【 書 籍 名 】 タネが危ない
【 著 者 】 野口勲
【 出 版 社 】 日本経済新聞出版社
【 値 段 】 1600円
【 コメント書評 】 ☆☆★☆
日本で唯一、固定種のタネのみを扱う種苗店の、三代目経営者である著者が、
F1(一代雑種)技術の抱えるリスクを指摘し、現代農業のあり方に一石を投じた書籍です。
生産者と消費者、双方のニーズと、研究者の努力によって進歩してきた農業技術、
大量生産、大量消費、均質な規格に制約される流通、見た目重視の農産物市場等、
経済効率最優先の時代のニーズに応え続けてきた、科学技術のあり方に関しても
その光と影を踏まえ、議論の余地がありそうです。
実際に、私の畑で育てている野菜の7割は、F1に該当します。
私自身は、F1の反対論者ではありませんし、大学では、理学部で植物生態/生化学系を
少しだけ学んだ関係上、研究者の方々の真摯で地道な努力の姿も見てきました。
今日の日本の農業を支えてきた彼らの功績は、否定できないと思いますし、
部外者が、今の農業のあり方を安易に批判するものでもありませんが、
その上でなお、自家採取をし、伝統野菜を守り育てる大切さを訴え続ける
著者の姿勢に感銘を受けました。