北海道新聞 01/10 11:06
「多くの人に認められていると感じてうれしかった」―。昨年、心に響いた言葉を振り返ると真っ先に頭に浮かぶ。日高管内新ひだか町の静内農業高3年、山形采(あや)さん(18)が昨年8月25日、1歳馬の競り市「サマーセール」で、一生懸命育てた馬が破格の2500万円で落札され、涙ながらに語った言葉だ。
全国の高校で唯一、競走馬の生産実習を行う同校では毎年、生徒が母馬を世話して出産に立ち会い、子馬を運動させたり、ブラシで毛並みを良くしたりして育てる。かまれたり踏まれたり苦労しながら愛情を注ぎ、翌年夏の競り市に上場する。落札額は例年300万~500万円。それでも十分な高評価なのだから、昨夏、生徒が味わった充実感は格別だったに違いない。
ところで同校生徒は昨年11月、もう一つ快挙を達成した。道産食材を使った独自のレシピの出来栄えを学生が競う「おにぎりアイデアコンテスト」。全道から278作品が集まった中で、大学生や専門学校生を押しのけ、大賞と3位に輝いたのだ。
アイヌ民族料理を取り入れた大賞「食彩の秋!チェプオハウ(サケの具だくさん汁)風おにぎり」は2月までに商品化される。受賞した食品科学科2年の佐藤涼さん(17)と福原康太さん(17)は「自分で作ったものが評価され達成感があった」。
一方で同校生徒たちは昨年、苦い思いも味わった。実習で作る農産物やウインナー、アイスクリームなどの加工品を年4回販売するフェアが新型コロナウイルスの影響で全て中止に。町民に大人気で、生徒にとっても、手間をかけて作った商品が「認められた」と直接感じられる貴重な場だけに惜しむ声が上がる。道教委によると全道に農業を学べる高校は25校あり、どこも同様の状況。残念なことだ。
冒頭の山形さんの言葉が心に響くのは、努力を「認められる」という体験が、若者にとってかけがえのないものだからだ。
馬の落札の瞬間、会場が大きな拍手に包まれ「応援されていると、はっきり感じた」とも話す山形さん。卒業後は神奈川県の実家に戻り、アルバイトで資金をため、馬の飼育法を学びに外国の牧場に働きに行く計画だ。「将来は、日高の牧場で働くかもしれません」と頼もしい。
「認められる」という体験は、きっと夢や希望を生む。それを求めて、がんばれ、農高生!
◆「チェプオハウ」のプは小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/499731
「多くの人に認められていると感じてうれしかった」―。昨年、心に響いた言葉を振り返ると真っ先に頭に浮かぶ。日高管内新ひだか町の静内農業高3年、山形采(あや)さん(18)が昨年8月25日、1歳馬の競り市「サマーセール」で、一生懸命育てた馬が破格の2500万円で落札され、涙ながらに語った言葉だ。
全国の高校で唯一、競走馬の生産実習を行う同校では毎年、生徒が母馬を世話して出産に立ち会い、子馬を運動させたり、ブラシで毛並みを良くしたりして育てる。かまれたり踏まれたり苦労しながら愛情を注ぎ、翌年夏の競り市に上場する。落札額は例年300万~500万円。それでも十分な高評価なのだから、昨夏、生徒が味わった充実感は格別だったに違いない。
ところで同校生徒は昨年11月、もう一つ快挙を達成した。道産食材を使った独自のレシピの出来栄えを学生が競う「おにぎりアイデアコンテスト」。全道から278作品が集まった中で、大学生や専門学校生を押しのけ、大賞と3位に輝いたのだ。
アイヌ民族料理を取り入れた大賞「食彩の秋!チェプオハウ(サケの具だくさん汁)風おにぎり」は2月までに商品化される。受賞した食品科学科2年の佐藤涼さん(17)と福原康太さん(17)は「自分で作ったものが評価され達成感があった」。
一方で同校生徒たちは昨年、苦い思いも味わった。実習で作る農産物やウインナー、アイスクリームなどの加工品を年4回販売するフェアが新型コロナウイルスの影響で全て中止に。町民に大人気で、生徒にとっても、手間をかけて作った商品が「認められた」と直接感じられる貴重な場だけに惜しむ声が上がる。道教委によると全道に農業を学べる高校は25校あり、どこも同様の状況。残念なことだ。
冒頭の山形さんの言葉が心に響くのは、努力を「認められる」という体験が、若者にとってかけがえのないものだからだ。
馬の落札の瞬間、会場が大きな拍手に包まれ「応援されていると、はっきり感じた」とも話す山形さん。卒業後は神奈川県の実家に戻り、アルバイトで資金をため、馬の飼育法を学びに外国の牧場に働きに行く計画だ。「将来は、日高の牧場で働くかもしれません」と頼もしい。
「認められる」という体験は、きっと夢や希望を生む。それを求めて、がんばれ、農高生!
◆「チェプオハウ」のプは小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/499731