はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

「音色」

2012-11-11 23:12:14 | 岩国エッセイサロンより
    岩国市  会 員   樽本 久美
広島港から宮島を巡るランチクルーズが当たった。快晴で絶好のクルーズ日和。船内で珍しい物を発見した。手動式のオルゴールで、100年前のアメリカのレジーナフォン。「椰子の実」や「おぼろ月夜」「ハッピーバースデー」などを聴かせてくれた。重厚な温かみのある音色だ。

この夏、忙しかった私。神様がご褒美をくれたのかな? のんびり、ゆったり、食事をいただいた。デッキの風もやさしく、ゆるやかな時聞か流れた。今まで聴いたオルゴールの中で最高の音色で、何だか100歳まで生きられそうな気持ちになった。

(2012.11.06 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

「図書館のおかげで毎日充実」

2012-11-11 23:10:09 | 岩国エッセイサロンより
山陽小野田市  会 員   河村 仁美

「今日、図書館行く?」というのが、休日の朝の娘との会話だ。私の家族は無料でいろんな本が読める図書館が大好きだ。

 ずぼらな母は読み聞かせをするわけでもなく、ただ娘の隣で自分の好きな本を読み続けた。そんな母を見ていた娘は、同じように本を読む習慣がつき、読書好きに育った。

 本を読みたいけれど時間がないと言う人がいる。私は、たとえ十㌻しか読めなくても心を休ませてあげる時間をひねり出す。ベッドに寝転がって本を読む。好きな読書をすると疲労やストレスが軽減され元気をもらえる。

 最近は予約システムを利用する頻度がふえた。「この本は他の図書館から借りた本です。大事に取り扱って、返却期日を必ず守ってください」裏を見たら岡山県立図書館と書いてある。県外の図書館からも本を借りられるシステムに感激した。

 秋の夜長は読書に最適。読書は「心の栄養剤」と本を開ける。もちろん図書館の本だ。自分の時間があるお陰で毎日が充実したものになっている。

(2012.11.04 朝日新聞「声」掲載)岩国エッセイサロンより転載

「母親の選択」

2012-11-11 23:06:25 | 岩国エッセイサロンより
2012年11月 4日 (日)
  岩国市  会 員   安西 詩代
2匹が戯れてボールのように転がってゆく。友人の倉庫で4匹の子猫を産んだ野良の母猫は、2匹を人の目につく所に運び、2匹は手元に置いた。4匹を育てるのは無理だと悟り「2匹一緒なら寂しくないだろう。可愛がってください」とばかりに友人に託した。
 数年前、私に懐いていた野良猫が3匹の子猫を産み、そのうちの1匹を飼おうと家に入れた。母猫は家の周りを「ミャオー、ミャオー」と必死に大声で呼ぶ。それに呼応して子猫も「ニャオニャオ」と力いっぱい鳴く。とうとう私は諦めた。今は両方の母猫の心が分かる。

(2012.11.04 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

山口国体が結んだ縁

2012-11-11 23:04:19 | 岩国エッセイサロンより
   岩国市  会 員  山下 治子

 初物のレンコンを届けてくれたのは、昨年の山口国体で知り合い、活動を共にした仲間の一人だった。

 今年の岐阜国体で、山口県は15位だったが、昨年は悲願の優勝を勝ち取るために、山口県全体が燃えた。

 地元ではカヌー競技が催され、私は地域の主婦たちと、選手の食事作りを担当した。初対面の人が多く、不安だらけのスタートだったが、わが子のような選手たちのためにと、母心を持っての集団行動で心意気が高まった。

 選手たちと燃えた10日間を昨日のように思い出し、話が弾んだ。会場となったダム湖を仲間と訪れて、今は静かな湖面を眺めた。

 「この年で、友達が増えたのがうれしいね」と彼女が言った。言わずもがな、私もうなずいた。

 頂いたレンコンは、選手たちに「ぶち好評」だったレンコンカレーにして、夕食の膳に載せた。1年ぶりの懐かしい味だった。

  (2012.11.04 中国新聞「広場」掲載)岩国エッセイサロンより転載

ツルマラソン

2012-11-11 22:31:14 | はがき随筆
 <冬の使者くる前にランツルマラソン>鳥インフルエンザを恐れ、ツルマラソンは昨年から10月に変わった。種目は3㌔、10㌔、フルマラソンの三つ。参加者は2500人を超えた。
 私は3㌔の部に出た。中学生以上は275人。そのうち70歳以上は29人。号砲一発、競技場を後に田園地帯を走る。黄金色の稲穂がまぶしい。今年は北風がないので楽だ。後半の上り坂で「頑張れ!」「ファイト」の声援が腕振りを強くする。
 ゴールインは笑顔。タイムは16分11秒。全体の101位で年齢別では7位。満足感に浸ってのビールの味は格別であった。
  出水市 清田文雄 2012/11/11 毎日新聞鹿児島版掲載

ウサギって!

2012-11-11 22:22:40 | はがき随筆


 秋風が立つと、みそものが恋しくなる。たっぷりダシをとって残った野菜を使い、みそ汁を作る。里芋、大根を主に、小松菜、薄揚げも。薄揚げと言えば、新婚時代、しゅうとめに頼まれて買い物に行く時、薄揚げが「ウサギ」と聞こえて、ホントに困ったことがあった。田舎では豆腐を買って家で薄揚げを作っていた頃のこと。買い物に行く時に確かめもせず、店でうろうろ。「ウサギって何ですか」と尋ねると、「何に使うの? みそ汁だったらウスアゲでしょう」と助けてもらった。何十年前のことながら、あざやかに記憶がよみがえる。
  鹿児島市 東郷久子 2012/11/10 毎日新聞鹿児島版掲載