朝日新聞 2020年1月8日03時00分
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立岩の前でアイヌの伝説や地層の成り立ちを学ぶ「ミンタラ探検隊」の参加者=2019年12月22日午前10時44分、北海道旭川市
「地球と遊ぼう」をキャッチフレーズに、北海道旭川市周辺の多様な地形と、その上に成り立つ人々の営みに触れる、「ミンタラ探検隊」が結成された。地域おこし協力隊員が中心となり、旭川市などが進める「大雪山カムイミンタラジオパーク構想」の実現に向けて、地域の魅力発掘に取り組む。
昨年12月22日、ミンタラ探検隊が向かったのは、上川盆地を流れる石狩川や美瑛川が合流する旭川市の忠和地区。探検のテーマは「アイヌ妖刀伝説の謎をひもとけ」だ。
石狩川のそばにある高さ約8メートルの「立岩」は、1億年前に地下深くで作られた変成岩だ。川へ迫る丘陵地の際に立ち、二つに割れている。探検隊長で地域おこし協力隊の岩出昌さん(33)は、参加した12人の大人や子どもたちに、この岩にまつわるアイヌの妖刀伝説を物語った。
伝説は「人々を切り回る妖刀を立岩に納めると岩が二つに割れ、その後、近くの沼に投げ入れるとコタンに平和が戻った」というもの。立岩のそばには、今は埋め立てられているものの、かつては「底なし沼」として知られる沼があった。
岩出さんは「ちょうどこの地が、1億年前の変成岩が露出する場所と、上川盆地の湿地との境目。だからこのような伝説が生まれたのかもしれません」と解説する。家族で参加した渉里(わたり)美香さん(37)は「子どものころ、この周辺で遊んでいたけど、知らないことばかり。地球の活動についても学べて、面白かった」と満足そうだった。
探検隊の発足は昨年11月。隊の名前は「カムイミンタラ」(神々の遊ぶ庭)から取った。大学院で地学を学んだ岩出さんは、「旭川市内の公園や住宅の庭先には、1億年前の変成岩がゴロゴロしている」と目を輝かせ、「自分たちの暮らしや社会が、地球とどうつながっているかを感じて欲しい」と話す。
旭川市や周辺6町、市民団体などは、この地域の「ジオパーク」への認定を目指し、「大雪山カムイミンタラジオパーク構想」を掲げる。ジオパーク構想推進協議会の事務局は「認定にあたり、住民の盛り上がりも大切。探検隊の活動で多くの人が魅力を知り、楽しんでもらえたら」と期待する。
探検隊は、現場に出かける「探検」のほか、座学や子どもも楽しめる実験にも取り組む。今月26日午前には「冬の嵐山に挑め! 開拓130年目 雪の旭川を“国見”せよ」と題した「探検」を行う。詳細は探検隊のフェイスブックか、電話(080・1095・1022)で。(本田大次郎)
◇
〈ジオパーク〉 ジオは地球や大地の意味で、貴重な地形や地層があり、地球や生物、人々の暮らしのつながりを学べる場所のこと。日本ジオパーク委員会が認定する「日本ジオパーク」は全国に44地域ある。このうち道内は洞爺湖有珠山、アポイ岳、白滝、三笠、とかち鹿追の5地域が認定されている。
https://www.asahi.com/articles/ASMDS4SRGMDSIIPE00K.html
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立岩の前でアイヌの伝説や地層の成り立ちを学ぶ「ミンタラ探検隊」の参加者=2019年12月22日午前10時44分、北海道旭川市
「地球と遊ぼう」をキャッチフレーズに、北海道旭川市周辺の多様な地形と、その上に成り立つ人々の営みに触れる、「ミンタラ探検隊」が結成された。地域おこし協力隊員が中心となり、旭川市などが進める「大雪山カムイミンタラジオパーク構想」の実現に向けて、地域の魅力発掘に取り組む。
昨年12月22日、ミンタラ探検隊が向かったのは、上川盆地を流れる石狩川や美瑛川が合流する旭川市の忠和地区。探検のテーマは「アイヌ妖刀伝説の謎をひもとけ」だ。
石狩川のそばにある高さ約8メートルの「立岩」は、1億年前に地下深くで作られた変成岩だ。川へ迫る丘陵地の際に立ち、二つに割れている。探検隊長で地域おこし協力隊の岩出昌さん(33)は、参加した12人の大人や子どもたちに、この岩にまつわるアイヌの妖刀伝説を物語った。
伝説は「人々を切り回る妖刀を立岩に納めると岩が二つに割れ、その後、近くの沼に投げ入れるとコタンに平和が戻った」というもの。立岩のそばには、今は埋め立てられているものの、かつては「底なし沼」として知られる沼があった。
岩出さんは「ちょうどこの地が、1億年前の変成岩が露出する場所と、上川盆地の湿地との境目。だからこのような伝説が生まれたのかもしれません」と解説する。家族で参加した渉里(わたり)美香さん(37)は「子どものころ、この周辺で遊んでいたけど、知らないことばかり。地球の活動についても学べて、面白かった」と満足そうだった。
探検隊の発足は昨年11月。隊の名前は「カムイミンタラ」(神々の遊ぶ庭)から取った。大学院で地学を学んだ岩出さんは、「旭川市内の公園や住宅の庭先には、1億年前の変成岩がゴロゴロしている」と目を輝かせ、「自分たちの暮らしや社会が、地球とどうつながっているかを感じて欲しい」と話す。
旭川市や周辺6町、市民団体などは、この地域の「ジオパーク」への認定を目指し、「大雪山カムイミンタラジオパーク構想」を掲げる。ジオパーク構想推進協議会の事務局は「認定にあたり、住民の盛り上がりも大切。探検隊の活動で多くの人が魅力を知り、楽しんでもらえたら」と期待する。
探検隊は、現場に出かける「探検」のほか、座学や子どもも楽しめる実験にも取り組む。今月26日午前には「冬の嵐山に挑め! 開拓130年目 雪の旭川を“国見”せよ」と題した「探検」を行う。詳細は探検隊のフェイスブックか、電話(080・1095・1022)で。(本田大次郎)
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〈ジオパーク〉 ジオは地球や大地の意味で、貴重な地形や地層があり、地球や生物、人々の暮らしのつながりを学べる場所のこと。日本ジオパーク委員会が認定する「日本ジオパーク」は全国に44地域ある。このうち道内は洞爺湖有珠山、アポイ岳、白滝、三笠、とかち鹿追の5地域が認定されている。
https://www.asahi.com/articles/ASMDS4SRGMDSIIPE00K.html