今日は薄雲が空一面に広がる、比較的涼しい陽気となりました。そんな中、今日は休みをとって上野の東京国立博物館に出かけました。
こちらの平成館では、現在

特別展《法然と極楽浄土》が開催されています。この特別展は令和6年(2024)に浄土宗開宗850年を迎えることを機に、開祖である法然による浄土宗の立教開宗から、弟子たちによる諸派の創設と教義の確立、徳川将軍家の帰依(きえ)によって大きく発展を遂げるまでの浄土宗850年におよぶ歴史を、全国の浄土宗諸寺院等が所蔵する国宝や重要文化財を含む貴重な名宝によってたどるものとなっています。
いろいろとバタバタしていたら、いつの間にか前期日程が終了してしまってしまっていたため、個人的にお目当てだった

《阿弥陀如来二十五菩薩来迎図(早来迎)》(鎌倉時代・14世紀、京都・知恩院蔵・国宝)や

《綴織當麻曼荼羅(つづれおりたいままんだら》(奈良時代・8世紀、奈良・當麻寺蔵、国宝)といった貴重な名宝を見逃してしまいました。やはり、会期のチェックはきちんとしないといけません…。
それでも、今回の展覧会での収穫は

こちらの《阿弥陀如来立像》(鎌倉時代・建暦2(1212)年、浄土宗蔵、重要文化財)を観られたことでした。この御像は法然の一周忌に向けて弟子や信徒から浄財を集めて作られたもので、鎌倉時代を代表する仏師快慶による、俗に『安阿弥様』と称される仏像の特徴が見て取れるものです。
写真で見ると目に嵌め込まれた玉眼がギラギラした感じに見えてしまいますが、実際には

上からの照明に照らされて玉眼がそこまでギラギラせず、安心して観ていられました。こうしたことも、実際に観に来てみないと分からないことです。
他には

《法然上人絵伝》(鎌倉時代・14世紀、京都・知恩寺蔵、国宝)も展示されていました。かなり長大な絵巻物なので期間ごとに展示する場面を変えているそうなのですが、私が今日観た時にはちょうど上の法然上人の入滅の場面が開かれていて、釈尊の涅槃の如く頭を北に、顔を西に向けて念仏を唱えながら阿弥陀如来等の来迎を受ける場面は感動的でした。
他にも様々な書画が展示されていたのですが、圧巻だったのが香川県高松市の法然寺にある《仏涅槃群像》(江戸時代・17世紀)でした。これは、かの徳川光圀(1628〜1701)の兄で高松藩初代藩主であった松平頼重(1622〜1695)が、かつて法然が弟子の不始末の責任を被って流罪にされた寺を移築して寛文8(1668)年から3年の月日をかけて造営した寺で、《仏涅槃群像》はそこの三仏堂内にあります。
仏涅槃は釈迦の入滅の場面を描いたもので、よく見られるのは

こうした大きな掛け軸状の絵画ですが、法然寺の仏涅槃は

それを立体的に彫像で表しているのです。昔から『京(嵯峨・清凉寺)の立ち釈迦、讃岐(髙松・法然寺)の寝釈迦』と言われて知られていたようですが、今回は全82軀の中から26軀が展示されています。
ここは写真撮影が許されたスペースだったので、お言葉に甘えて撮影させていただきました。会場に入ると、

正に今釈尊が涅槃に入った瞬間の様子が広がっています。

横たわる釈尊の側では


弟子たちや


阿修羅をはじめとした八部衆と呼ばれる守護神たちが嘆き悲しむ姿が表されています。
仏涅槃図では動物たちが嘆き悲しむ姿が描かれますが、こちらでも


様々な動物たちが登場しています。白象や獅子、兎や亀や猿やコウモリまでもが釈尊の死を嘆き悲しんでいます。
それでちょっと面白いのが、コウモリの後ろに

カタツムリがいたのです。このカタツムリ、木像ながら触覚や腹足のうねりなどがかなりリアルに作られていて、ほとんどの人がこの姿を写真に収めていました。
そして、反対側の動物グループの中に

ハチワレ猫が鎮座していたのです。他の動物たちが釈尊の方を向いて悲しみの表情を見せている中、このニャンコだけは
「わしゃ聞こえまへん…」
と言わんばかりに明後日の方向を向いて座っているのが如何にも気ままな猫らしく、見かけた人たちも思わず笑ってしまっていました。
お目当ての国宝は見られませんでしたが、

限定の《阿弥陀如来二十五菩薩来迎図》のクリアファイルはGETできたので、今回はこれで納得させることにしました。今度は、会期中の展示替え内容をしっかりとチェックしてから出かけるようにします…。