はがき随筆1月度の入賞者は次の皆さんです。(敬称略)
【月間賞】4日「久連子鶏」小村忍(69=出水市)
【佳作】1日「きらめく瞳」新川宣史(65)=いちき串木野市
▽28日「流れ着いた物」高橋誠(61)=鹿児島市
久連子鶏 五家荘に行き、久連子鶏を見た印象です。九連子村では、学童もいなくなり、学校も廃校になり、寂しいかぎり。しかし、平家の落人にゆかりの九連子鶏は、美しい羽色を見せて800年の歴史を生きていた。廃れいくものの歴史と残り続ける命とが対比されていて、美しい文章になっています。九連子鶏という文字の、見た目と響きの印象が全体を引き立てています。
きらめく瞳 幸い脳梗塞の後遺症がなかったので、毎朝学童の保護活動をしている。なかには感謝の言葉を返して登校する1年生もいて、慰めになる。その子のきらめく瞳に、家庭教育の様子が知られ、将来に希望がもててくるという、気持ちのよい文章です。
流れ着いた物 高知県の漂流物博物館(?)のお土産が、娘さんから送られてきた。流木が一本、むきだしのままで、切手は国際文通週間の記念切手。娘さんの意図と、それを酌んでくれた郵便局員の好意とがこめられた美術品ではあった。こういう心のつながりは、読んで幸福な気分になります。
この他に3編を紹介します。
若宮庸成さんの「今年の夢」は、大リーグの開幕試合を東京ドームでみたら、病みつきになり、今や夫婦の夢は、ヤンキースタジアムでイチローと黒田を見ることだという楽しい文章です。その費用は葬儀資金をとり崩すそうて、いいですね。
年神貞子さんの「ヨイトマケ」は、紅白歌合戦で聞いた、ヨイトマケの歌に触発されての回想です。戦後に、校舎建設の手伝いにヨイトマケをしたが、今はその校舎も市民の広場になってしまっている。こぞの雪今いずこ、余情の残る文章です。
清水恒さんの「今浦島」は、10年以上人里離れた場所で仕事をしているうちに、今浦島になってしまった。コンポを買っても使い方が分からない。説明書もまるで宇宙人のもののようだ。それでも死ぬまでに、カラオケ一曲くらいは歌えるようになりたいものだ。なんともいえぬおかしみのある文章です。
(鹿児島大学名誉教授・石田忠彦)