はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

喜寿を迎えて

2012-09-05 21:33:14 | はがき随筆
 9月に喜寿を迎えるが、比較的元気である。長年患っていた心房細動の手術を昨年3月に受けてから1年半。経過も良く、完治したようである。
 私は長男であるが、81歳になる姉を頭に70歳の妹、その間に3人の男の5人姉弟妹である。共に戦中戦後の苦しい生活を体験してきたが、お陰様で5人とも今日まで元気である。
 父は85歳で、母は95歳で他界したが長寿であった。毎年、父母の命日には供養を兼ねて集まり、健康な体を授かった事に感謝し合っている。元気で喜寿を迎える誕生日には、父母に感謝の真心を手向けたい。
  志布志市 一木法明 2012/9/5 毎日新聞鹿児島版掲載

行く末考

2012-09-05 21:27:14 | はがき随筆
 人生設計というほど大げさなことではないが、行く末を考えたことはある。すでに20年余り歳月が流れたが、当時の平均寿命は77歳代であったと思う。定年後の17年、妻と2人で自由奔放に生きてやろうと本気で考えた。
 干渉されず、拘束されず、起きたい時に起き、食べたい時に食べ、怠惰を思い切り楽しんでやろうと思った。僕の思考の根底にはそんな考え方が内蔵されていて時々顔を出す。いよいよ残り5年余りとなったが、この生き方は捨てがたい。生けるところまで行くしかないが、次は往生際を考える時かしら?
  志布志市 若宮庸成 2012/9/4 毎日新聞鹿児島版掲載

ミカン泥棒

2012-09-05 21:10:41 | はがき随筆


 Kさんの庭にはいろいろなミカンが植えられていた。おなかをすかせた学校の帰り道、熟れた黄の色はまぶしく輝いていた。小学校3年生の時だったと思う。いつも登下校が一緒だった4人が、1個ずつだったらよかろうと盗みに入った。
 1個のつもりが3個、4個と手を伸ばしていると、背後からKさんの怒鳴り声。足をすくませた私たちは横一列に並ばされ、それぞれの父親の名前を言わされた。
 それから1人ずつ交代に歌を歌わされた。私が歌ったのは「みかんの花咲く丘」。一瞬、Kさんの怖い表情が崩れた。
  伊佐市 清水恒 2012/9/4 毎日新聞鹿児島版掲載

セミ時雨

2012-09-05 19:54:39 | はがき随筆


 今年のセミ時雨は例年になく元気がいい。カミさんが道端の雑草についているクマゼミの抜け殻を見つけてきた。
 「こんな雑草にまでしがみついて脱皮するなんて、頑張れって応援したくなるわね」
 車の窓を開けて並木の下を走っていると、セミの大合唱が飛び込んでくる。「こんなにたくさん鳴いていると、うれしくなるわねえ」というカミさんの声が聞き取りにくいくらいだ。
 島の夏……。庭の隅ではナツエビネが咲いている。有線テレビのカメラが鹿児島に向かうフェリーを追う。青い海の向こうに開聞岳がくっきり見えた。
  西之表市 武田静瞭 2012/9/2 毎日新聞鹿児島版掲載

写真は武田さん提供

「暑さの見舞い」

2012-09-05 06:47:28 | 岩国エッセイサロンより
2012年9月 4日 (火)

   岩国市  会 員   林 治子


この暑さを吹き飛ばすような友からの絵手紙が届いた。はがきいっぱいに熟した真っ赤なトマト。思わずのどかゴクッと鳴った。冷やして食べたら、どんなにかおいしいだろうな~。ともあれ返事を書くことに。
 絵はやっぱりトマトにしよう。ガブリと一ロかぶりついたのにしようかな。それとも、全部食べましたとヘタだけ残ったのに。いやいや、ちょっとしゃれてお皿に輪切りに、スライスしたタマネギ、キュウリを載せドレッシングをかけた一品料理に。あ~あおいしかった。ごちそうさま。添え書きをして送ろう。びっくりする友の顔が見たい。

   (2012.09.04 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩國エッセイサロンより転載