の篆文(説文解字)は字体が丼なので、井の古字とされています。
丼は丹の甲骨文と形が同じですが、意味は「に・あか」ではありません。「丼どんぶり」の説明に追加させていただきましたので、ご覧ください。
ご指摘により、説明不足を補うことができました。感謝!!