およそ10日ほど前になるが、6月12日(日)のNHKスペシャル(午後9時~)で「あなたの寿命は延ばせる~発見!長寿遺伝子~」という番組を放映していた。
健康で長生きして「いい音で、いい音楽」を末長く聴ければこれに越したことはないので、拳拳服膺(けんけんふくよう)しようとすぐに録画した。
この番組を一言でまとめると、「生物はカロリー制限をした食生活を送ると、老化を遅らせる”サーチュイン”という長寿遺伝子がオンになって長生きできる」というもの。
あれっ、この内容は以前自分がブログで取り上げた内容と一緒だと過去記事を調べてみると”あった、あった”。
2年半程前の記事で「長寿遺伝子を鍛える」~カロリーリストリクション~。
ちょっと長くなるが改めて以下のとおり要約のうえ紹介しよう。
「健康は何らかの投資をしなければ維持できない。若返りとなるとより大きな投資が必要となる。」といわれている。
自分の場合に例をとると「食べ過ぎない」「適度な運動」を2本の柱にして日々心がけているつもりだが、「適度な運動」は比較的簡単だが「食べ過ぎない」については三度三度の食事ごとに「食欲に負けない強い意志」が常時試されるとあって困難を極めている。
しかし、健康維持にとっては「食べ過ぎない」ことの方が「適度な運動」よりも遥かに比重が大きいことが次の本を読んでよく分かった。
「長寿遺伝子を鍛える」~カロリーリストリクション~
著者は慶應義塾大学医学部教授で「日本抗加齢医学会副理事長」の坪田一男氏。雑誌「アンチエイジング医学」編集長をはじめ「老けるな」(幻冬舎)など著書多数。
本書の構成は第1章の「氷河期を生き延びた遺伝子」から第10章の「長寿を選択する」まで、盛り沢山の内容なのにそれぞれが深く掘り下げてあって(と思うが)「健康で長生きしたい」という切実な願望の持ち主は一読しておいても損はあるまいと思う。
趣旨は「カロリー制限」と「長生き」とが1本の赤い糸でしっかりと結ばれていて、それを科学的に証明したのが長寿遺伝子「サーチュイン」の発見である。
老化や寿命にかかわる反応経路をコントロールしているこの遺伝子のスイッチが「カロリー制限」で「オン」に出来ることが証明された。
「少食派は長生きできる」というのは等しく平等で実にためになる話だが、ここでいう「カロリー制限」とはあくまでもタンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルといった栄養のバランスはしっかり保ちつつ、総摂取カロリーだけを通常の70%程度に減らすことで、さらに月に一度くらいのペースで24時間断食をするといいという。
ただし個人的な感想だが、これを現実に実行するとなるとなかなかさじ加減が難しく、栄養失調と紙一重になる可能性がある。
それに、なんといっても人生の大きな楽しみのひとつは食べることなので「分かっちゃいるけど実行が難しい」。
だが親切にも日本人にあった「カロリー制限」の実践編を次の9点に絞って提言してあるので紹介しておこう。
1 低GI食品を選ぶ
GIとは「血糖値上昇指数」のことで、たとえば白米より玄米、うどんより蕎麦というように色が濃いもの、皮や繊維を多く含むもの、あまり精製されていないものが該当する。血糖値の急激な上昇を抑えることが主眼。因みに統計上、長寿者の大多数が血糖値が正常だという。
2 たくさんの色のものを食べる
「さまざまな栄養素をバランスよく食べる」ためにできるだけ沢山の色の食品を少しずつ食べる。自然と野菜の摂取量が増えて低GIな食事になっていく。
3 食事を楽しむ
カロリー制限は長期的には失敗に陥ることが多いので、「ガマン」はほどほどに「食事を楽しむ」ことが大切で食べ過ぎたと思えば運動量を増やして帳尻を合わせることも必要。
4 食欲を騙す(ティーズ・フードを利用する)
5 ”空腹感”を鎮める
6 お酒は薬になる程度に
7 日常的な「動き」を増やす
8 CRミメティックス(擬似的なカロリー制限)
カロリー制限をせずに同じ効果を得る方法があるという。たとえばポリフェノーリの一種「レスベラトロール」マイタケやタラコに多く含まれているナイアシン、糖尿病の治療薬であるメトフォルミンなどで現在でも開発競争が続いている。
9 アンチ・エイジングドックのススメ
カロリー制限や運動も正解や決まりはなくそれぞれの人に合ったやり方がある。自分の体の弱点をいち早く見つけ出してケアすることが必要。これまでの人間ドックの「病気を見つける」という目的に「加齢」という要素をプラスした”アンチエイジング・ドック”の検診を行うクリニックが増えている。
以上のとおりだが今のところ適度な運動も含めてこれが「健康で長生きするためのベスト・アプローチ」といっていいと思う。
ただし、実行するかしないかは本人次第だし、そんなにまでして長生きはしたくないという人がいても当然。
極端に言えば、好きなものをたらふく食べて早死にするか、食事の楽しみを捨てて長生きを採るか、各人の価値観に左右されるところだろう。
なお、テレビ番組の中では一般的に長続きが難しいカロリー制限をすることなしに比較的楽に「サーチュイン」遺伝子をオンにする方法が紹介されていた。
8にも出てくる「レスベラトロール」という錠剤を飲みさえすればいいというものだが、世の中そんなに楽(らく)してうまい話があるとはどうも信じがたく、警戒心が沸き起こる。
とにかく2年以上も前にこういう情報を仕入れておきながら、いまだに「カロリーリストリクション」が出来てない人間はあれこれ論ずる資格がなさそうだ。