朝日新聞 2021/01/21 10:30
熊の魂を神の国に送る儀式(イヨマンテ)で、踊る人たちを撮影するカメラマン(1930年)=国立歴史民俗博物館提供(朝日新聞デジタル)
千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館で特集展示「アイヌ文化へのまなざし」が開かれている。スコットランド出身の医師ニール・ゴードン・マンロー(1863〜1942)がアイヌ民族研究のために作成した写真資料約10点を展示するとともに、熊の魂を神の国に送る儀式(イヨマンテ)の映像を紹介。参考資料として同館所蔵のアイヌ民族の資料を並べている。
マンローの業績をまとめた「映し出されたアイヌ文化」(吉川弘文館)の著書があり、歴博が所蔵するマンローの写真や映像を研究している特集展示担当の内田順子教授によると、マンローは1891年に来日し、横浜市を拠点に医師をしながら考古学を研究した。横浜市の三ツ沢貝塚の発掘調査の成果などをまとめた著書「Prehistoric Japan」は、英語で書かれた日本で初めての考古学の本格的な概説書として高く評価されている。
その後、現在の北海道平取町の二風谷(にぶたに)に長期滞在し、イヨマンテの映像を撮影した。二風谷に土地を購入し、地域の人たちに無償で医療を提供しながら、アイヌ文化の研究を続けた。1942年に現地で死去した。
今回の展示の中で、最も見応えがあるのがイヨマンテの映像だ。35ミリフィルムをデジタル化した上で、17分間に短縮したものを会場で紹介している。イヨマンテの儀式を神との霊的な交わりととらえた上で、約4カ月間、アイヌの人たちと生活を共にして親しんだのちに、プロのカメラマンを使って撮影したものだ。
カメラの前で生き生きと動く、アイヌ民族の人たちの姿は魅力的だ。映像と映像の間に挟まれたマンローの解説の字幕で、いかにマンローがアイヌ民族とその文化を尊重していたかが分かる。
ただし内田教授によると、この映像は購入した熊を使って、研究のために行われた祭りを撮影したものだ。明治以降のアイヌ民族の同化政策により、1930年代にはアイヌ文化は大きく変わりつつあった。
マンローが関心をもったアイヌ民族の手仕事や日常生活についても、樹皮製の織物やござ編みの様子、男性が手仕事として作った山刀や小刀の写真などが展示されている。
5月9日まで。休館は月曜日(月曜日が休日の場合は開館し、翌日休館)。大人600円、大学生250円。問い合わせはハローダイヤル(050・5541・8600)。(稲田博一)
https://news.goo.ne.jp/article/asahi_region/region/asahi_region-ASP1N71RDNDTUDCB00V.html
熊の魂を神の国に送る儀式(イヨマンテ)で、踊る人たちを撮影するカメラマン(1930年)=国立歴史民俗博物館提供(朝日新聞デジタル)
千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館で特集展示「アイヌ文化へのまなざし」が開かれている。スコットランド出身の医師ニール・ゴードン・マンロー(1863〜1942)がアイヌ民族研究のために作成した写真資料約10点を展示するとともに、熊の魂を神の国に送る儀式(イヨマンテ)の映像を紹介。参考資料として同館所蔵のアイヌ民族の資料を並べている。
マンローの業績をまとめた「映し出されたアイヌ文化」(吉川弘文館)の著書があり、歴博が所蔵するマンローの写真や映像を研究している特集展示担当の内田順子教授によると、マンローは1891年に来日し、横浜市を拠点に医師をしながら考古学を研究した。横浜市の三ツ沢貝塚の発掘調査の成果などをまとめた著書「Prehistoric Japan」は、英語で書かれた日本で初めての考古学の本格的な概説書として高く評価されている。
その後、現在の北海道平取町の二風谷(にぶたに)に長期滞在し、イヨマンテの映像を撮影した。二風谷に土地を購入し、地域の人たちに無償で医療を提供しながら、アイヌ文化の研究を続けた。1942年に現地で死去した。
今回の展示の中で、最も見応えがあるのがイヨマンテの映像だ。35ミリフィルムをデジタル化した上で、17分間に短縮したものを会場で紹介している。イヨマンテの儀式を神との霊的な交わりととらえた上で、約4カ月間、アイヌの人たちと生活を共にして親しんだのちに、プロのカメラマンを使って撮影したものだ。
カメラの前で生き生きと動く、アイヌ民族の人たちの姿は魅力的だ。映像と映像の間に挟まれたマンローの解説の字幕で、いかにマンローがアイヌ民族とその文化を尊重していたかが分かる。
ただし内田教授によると、この映像は購入した熊を使って、研究のために行われた祭りを撮影したものだ。明治以降のアイヌ民族の同化政策により、1930年代にはアイヌ文化は大きく変わりつつあった。
マンローが関心をもったアイヌ民族の手仕事や日常生活についても、樹皮製の織物やござ編みの様子、男性が手仕事として作った山刀や小刀の写真などが展示されている。
5月9日まで。休館は月曜日(月曜日が休日の場合は開館し、翌日休館)。大人600円、大学生250円。問い合わせはハローダイヤル(050・5541・8600)。(稲田博一)
https://news.goo.ne.jp/article/asahi_region/region/asahi_region-ASP1N71RDNDTUDCB00V.html