読売新聞 2016年05月05日 05時20分
アイヌと冒険 リアルに
書店員など各界のマンガ好きが選ぶ「マンガ大賞2016」に、野田サトルさんの『ゴールデンカムイ』が選ばれた。明治後期の北海道を舞台に、元軍人の男がアイヌ民族の少女とともに埋蔵金探しに挑む物語。魅力的なキャラクターに深みのあるミステリー、歴史ロマン、サバイバル、アイヌ民族の生活の細やかな描写など多角的なエンターテインメント性が高く評価された。
作品は「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で2014年から連載が始まった。
日露戦争帰りで「不死身の杉元」という異名を持つ元軍人が、網走監獄に収監される前に死刑囚が隠した莫大ばくだいな金塊の存在を知る。杉元は少女アシ●パとともに、金塊を探す軍隊や警察と戦いながら先を争う。単行本は先月19日に第7巻が発売され、累計部数は220万部を超える。
このほど東京都内で行われた授賞式で野田さんは「日露戦争にも従軍した屯田兵の曽祖父の話を描きたいと思っていた頃、北海道が舞台の狩猟小説を読み、その二つを合わせた」とストーリーができた経緯を明かした。
連載に当たって心がけたのは「作品のリアリティー」だ。出身は北海道の北広島市。道内に長く住んでいたが、今回の取材で「1周するぐらい回った」。アイヌの人たちの言葉や生活用具まで正確に描くため、北海道アイヌ協会や関係者に何度も話を聞き、作品に仕上げる前には大学の研究者に考証も依頼した。
アシ●パが時折見せる、独特の食文化も興味深い。軍人らの追跡をかわしながらも極寒の山中で生き抜くため、リスやウサギなどの肉を生で食べるシーンも。アシ●パに「目玉食べていいぞ」と勧められた屈強の男、杉元が嫌々ながらも口にする場面が印象に残る。
作品の中で狩猟の描写が足りないと感じると、週刊連載の多忙な中でも冬の北海道を訪れ、地元猟師のシカ狩りに同行するほどの行動力も。鉄砲で仕留めたシカを解体する様子まで丁寧に取材したという。限りない探究心が骨太の作品を支えているようだ。
今回の選考では、迷宮のモンスターを料理して食べるという九井諒子さんの異色作『ダンジョン飯』が2位だった。「異食グルメ対決」とも言われた選考レースだっただけに、野田さんも「ダンジョン飯に勝てたのがうれしい」と満面の笑みで話し、「これからも読者の期待を(いい意味で)裏切る展開にしたい」と抱負を語った。
編集者の大熊八甲さんは野田さんについて、「行動力と情報の知識量を作品に落としこむ能力が高い」と話す。また、次に何が出てくるか分からない展開の面白さを「和風闇鍋ウエスタン」と表現しており、今後も読者目線で楽しませたいという。
※●はいずれも「リ」の小文字
「この瞬間一番」の作品選ぶ
マンガ大賞は「今、この瞬間一番おもしろいマンガを選ぶ」をテーマに2008年に創設された。選考対象は前年の1月1日から12月31日までに出版された単行本のうち、最大巻数が8巻までの作品。
1次選考で原則10作品が選ばれ、2次選考で各選考員がトップ3(1位3ポイント、2位2ポイント、3位1ポイント)を選び、総得点で大賞を決める。今年の選考員は1次が96人、2次が91人だった。
過去の受賞作には09年の『ちはやふる』(講談社)のように受賞後、映像化の影響もあって発行部数が増え、累計1000万部を超えた作品も。昨年の『かくかくしかじか』(集英社)も部数を伸ばし、全5巻で77万部になっている。(西條耕一)
http://www.yomiuri.co.jp/life/book/news/20160426-OYT8T50100.html
アイヌと冒険 リアルに
書店員など各界のマンガ好きが選ぶ「マンガ大賞2016」に、野田サトルさんの『ゴールデンカムイ』が選ばれた。明治後期の北海道を舞台に、元軍人の男がアイヌ民族の少女とともに埋蔵金探しに挑む物語。魅力的なキャラクターに深みのあるミステリー、歴史ロマン、サバイバル、アイヌ民族の生活の細やかな描写など多角的なエンターテインメント性が高く評価された。
作品は「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で2014年から連載が始まった。
日露戦争帰りで「不死身の杉元」という異名を持つ元軍人が、網走監獄に収監される前に死刑囚が隠した莫大ばくだいな金塊の存在を知る。杉元は少女アシ●パとともに、金塊を探す軍隊や警察と戦いながら先を争う。単行本は先月19日に第7巻が発売され、累計部数は220万部を超える。
このほど東京都内で行われた授賞式で野田さんは「日露戦争にも従軍した屯田兵の曽祖父の話を描きたいと思っていた頃、北海道が舞台の狩猟小説を読み、その二つを合わせた」とストーリーができた経緯を明かした。
連載に当たって心がけたのは「作品のリアリティー」だ。出身は北海道の北広島市。道内に長く住んでいたが、今回の取材で「1周するぐらい回った」。アイヌの人たちの言葉や生活用具まで正確に描くため、北海道アイヌ協会や関係者に何度も話を聞き、作品に仕上げる前には大学の研究者に考証も依頼した。
アシ●パが時折見せる、独特の食文化も興味深い。軍人らの追跡をかわしながらも極寒の山中で生き抜くため、リスやウサギなどの肉を生で食べるシーンも。アシ●パに「目玉食べていいぞ」と勧められた屈強の男、杉元が嫌々ながらも口にする場面が印象に残る。
作品の中で狩猟の描写が足りないと感じると、週刊連載の多忙な中でも冬の北海道を訪れ、地元猟師のシカ狩りに同行するほどの行動力も。鉄砲で仕留めたシカを解体する様子まで丁寧に取材したという。限りない探究心が骨太の作品を支えているようだ。
今回の選考では、迷宮のモンスターを料理して食べるという九井諒子さんの異色作『ダンジョン飯』が2位だった。「異食グルメ対決」とも言われた選考レースだっただけに、野田さんも「ダンジョン飯に勝てたのがうれしい」と満面の笑みで話し、「これからも読者の期待を(いい意味で)裏切る展開にしたい」と抱負を語った。
編集者の大熊八甲さんは野田さんについて、「行動力と情報の知識量を作品に落としこむ能力が高い」と話す。また、次に何が出てくるか分からない展開の面白さを「和風闇鍋ウエスタン」と表現しており、今後も読者目線で楽しませたいという。
※●はいずれも「リ」の小文字
「この瞬間一番」の作品選ぶ
マンガ大賞は「今、この瞬間一番おもしろいマンガを選ぶ」をテーマに2008年に創設された。選考対象は前年の1月1日から12月31日までに出版された単行本のうち、最大巻数が8巻までの作品。
1次選考で原則10作品が選ばれ、2次選考で各選考員がトップ3(1位3ポイント、2位2ポイント、3位1ポイント)を選び、総得点で大賞を決める。今年の選考員は1次が96人、2次が91人だった。
過去の受賞作には09年の『ちはやふる』(講談社)のように受賞後、映像化の影響もあって発行部数が増え、累計1000万部を超えた作品も。昨年の『かくかくしかじか』(集英社)も部数を伸ばし、全5巻で77万部になっている。(西條耕一)
http://www.yomiuri.co.jp/life/book/news/20160426-OYT8T50100.html