今日、久しぶりに立ち寄った喫茶店で、たまたま近くの席に座っていた初老の男性客が話しかけてきたので、しばしお話をしていました。パッと見た目はある程度の社会的地位を築かれた方かな…という、品の良さげな紳士でした。
話し進んでいくうちにわかったのですが、どうもその方のお身内が仙台で被災されたということでした。それは大変なこと…と申し上げたら、その辺りからその方の論調が段々と変わってきたのです。
その方はかなり早い段階で仙台市内に入り、瓦礫の撤去をしたり、支援物資を募って届けたりと、御本人曰わく大車輪の活躍だったそうなのです。そこまではよかったのですが、何故かその後に突然、私が音楽を生業にしていることを引き合いに出して、
「音楽なんてチンタラ演奏してたって被災者には何の役にもたたんし、世の中にそんなもの無くたって人間は死にゃあしない。そんな無益なことにうつつをぬかしている暇なんか、今の日本人にはないんだ。だから君達若いモンも、そんな優雅なことしてる暇があったら、1個でも瓦礫を拾うために手伝いに行きたまえよ。」
と、やおら得意気にトンチンカンなことを言い出したのです。
最初は黙って聞いていたのですが、段々と論調が熱を帯びてくるにつけて、何ともやるせない気持ちになってきた私は、そこのマスターを呼んで店内BGMを切ってもらいました。
当然その後そこで聞こえてくるのは、食器が触れ合うガチャガチャという音と、離れたところで話している何人かの客のひそひそ声のみ。そのまま黙っていると、その紳士が「何故BGMを切る?」とマスターに、再び音楽をかけるように促したのです。そこで私は
「音楽なんて無くたって人間死にゃあしないのであれば、こんな状況でもコーヒーを美味しく頂くことは可能なんじゃないですか?あなたの仰ったことって、こういうことですよ。」
と申し上げたら、そこからしばらく沈黙が続き、やがてその紳士は黙ったまま席を発ちました。
この方に言われるまでもなく、被災地に出向いてお手伝いすればどれだけお役にたつか…。でも、私の実家も、外観はともかく被災して家具や仏壇がシッチャカメッチャカになりましたし、叔父は北茨城市で、伯母はいわき市でそれぞれ被災しています。
私だってその人達のもとへ行って手伝ってあげたいと思ったこともありました。
そんな時、伯母達に言われたのは
「あんたは音楽が本分なんだから、あんたの本分を全うしなさい。私達が望んでいるのは、被災地のことをどこか心の片隅に置いておいてくれればいいから、みんなが普通の暮らしを送ってくれることなのよ。私達だって、そういつまでも被災者だって、下ばっかり見てはいられないんだから。それにね、音楽って理屈抜きに人の心を打つものなのよね。今までにもいろんな人達が慰問で演奏しにきてくれたけど、本当に嬉しかったわよ。あんたもそういう風に人を喜ばせる素晴らしい技術を身につけたんだから、その分野で頑張んなさい。」
そう言ってもらった時、本当に嬉しかったのを覚えています。音楽には真に人の心を打つものがあり、それを演奏することに携われていることは、自身にとって誇りです。私の従兄弟に自衛隊の音楽隊隊員がいますが、彼もいろんなところへ慰問演奏をしに行き、最後に《故郷》を演奏すると、涙を流して歌いながら喜んでくれる沢山の人を見て「こんな時に音楽で何ができるのか…と思っていたけど、演奏しに行ってよかった」と実感した…とも言っていました。
考え方は人それぞれだとは思いますが、音楽は決して無意味でも無駄でもない!改めてそう思わされた出来事でした。
話し進んでいくうちにわかったのですが、どうもその方のお身内が仙台で被災されたということでした。それは大変なこと…と申し上げたら、その辺りからその方の論調が段々と変わってきたのです。
その方はかなり早い段階で仙台市内に入り、瓦礫の撤去をしたり、支援物資を募って届けたりと、御本人曰わく大車輪の活躍だったそうなのです。そこまではよかったのですが、何故かその後に突然、私が音楽を生業にしていることを引き合いに出して、
「音楽なんてチンタラ演奏してたって被災者には何の役にもたたんし、世の中にそんなもの無くたって人間は死にゃあしない。そんな無益なことにうつつをぬかしている暇なんか、今の日本人にはないんだ。だから君達若いモンも、そんな優雅なことしてる暇があったら、1個でも瓦礫を拾うために手伝いに行きたまえよ。」
と、やおら得意気にトンチンカンなことを言い出したのです。
最初は黙って聞いていたのですが、段々と論調が熱を帯びてくるにつけて、何ともやるせない気持ちになってきた私は、そこのマスターを呼んで店内BGMを切ってもらいました。
当然その後そこで聞こえてくるのは、食器が触れ合うガチャガチャという音と、離れたところで話している何人かの客のひそひそ声のみ。そのまま黙っていると、その紳士が「何故BGMを切る?」とマスターに、再び音楽をかけるように促したのです。そこで私は
「音楽なんて無くたって人間死にゃあしないのであれば、こんな状況でもコーヒーを美味しく頂くことは可能なんじゃないですか?あなたの仰ったことって、こういうことですよ。」
と申し上げたら、そこからしばらく沈黙が続き、やがてその紳士は黙ったまま席を発ちました。
この方に言われるまでもなく、被災地に出向いてお手伝いすればどれだけお役にたつか…。でも、私の実家も、外観はともかく被災して家具や仏壇がシッチャカメッチャカになりましたし、叔父は北茨城市で、伯母はいわき市でそれぞれ被災しています。
私だってその人達のもとへ行って手伝ってあげたいと思ったこともありました。
そんな時、伯母達に言われたのは
「あんたは音楽が本分なんだから、あんたの本分を全うしなさい。私達が望んでいるのは、被災地のことをどこか心の片隅に置いておいてくれればいいから、みんなが普通の暮らしを送ってくれることなのよ。私達だって、そういつまでも被災者だって、下ばっかり見てはいられないんだから。それにね、音楽って理屈抜きに人の心を打つものなのよね。今までにもいろんな人達が慰問で演奏しにきてくれたけど、本当に嬉しかったわよ。あんたもそういう風に人を喜ばせる素晴らしい技術を身につけたんだから、その分野で頑張んなさい。」
そう言ってもらった時、本当に嬉しかったのを覚えています。音楽には真に人の心を打つものがあり、それを演奏することに携われていることは、自身にとって誇りです。私の従兄弟に自衛隊の音楽隊隊員がいますが、彼もいろんなところへ慰問演奏をしに行き、最後に《故郷》を演奏すると、涙を流して歌いながら喜んでくれる沢山の人を見て「こんな時に音楽で何ができるのか…と思っていたけど、演奏しに行ってよかった」と実感した…とも言っていました。
考え方は人それぞれだとは思いますが、音楽は決して無意味でも無駄でもない!改めてそう思わされた出来事でした。