嘉永山の坂道を車で下っていたら、助手席のカミさんがフジの花を見て「わー、紫の滝みたい」と感嘆の声を上げた。
昨年もカメラに収めたので、たいした違いはないだろうと、登り口の空き地に車を止め、見上げて驚いた。昨年よりはるかに豪華に咲き誇っていたのだ。正面から見ると紫の房が山の傾斜に沿って下へ下へと咲いている様子は、まさに滝のようだ。「紫の滝とはうまい表現だね」「そうでしょう。私は小さい頃、文学少女って言われていたのよ」
すぐその気になる73歳のカミさんでした。
西之表市 武田静瞭 2013/5/10 毎日新聞鹿児島版掲載