はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆7月度入選

2006-08-24 14:06:44 | 受賞作品
はがき随筆7月度の入選作品が決まりました。
△鹿児島市鴨池、川畑清一郎さん(59)の「父の日に思う」(9日)
△西之表市西之表、武田静瞭さん(69)の「母はいない……」(29日)
△薩摩川内市樋脇町、新開譲さん(80)の「逆療法」(2日)

の3点です。

 7月はご年配の方々の文章が比較的多かったからか、過ぎし時を懐かしむ文章が多く出されました。
 川端さんの「父の日に思う」は、体に障害のある小学校1年生だった川端さんを遠足に参加させるため、お父さんが川端さんをおぶって歩いてくれたというのです。今は他界した父親の背中の大きさ温かさが忘れられず、父の日のたびに今も涙するのです。
 また、武田さんの「母はいない……」も、お母さんの他界は明瞭に認識しているのに、ふと自分を呼ぶ声がする、足音がする、ということ。最後に「幽霊になってでもいいですから、いつもの口げんかをしに来ませんか?」と、少し面白く結んだのがいいですね。
 川端さんも、お父さんがよく言っておられた方言での言葉「準備ばせえ」を紹介して話しに親しみを感じさせ、お父さんの人物像をずばり伝えました。うまいですね。
 さて、新開さんの「逆療法」、犬の世話で腰を痛めた新開さん。温泉で温めたら、と言われて張り切って温泉に通い、2カ月の入院でした。冷やすべきものなのですね。温泉好きらしい新開さんの明るい文章が前半に広がるので、入院は気の毒ですが何となく面白い。美園春子さんの「通夜」は、友人3人でお通夜に行き、帰りに3人で大いに笑ったという話。悲しみの時間、場所から解放されて、友人と3人、こんな気持ちも分かりますよね。
 宮園続さんの「元気よ戻れ」は体重減に悩む宮園さんの結びの一文「……生き延びて世のため、万分の一でも尽くさねば……」は何とも立派。小村忍さんの題目は「老いゆく人生」と寂しいですが、多用な趣味と山登りへの参加などの毎日が書かれていました。要するに、努力して明るく積極的に生きること。それが皆さんに素晴らしい文章を書かせるのですね。
(日本文学協会会員、鹿児島女子短大名誉教授・吉井和子)

係から
入選作品のうち1編は26日午前8時40分からMBC南日本放送ラジオで朗読されます。「二見いすずの土曜の朝は」のコーナー「朝のとっておき」です。
また、「女の気持ち」「男の気持ち」「みんなの広場」などへの二重投稿はしないようお願いします。

7月22日の大水害

2006-08-24 13:22:43 | はがき随筆
 県北部の集中豪雨により、出水市も大水害となった。午後12時半に床下10㌢になり、貴重品を高所に上げる3分の間に畳の縁から水が噴き出す。とっさに手と足で水を押さえた後に、徒労だと頭が理解した。同時に身の危険を感じ非難した。一夜明けて、床上1㍍あまりの家の中は畳とタンスが重なり合い、冷蔵庫は倒れた茶箪笥の上に乗っていた。家の中を大型台風が吹き荒れたよう。ボランティアの高校生の獅子奮迅の働きは「水害程度で負けるなよ。立ち上がれよ」と、生きる勇気もいただいた。あなたたちの顔は生涯忘れないからね。
   出水市 道田道範(57)2006/8/24 掲載