共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

今日はプロコフィエフの誕生日〜ハイドンリスペクトの《古典交響曲》

2023年04月23日 12時22分21秒 | 音楽
今日も肌寒い陽気となりました。つい二、三日前は汗をかいて寝ていたのに今日は寒くて目が覚めましたから、何だか調子が狂います。

ところで、今日4月23日はプロコフィエフの誕生日です。



セルゲイ・セルゲーエヴィチ・プロコフィエフ(1891〜1953)はロシアの作曲家、ピアニスト、指揮者です。数多くの形式の音楽に傑作を残したことで知られていて、20世紀を代表する大作曲家のひとりです。

確立された型や様式の中で作曲をしたプロコフィエフの作品には、7作の交響曲、5作のピアノ協奏曲、2作のヴァイオリン協奏曲、2作のチェロ協奏曲、9作のピアノソナタ、7作のオペラ、8作のバレエ音楽があります。中でもバレエ音楽《ロメオとジュリエット》や音楽物語《ピーターと狼》といった作品は今日でも広く聴かれていて、コンサートで演奏されるだけでなくCMやドラマでも一部が使われたりする人気作となっています。

昨年から依然ロシアとの戦闘激しい現在のウクライナ東部、ドネツク州で生を受けたプロコフィエフは、弱冠13歳で帝政ロシアの首都サンクトペテルブルクのサンクトペテルブルク音楽院で作曲・ピアノを学びました。1917年のロシア革命以後はソヴィエトの大臣であったアナトリー・ルナチャルスキーの公認を得てロシアを後にして、アメリカ合衆国、ドイツ、パリと居住地を移しながら作曲家、ピアニスト、指揮者として生計を立てていました。

しかし、1930年代の世界恐慌によって欧米でのバレエやオペラの上演機会が激減すると、1936年にスターリニズムの大粛清の嵐が吹き荒れる祖国ソヴィエト連邦へ戻ることとなりました。国外で築いた自分の知名度はスターリンのイデオロギー的プレッシャーから逃れられると目論んでいましたが現実は厳しく、ショスタコーヴィチらと同様に形式主義であるとして多くの作品が『ジダーノフ批判』というソヴィエト政府による芸術批判の対象となったものの、それでも《キージェ中尉》、《ピーターと狼》、《ロメオとジュリエット》などの作品が成功を収めました。

因みにプロコフィエフの誕生日ですが、本人は今日だと思っていたものの没後に見つかった出生届には4日後の4月27日という記載があり、現在ではそちらを誕生日とすることが多いようです。しかし拙ブログでは、あくまでもプロコフィエフ当人が認識していた今日を誕生日として採用しました。

そんなプロコフィエフの誕生日にご紹介するのは《古典交響曲》です。

この作品についてプロコフィエフは《古典交響曲』とだけ呼んでいて、《交響曲第1番》とは一言も言っていません。ただ第2番以降の交響曲には番号が付いているので、自動的にこの作品が第1番の交響曲ということになります。

プロコフィエフは、原始的で野性的な側面と、モダンですっきりとした新古典的な側面とを合わせ持った作曲家です。作風はその間を揺れ動いていますが、この曲はプロコフィエフが新古典的側面から

「ハイドンが今の時代に生きていたら、こんな作品を書いていたのではないか。」

というコンセプトを目指して書いたものです。

近代音楽ながら、古典派の交響曲のように非常にシンプルですっきりとした構成の作品となっています。オーケストラの編成もハイドン時代のものと同じ2管編成で、曲中のいたるところに粋なユーモア感覚が散りばめられています。

この曲は全曲を通じて、意表を突くような転調の面白さや不思議な感覚に溢れています。形式的には『古典』とは言いつつも、内容としては現代的というよりは未来的な雰囲気すら感じさせる、非常にモダンな感じの曲です。

ハイドンの交響曲のような荘重な序奏を伴わずに華やかに始まり、いたずらっぽく転調を繰り返しながら展開していく第1楽章、ヴァイオリンやフルートの高音のメロディが美しい第2楽章、メヌエットやスケルツォよりもより古いスタイルのガヴォットで書かれた第3楽章、オペラ・ブッファ(喜劇オペラ)のフィナーレのように快活な第4楽章と、短い曲ながら引き締まって充実した印象を与える交響曲です。なお、第3楽章のガヴォットのテーマは、後にバレエ《ロミオとジュリエット》の舞踏会の場面にも使われています。

そんなわけでプロコフィエフの誕生日である今日は、事実上最初の交響曲である《古典交響曲》をお聴きいただきたいと思います。フランソワ・ルルーの指揮、フランクフルト放送交響楽団による、2017年のライブ動画でお楽しみください。



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