はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

猫のしっぽ

2006-08-05 17:10:19 | はがき随筆
 その頃、女の子は下校時に出迎えに来てくれる忠実な猫を飼っていた。来客の度に、猫の尻尾を握って「大きく振れ」「小さく振れ」と言えば、大きくも小さくも振る猫。
 「感心な猫!」と褒められると有頂天になる女の子。昭和20年代の物のない頃の娯楽?
当の女の子は、尻尾を持つ位置を変えて、大きく小さく揺らしていたのだが、意識的にした覚えがない。
 「うちの猫は賢いでしょう」と、それも真顔で。からくりを気づかないふりの周囲を巻き込みこの遊びは数年続く。この変な女の子は私の小学生時代。
   霧島市 口町円子(66) 2006/8/5 掲載