はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

タイブレーク

2012-02-02 13:46:04 | ペン&ぺん
 春のセンバツ高校野球で甲子園出場が決まった神村学園(いちき串木野市)。その原稿を点検していて、昨年11月の明治神宮大会の記録に目がとまった。
 光星学院(青森)戦。神村学園は延長十回8-11で惜しくも敗れた。しかも、最後はサヨナラ満塁アーチで決着したという。
 ──しかし、と疑問が浮かんだ。最終的な点差は3点差。満塁本塁打ならば4点入るから、延長十回表に神村学園も得点していたことになる。九回を投げきった両チームの投手陣が延長十回に入って制球を乱したのだろうか。
 事実は、違う。この試合、延長十回に入ると、1死満塁から攻撃を始めるタイブレーク制で行われていたのだ。そのため6─6で延長戦にもつれ込み、神村学園は十回表に2点を入れ、裏の守りについていた。高校野球では、異例のタイブレーク制だが、福島第1原発事故などに伴う電力事情に配慮して試合時間がのびるのを制限するために導入されたという。こんなところにも震災の影響が出ている。
 さて、対戦相手だった光星学院は明治神宮大会で決勝まで進み、愛工大名電(愛知)を破って優勝した。決勝戦は九回で決着しており、延長まで競り合った神村学園の実力は大いに評価されてよいだろう。
 神村学園は左腕の平藪樹一郎投手、右腕の柿沢貴裕投手の二枚看板。打線も切れ目がなく、昨年秋の県予選から九州大会へと勝ち進んだ。九州大会の決勝では九州学院(熊本)を相手に初回一挙に8点を挙げるなどして快勝している。
 さらに甲子園出場歴をさかのぼれば、春夏を通じて初出場だった05年のセンバツでは創部3年目で準優勝という快挙を果たしている。そうした先輩達の歴史を受け継ぎ、神村ナインには、春の甲子園に旋風を巻き起こしてほしい。
鹿児島支局長・馬原浩  2011/1/30 毎日新聞掲載