パオと高床

あこがれの移動と定住

本郷和人『天皇はなぜ生き残ったか』(新潮新書)

2009-06-06 13:48:48 | 国内・エッセイ・評論
書き出しはこうである。
「ある大学の学術会議で、西洋中世史の先生が〈日本の場合は天皇と将軍というように、権威と権力が分離していたので……〉とごく自然な調子で発言されたのを聞き、驚くとともに強烈な違和感を感じた」
このあっさりとした区分に、検証を加えていくのが本書。「当為」というあるべきこととしてあってしまうものに対して、その「実情」を問うていく科学的態度での考察。天皇という存在が「当為」から「実情」への変貌を遂げながら生き残り、さらに「文化・情報の王」としての地位を確保しながら、尚、その存在自体を「幽玄」にしていく移行が語られていく。

平安から鎌倉、そして室町。さらに、安土桃山から江戸へと語られるが、むしろ桃山以降は追記のように書かれている。ただ、この部分に、信長、秀吉、家康がとった天皇への態度が推察されていることで、理解が進むと同時に、読後感がいい。
面白いのは、個人的には後醍醐天皇のくだり。後醍醐天皇について、網野善彦にケンカを売っているみたいなところ。確かに、あの南北朝期は天皇の歴史にとってかなり大きなポイントなのかもしれない。

もう少しボクのほうに受容力があれば、書かれていることの画期性がもっとわかったのかもしれない。
常に、経済力を確保、担保し得たシステムに興味を持った。また、文化の継承が、今のように、大衆文化化していない時代のことを思ったりした。

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