はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

耳悪じいさん

2012-05-18 20:49:15 | はがき随筆






 「さっきから呼んでいるんだけど全然聞こえないの? 耳が悪くなったわねえ」。カミさんが縁側からこっちを見ている。
 「ハイ、ハイ、何の御用ですか」「せっかくカメラも買い替えたんだから、庭の花でも撮ったらとう?」。庭に出てみればシンビジウムが一気に開花、サイネリアも咲き誇っている。「この花も撮っておいて」。カミさんの指さす先には薄紫の小さな花が咲いている。ブラキカムという名の菊科の花だという。
 「これからは私に言われる前に庭に出なさいよ、耳悪じいさん」「ハイハイ」「ハイは一つ」。カミさんは常に正義です。
  西之表市 武田静瞭 2012/5/18 毎日新聞鹿児島版掲載

写真は武田静瞭さんのブログより

花見弁当会

2012-05-18 20:31:10 | はがき随筆


 4月2日、急いだように桜満開。植物の方が季節を良く感知している。夫の弟さんが、明日は春の嵐が吹くから今夜のうちに花を観賞し、弁当会をしたらと急な話題。灯をつけ準備が始まった。数人分の弁当を私が作ることになり、あわててきりきり舞い。つわぶきと魚の煮干しで卵とじ、鶏の空揚げ、塩サケ、果物のデザートを添えて仕上がり。一日の仕事が終わり、全員腹ぺこ状態。弁当は見事に平らげ。手作りを満足されうれしい。夜中になり、激しい雨の音と強風の勢いに花は吹き飛ばされている様子。危機一髪の花見弁当会は、無事終了した。
  肝付町 鳥取部京子 2012/5/17 毎日新聞鹿児島版掲載