補充改訂しました。
享[𦎫] ジュン・トン 亠部
解字 この字は単独では𦎫ジュン「亯(先祖を祀る建物)+羊」であり楷書で享の形になるが、享には享キョウという字があるため単独での使用はない。上の古文字変遷図は淳ジュンの字から氵を省いて作成した。金文・篆文は「亯(先祖を祀る建物)+羊(ひつじ)」で、先祖を祀る建物に羊をそなえて、祖先神をもてなす意を表わす。隷書(漢代)から亯の下部と羊が合わさって♀のような形になり、現代字で子に変化した享ジュンになった。意味は、祖先を祀る建物に供物の羊を供えるかたちから、「あつい心がある」意だが、単独では用いられず、音符イメージとなる。
意味 あつい心がある。
イメージ
「あつい心がある」(惇・淳・醇・諄)
「その他」(鶉)
音の変化 ジュン:惇・淳・醇・諄・鶉
あつい心がある
惇 ジュン・トン・あつい 忄部
解字 篆文は「忄(こころ)+[亯(先祖を祀る建物)+羊]」の会意形声。𦎫(亯+羊)は、祖先を祀る建物に羊を供える形からあつい心がある意で、これに忄(こころ)をつけた惇は、まごころの意を確認した字で、てあつい心の意。
意味 あつい(惇い)。まこと。まごころ。(=淳)。「惇朴ジュンボク」(あつくいつわりがない)「惇厚トンコウ」(惇も厚も、あつい意)
淳 ジュン・あつい 氵部
解字 「氵(みず)+享(あつい心がある)」の会意形声。氵(みず)は、況キョウ(ありさま・ようす)の意で、淳は心があついありさまをいう。
意味 (1)あつい(淳い)。まごころがある。(=惇)「淳厚ジュンコウ」(まごころがあり手厚い)「淳風ジュンプウ」(人情のあつい風俗) (2)すなお。飾り気がない。「淳朴ジュンボク」
醇 ジュン 酉部
解字 「酉(さけ)+享(あつい心がある)」の会意形声。醇は、あつい心を込めて供える酒の意。一般に濃厚な酒の意で用いる。また、惇ジュン(あつい)の意味のほか、純ジュンに通じて、混じりけのないさまに用いる。
意味 (1)味の濃い酒。まじりのない酒。「醇酒ジュンシュ」(濃厚な酒。まぜもののない酒)「醇酒かたざけ」(濃いどぶろく)「芳醇ホウジュン」(酒の香りが高く味がよいこと)(2)あつい。てあつい。「醇朴ジュンボク」「醇風ジュンプウ」(人情があつい風俗)(3)まじりけがない。もっぱら。「醇正ジュンセイ」(まじりけのない本物=純正)
諄 ジュン 言部
解字 「言(ことば)+享(あつい心がある)」の会意形声。諄ジュンは、言葉で、てあつくもてなすこと。惇・淳・醇と、ほぼ同じ意味だが、日本では適切な和訓ではないが一部の字典で「くどい」意味がつけられている。
意味 (1)あつい。ねんごろ。ていねい。「諄諄ジュンジュン」(何度も丁寧に説明する)(2)くどい(諄い)。「諄諄くどくど」(しつこく言う)
その他
鶉 ジュン・うずら 鳥部
解字 「鳥(とり)+享(ジュン)」の形声。ジュンという名の鳥。享ジュンのイメージは不明。鳥のうずらをいう。和名は、「うずくまる」ように丸みをおびた鳥から来ている。
鶉(ウィキペディアより)
意味 うずら(鶉)。キジ科の鳥。体は丸みをおび、羽は茶褐色でまだら模様がある。肉・卵を食用とする。「鶉斑うずらふ」(鶉の羽にあるまだら模様。また、それに似た模様のある陶器)「鶉豆うずらまめ」(鶉の羽に似たまだら模様がある豆。インゲン豆の一種)「鶉居ジュンキョ」(定まった巣をもたない鶉のように転々として住居がさだまらない)「鶉衣ジュンイ」(みすぼらしい着物。鶉の羽にまだら模様があり、尾が短く切れていることから)
敦 トン・タイ・あつい
敦 トン・タイ・ツイ・あつい 攵部
解字 甲骨文は「先祖を祀る建物+羊(ひつじ)」で、先祖を祀る建物に羊をそなえて、祖先神をもてなす意を表わす。しかし、仮借カシャ(当て字)されて、軍事攻撃の意に用いられている[甲骨文字辞典]。おそらく同音の屯トン(軍隊が駐屯する)に影響された意味であろう。金文第1字は甲骨文字と同じで、意味は軍事的な「敦守トンシュ」(狭い谷の関を守る武将)という語がある。金文第2字に手に棒などをもつ攴ボクが付いたのは、こうした軍事的意味を表すためと思われる。また、金文の特徴は、この字が黍きびや稲などを入れる青銅食器の意で用いられることである。この意味は春秋戦国期に盛行した。
篆文は、先祖を祀る建物⇒亯になり「亯キョウ+羊+攴」の字形となった。現代字は、篆文の𦎫(亯+羊)⇒享に、攴⇒攵に変化した敦トンとなった。意味は甲骨から金文の字形の「先祖を祀る建物+羊(ひつじ)」が表す「あつい心」が現代まで続いている。一方、金文から加わった攴ボク(うつ)は、この字に多くの意味を加えた。漢和辞典をみると、「あつい・ねんごろ」以外に、①うつ(伐つ)。②せめる(責める)。③大きい。さかん。④たむろする。⑤せまる(迫る)などの意味が列挙されている。しかし、幸いなことに敦トンの熟語は、ほとんどが「あつい・ねんごろ」の意味と地名でありわかりやすい。これ以外の意味は、敦トンの音符字で表されているようである。
意味 (1)あつい(敦い)。てあつい。人情があつい。「敦厚トンコウ」(誠実で人情にあつい)「敦朴トンボク」(人情があつく素朴である)(2)祭祀のときに黍などの穀物を盛る器。(3)地名。「敦煌トンコウ」(中国・甘粛省の市。=燉煌。現地の言葉(トンコウ)の音訳とされる。)「敦賀つるが」(福井県南部の敦賀湾に面する港湾都市)
イメージ
「あつい・ねんごろ」(敦)
「形声字」(暾・燉・墩)
音の分布 トン:敦・暾・燉・墩
形声字
暾 トン 日部
解字 「日(ひ)+敦(トン)」の形声。宋代の「廣韻コウイン」「集韻シュウイン」は「日の出始め」とする。発音は敦(トン)。
意味 (1)日の出。朝日。「紅暾コウトン」「朝暾チョウトン」 (2)あきらか。「暾暾トントン」(日があきらかで盛んなさま)
燉 トン 火部
解字 「火(ひ)+敦(トン)」の形声。火が盛んに燃えるさまをいい、発音は敦(トン)。
意味 (1)火が盛んにもえるさま。火の色。 (2)あぶる・ふかす・むす・料理法。「燉菜トンサイ」(シチュー) (3)あたたかい。「温燉オントン」「燉酒トンシュ」(燗酒かんざけ)「燉茶トンチャ」(茶を入れる) (4)地名「燉煌トンコウ」(中国・甘粛省の市。=敦煌)
墩 トン 土部
解字 「土(つち)+敦(トン)」の形声。土がつみあがったさまをいい、発音は敦(トン)。
意味 (1)積みあがった土。土盛り。「墩台トンダイ」(烽火台)「墩堡トンボ」(とりで)「墩墩トントン」(墩は「土盛り」で、墩墩は健康・頑丈・篤実・活発を意味し、また子どもを象徴する表現)
関連音符 音符「享キョウ と 郭カク」へ
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享[𦎫] ジュン・トン 亠部
解字 この字は単独では𦎫ジュン「亯(先祖を祀る建物)+羊」であり楷書で享の形になるが、享には享キョウという字があるため単独での使用はない。上の古文字変遷図は淳ジュンの字から氵を省いて作成した。金文・篆文は「亯(先祖を祀る建物)+羊(ひつじ)」で、先祖を祀る建物に羊をそなえて、祖先神をもてなす意を表わす。隷書(漢代)から亯の下部と羊が合わさって♀のような形になり、現代字で子に変化した享ジュンになった。意味は、祖先を祀る建物に供物の羊を供えるかたちから、「あつい心がある」意だが、単独では用いられず、音符イメージとなる。
意味 あつい心がある。
イメージ
「あつい心がある」(惇・淳・醇・諄)
「その他」(鶉)
音の変化 ジュン:惇・淳・醇・諄・鶉
あつい心がある
惇 ジュン・トン・あつい 忄部
解字 篆文は「忄(こころ)+[亯(先祖を祀る建物)+羊]」の会意形声。𦎫(亯+羊)は、祖先を祀る建物に羊を供える形からあつい心がある意で、これに忄(こころ)をつけた惇は、まごころの意を確認した字で、てあつい心の意。
意味 あつい(惇い)。まこと。まごころ。(=淳)。「惇朴ジュンボク」(あつくいつわりがない)「惇厚トンコウ」(惇も厚も、あつい意)
淳 ジュン・あつい 氵部
解字 「氵(みず)+享(あつい心がある)」の会意形声。氵(みず)は、況キョウ(ありさま・ようす)の意で、淳は心があついありさまをいう。
意味 (1)あつい(淳い)。まごころがある。(=惇)「淳厚ジュンコウ」(まごころがあり手厚い)「淳風ジュンプウ」(人情のあつい風俗) (2)すなお。飾り気がない。「淳朴ジュンボク」
醇 ジュン 酉部
解字 「酉(さけ)+享(あつい心がある)」の会意形声。醇は、あつい心を込めて供える酒の意。一般に濃厚な酒の意で用いる。また、惇ジュン(あつい)の意味のほか、純ジュンに通じて、混じりけのないさまに用いる。
意味 (1)味の濃い酒。まじりのない酒。「醇酒ジュンシュ」(濃厚な酒。まぜもののない酒)「醇酒かたざけ」(濃いどぶろく)「芳醇ホウジュン」(酒の香りが高く味がよいこと)(2)あつい。てあつい。「醇朴ジュンボク」「醇風ジュンプウ」(人情があつい風俗)(3)まじりけがない。もっぱら。「醇正ジュンセイ」(まじりけのない本物=純正)
諄 ジュン 言部
解字 「言(ことば)+享(あつい心がある)」の会意形声。諄ジュンは、言葉で、てあつくもてなすこと。惇・淳・醇と、ほぼ同じ意味だが、日本では適切な和訓ではないが一部の字典で「くどい」意味がつけられている。
意味 (1)あつい。ねんごろ。ていねい。「諄諄ジュンジュン」(何度も丁寧に説明する)(2)くどい(諄い)。「諄諄くどくど」(しつこく言う)
その他
鶉 ジュン・うずら 鳥部
解字 「鳥(とり)+享(ジュン)」の形声。ジュンという名の鳥。享ジュンのイメージは不明。鳥のうずらをいう。和名は、「うずくまる」ように丸みをおびた鳥から来ている。
鶉(ウィキペディアより)
意味 うずら(鶉)。キジ科の鳥。体は丸みをおび、羽は茶褐色でまだら模様がある。肉・卵を食用とする。「鶉斑うずらふ」(鶉の羽にあるまだら模様。また、それに似た模様のある陶器)「鶉豆うずらまめ」(鶉の羽に似たまだら模様がある豆。インゲン豆の一種)「鶉居ジュンキョ」(定まった巣をもたない鶉のように転々として住居がさだまらない)「鶉衣ジュンイ」(みすぼらしい着物。鶉の羽にまだら模様があり、尾が短く切れていることから)
敦 トン・タイ・あつい
敦 トン・タイ・ツイ・あつい 攵部
解字 甲骨文は「先祖を祀る建物+羊(ひつじ)」で、先祖を祀る建物に羊をそなえて、祖先神をもてなす意を表わす。しかし、仮借カシャ(当て字)されて、軍事攻撃の意に用いられている[甲骨文字辞典]。おそらく同音の屯トン(軍隊が駐屯する)に影響された意味であろう。金文第1字は甲骨文字と同じで、意味は軍事的な「敦守トンシュ」(狭い谷の関を守る武将)という語がある。金文第2字に手に棒などをもつ攴ボクが付いたのは、こうした軍事的意味を表すためと思われる。また、金文の特徴は、この字が黍きびや稲などを入れる青銅食器の意で用いられることである。この意味は春秋戦国期に盛行した。
篆文は、先祖を祀る建物⇒亯になり「亯キョウ+羊+攴」の字形となった。現代字は、篆文の𦎫(亯+羊)⇒享に、攴⇒攵に変化した敦トンとなった。意味は甲骨から金文の字形の「先祖を祀る建物+羊(ひつじ)」が表す「あつい心」が現代まで続いている。一方、金文から加わった攴ボク(うつ)は、この字に多くの意味を加えた。漢和辞典をみると、「あつい・ねんごろ」以外に、①うつ(伐つ)。②せめる(責める)。③大きい。さかん。④たむろする。⑤せまる(迫る)などの意味が列挙されている。しかし、幸いなことに敦トンの熟語は、ほとんどが「あつい・ねんごろ」の意味と地名でありわかりやすい。これ以外の意味は、敦トンの音符字で表されているようである。
意味 (1)あつい(敦い)。てあつい。人情があつい。「敦厚トンコウ」(誠実で人情にあつい)「敦朴トンボク」(人情があつく素朴である)(2)祭祀のときに黍などの穀物を盛る器。(3)地名。「敦煌トンコウ」(中国・甘粛省の市。=燉煌。現地の言葉(トンコウ)の音訳とされる。)「敦賀つるが」(福井県南部の敦賀湾に面する港湾都市)
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「あつい・ねんごろ」(敦)
「形声字」(暾・燉・墩)
音の分布 トン:敦・暾・燉・墩
形声字
暾 トン 日部
解字 「日(ひ)+敦(トン)」の形声。宋代の「廣韻コウイン」「集韻シュウイン」は「日の出始め」とする。発音は敦(トン)。
意味 (1)日の出。朝日。「紅暾コウトン」「朝暾チョウトン」 (2)あきらか。「暾暾トントン」(日があきらかで盛んなさま)
燉 トン 火部
解字 「火(ひ)+敦(トン)」の形声。火が盛んに燃えるさまをいい、発音は敦(トン)。
意味 (1)火が盛んにもえるさま。火の色。 (2)あぶる・ふかす・むす・料理法。「燉菜トンサイ」(シチュー) (3)あたたかい。「温燉オントン」「燉酒トンシュ」(燗酒かんざけ)「燉茶トンチャ」(茶を入れる) (4)地名「燉煌トンコウ」(中国・甘粛省の市。=敦煌)
墩 トン 土部
解字 「土(つち)+敦(トン)」の形声。土がつみあがったさまをいい、発音は敦(トン)。
意味 (1)積みあがった土。土盛り。「墩台トンダイ」(烽火台)「墩堡トンボ」(とりで)「墩墩トントン」(墩は「土盛り」で、墩墩は健康・頑丈・篤実・活発を意味し、また子どもを象徴する表現)
関連音符 音符「享キョウ と 郭カク」へ
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