はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

「見えないこと」

2013-02-23 19:35:04 | 岩国エッセイサロンより
2013年2月22日 (金)

岩国市  会 員   片山 清勝

偶然出会った知り合いの男3人。近況を語る中、「Oからの賀状が来ない」と心配する思いが、なぜか共通していた。Oは80歳代の女性。Oと3人それぞれの関わりに共通性はない。3人の中で一番若いYが、Oに連絡を取ることを決めた。
 ところがその日、Yが電話する前にOから「ふせていたが元気になりました」と掛かってきた。その驚きがメールで届いた。読む私も驚く。まるで3人の会話が聞こえたかのようなタイミング。言葉では表しきれない、心を伝える不思議な媒介が科学を超えて存在した。その謎は誰も明かせない。

 (2013.02.22 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

僕は野良猫

2013-02-23 17:21:28 | はがき随筆


 「僕は野良猫よ。腹がへったけど食べ物がないの」。孤独で寂しい日々。「飼い猫が羨ましい」。ねぐらもなく、山や庭を恐怖心でさまよう。早朝、ある家のベランダを通ると、奥さんが雨戸を開けている。目線が合い顔色をうかがう。
 すると「怖がらないで」と優しい声。人の心が身にしみる。そして僕を見て一言。「随筆に書くよ」とちゃかす。「逃げろ」。道路へ出ると急速する車。幼子から「危ない」と大声で注意され「危ないのはあんただ」。「ソレー」。横断成功。さて、芝生で昼寝でもするか。ごろりと横に転がる。気分最高。
  肝付町 鳥取部京子 2013/2/23 毎日新聞鹿児島版掲載

春よ、来い

2013-02-23 17:10:26 | はがき随筆


 2月に入ると3月上旬の暖かさ。梅もちらほら咲き始めた。沖縄ではヒカンザクラが満開らしい。春は南からゆっくりとして足取りでやってくる。1月上旬はこの冬最高の寒さだったのだ。ヒヨドリのいたずらに主人は嘆いた。種子からまいて育てた白菜、ブロッコリー、ホウレンソウが食べられて全滅。レタスだけは無視され不思議。キンカンも一粒残らずやられた。私はキンカン漬けも残念ながら諦めた。
 1週間前は肌を突き刺すような冷たい風に身の縮まる思いがした。午後は垂水の温泉につかり至福の時を過ごした。
  鹿屋市 田中京子 2013/2/22 毎日新聞鹿児島版掲載