少しアマチュア無線もマンネリ化して来たので少し毛色の違った遊びを考えて居たら本格的なラジコン・ヘリを遣りたく成った。子供の時からゴム飛行機やグライダーを作るのは好きだったし確か中学生の時は本格的なグライダーを作る授業が有った様に記憶している。完成後の競技大会は全校で2位、其の時の優勝したグライダーは山を越して飛んで行き行方不明ながら飛行距離は圧倒的に勝っていたが優勝者は機体が見つからず半ベソをかいていた事を懐かしく思い出す。
社会人に成り徳島に帰った頃、職場の親友のお金持ちの坊ちゃんがグローエンジンのラジコン飛行機を遣ろうと誘われ二人で同じ飛行機を組み立て遊ぶ事に成ったが財力にものを言わせた彼の方が先に完成し吉野川の河川敷に早速飛ばしに行った。彼も私もラジコン操縦の飛行機を飛ばすのは初めて、経験も知識も無かったが彼はヤル気だけは人一倍強く、生意気にも地面から離陸させると言い出し、エンジンを駆けてレバーで回転数を上げて行くと徐々に飛行機は地面を走り出したが直ぐに20mくらいの高さに急上昇したかと思うと30m位の前方から宙返りして急降下二人の居る足元の地面に激突「オオ~」と叫んで避ける事は出来たが機体はバラバラになりエンジンが機体から外れ土の上を転げた。私は絶句したが流石に彼は金持ちの坊ちゃん「迫力あったなぁ~流石エンジン付きの飛行機はゴム飛行機とは違う。」と笑っていた。
私は其の後、完成させエンジンの慣らし運転までは遣ったが此れは素人では間違いなく墜落して大破の運命だと思うと貧乏の小心者、結局は勿体無く新婚生活のアパートの天井から吊下げて楽しんで居たが此の飛行機は大空を飛ぶ事は最後までなかった。
例の懲りない坊ちゃんは「最初からエンジン飛行機は 流石に、あまさかっていた。今度は墜落する心配の無い地上を走るエンジン・バギーを遣ろう。」とキット買って来て組み立てた。此れは本格的なランチャーのバギーで当時4~5万したが其処はお金持ち、試験走行に今度は1万トン岸壁に行こうと張切って向かった。エンジンを駆けて最初はゆっくり走らせていたが慣れてくると彼の事やがてスロットル全開で走らせ始めた。岸壁なので海の手前は縁石が続き自動車が転落しない様にされていたが彼の操縦ミスにより縁石の隙間を抜けてバギーは海に向って大ジャンプして消えた。
流石に此の時は「タロチャン 如何しよか?」と聞いて来たので二人で知恵を絞り、多分海の深さは7m以上有ると思うので普通の方法では無理、ただエンジンからオイルが出ているのでバギーの沈んでいる場所はおよそ解るので車のトランクに有る釣竿のテグスの先に針金を曲げたフックを結び引っ掛け上げる事にした。フックを投げ釣りの要領でバギー近くに投げ入れると後はリールを巻きバギーの胴体の何処かに引っ掛けようとしたがフックが軽いので目的の辺りを上手く通らず失敗ばかり、早く上げないと受信機やサーボが駄目に成るので勝負を早く付けねばと再度作戦会議の結果、電子レンジのマグネトロンの中から取り出した強力な磁石が会社の修理ベンチにある事を思い出し会社に取りに行く事にした。
会社は休日でも日直が居るので磁石を持ち出し岸壁に帰った。 此の磁石は外周の直径10cm位あり都合のよい事に中心に3cm以上の穴が開いており磁力は最高、2枚の磁石を合わせるとバチンと音がしてくっ付く代物、穴が開いているのでテグスに結わえるのも問題は無い。2枚を重ねると重さもあり保々目的の場所に投入出来る。何回目に手応えを感じリールを巻くと磁石にくっ付いたバギーが海面から顔を出した。人間切羽詰れば良い考えが浮かぶもの中々のグッド・アイディアで自我自賛した。この方法は現在でも有効、兄の会社の仕事で海の上で足場を組む仕事があったが足場用のクランプやラチェットを海の中に落とす手間が居たが これ等は見事、この方法で回収する事が出来た。
其の後、私も同じバギーや、エンジン・ボートも遣ったが空を飛ぶ物のラジコン操縦だけは経験が無かった。其れでも若い頃は複葉機を含め3機程、工作を楽しむ為に組み立てたが飛ばさなかった事から2機は現存する。バギーもボートも車庫の片隅に置いて有ると思うが40年近い昔の話に成る。
退職して暇が出来ると良からぬ事を思い出し室内で飛ばす小型の手の平に載る電動ヘリコプターを入手して楽しんでいたが少し操縦できる様に成ると大きい物が欲しくなって中国製の電動ヘリ(1m位の大きさ)で9800円の価格の安さで衝動買いした。大きい機体なので外でも飛ばす事が出来たが電動のためバッテリー容量の不足か最長7分間程度か飛ばす事が出来無い事と完全なフォバリングが出来ず欲求不満が起きる。其の上、価格も安いが「安かろう悪かろう。」の中国製、ローターの回転軸の駆動用のプラスチックの歯車が20回くらいの飛行で見事に山が飛んでしまってローターは回転するがトルクがロスし機体が浮き上がらない状態成ってしまった。
其の点、エンジンタイプは1回の給油で可也の時間、飛ばす事が出来るし何よりもエンジン機の力強さと音から来る臨場感は堪らない。約1ヶ月前1m強の大きさのエンジン・ヘリを手に入れたが此処で思わぬ誤算が生じた。セット物なのだがプラグを余熱するスターターキットが付いて居ないのだ(コードとバッテリー)この様な物は徳島県内で手に入れる事は十分可能と軽く考えて居たが阿南市の大きいラジコン・ショップに電話で確認すると「そんな物置いてません現在は電動物が主流です」と軽くあしらわれた。其れならと徳島県を代表する徳島市のラジコン・ショップを訪れると「すみませんエンジンを遣っていた人が辞めたので詳しい者が居りません誠に申し訳有りません」と老舗の対応、此処ではたと困りインターネットで県内のラジコン・ショップを調べると藍住町に店が有る事が解り高松市内への水のサンプリングの配達の帰り道、立ち寄ったら「最近、全体に電動タイプに成っているので在庫を持っていません」との事、店内に飛行機が展示されて居たので「エンジン用の燃料は有りますか?」と聞いたら此れが最後の数本ですと言われたので取敢えず燃料だけ買って帰った。帰ってインターネットで商品を検索すると数社の中に欲しい物は載っていたが殆どが販売終了表示、最後の価格が一番高い店が在庫を持って居たので電動燃料ポンプと同時注文、商品が届いたのが一昨日、当日は風が強かったがエンジンだけでも駆けようと家の前の河川敷に行って点火プラグを余熱し逸る気持ちを抑えてスターターを回すとボボーボボーの音からバリバリとエンジンの始動する音と感触、40年振りに実感した。思わず頬が緩む、65歳に成ったが気持ちは少年時代の欲しい物を手に入れた状態、やがてローターは高速回転に入って直径1mの円を描き始めた。しかしながら少し強い風が吹いて居たので今日の初飛行は断念、車に積んで持ち帰った。ヘリは現在、ピョンピョン二世号の後部座席に鎮座している。暫くはXYLに見せる事は得策では無い、この状態で暫くは御辛抱戴くしかない。