はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ツバメ初見

2013-06-14 21:19:40 | はがき随筆

 今年も自宅でのツバメの初見はあった。毎年顔見せにはくるのだが、ここ数年巣を掛けなくなった。新築1年目から軒下に営巣し、同じ巣で同じ季節に2度ヒナをかえした時もあった。冬場、雀がその巣で遊び、痛みがひどくなったように思えた。春先に残滓を全部落とした。新しくて丈夫できれいな巣を作ってくれるものと考えて。
 その夏から、帰ってきても巣をかけなくなった。その場所に毎年飛んで来てくれるので、今年こそはといつも期待した。うるさい、汚いと思い、巣を落としたわけではない。またそこに、ヒナの姿を見てみたい。
  いちき串木野市 新川宣史  2013/6/13 毎日新聞鹿児島版掲載

コシラサギ

2013-06-14 21:05:58 | はがき随筆


 季節外れの寒波がやってきて急に冷え込む。外に出てみた。「外の方が温かいよ。海の空気を吸いながら、弁当でも食べたらうまいぜ」。海が大好きなカミさんに声をかけてみた。「そうねえ、それもいいかもねえ」
 途中の田んぼでコシラサギがこちらを見ていた。カメラをカミさんに渡す。「シャッターはこれ?」と言いながらパチり。
 港が見渡せる公園に着き、、途中で買ったおにぎりを頬張りながら撮った写真を液晶で見る。
 「よく撮れてるじゃん。アタシの腕もなかなかのもんね」。これも島で年金生活を送る老夫婦のささやかな楽しみの一つ。
  西之表市 武田静瞭 2013/6/12 毎日新聞鹿児島版掲載 武田さんのブログより、コサギ

焼酎の鑑札

2013-06-14 20:58:11 | はがき随筆
 母を医院に送る。待合室に行くと、額に大きなガーゼを貼った友が座っている。
 目が合って、笑いながら同時に「しょちゅん鑑札!」。静かな待合室がどっと沸いた。
 言葉の意味を知る方だけが、腹を抱えて笑った。
 若い方は、なぜ笑い声が起きたのか、左右を見て、天井まで見上げてキョトンとしていた。
 焼酎に足を取られて、できた顔の傷がしょちゅん鑑札。「これで天下公認の飲べえじゃ。でも、うれしいやら情けないやらで、人に会わす顔がない」
 「焼酎の鑑札」をご存じの方に「乾杯」。
  出水市 道田道範 2013/6/11 毎日新聞鹿児島版掲載


ありがとう

2013-06-14 20:46:30 | はがき随筆


 散歩の途中、ツバメの飛来を確認したのが3月中旬。今年も我が家で営巣できるか不安であった。というのは、雀が巣を壊してしまったからだ。杞憂に気付くのは10日後、交互に土を運び完全修復。産卵、抱卵、ふ化と進み、黄色のくちばしが見えるまで中の様子は一切不明だが、一方は必ず巣を守る。
 ふ化した後は口をあけるヒナのため、夜明けから日暮れまで飛び続ける。そして5月中旬、巣立ちの時を迎えるのだが、親と見分けがつかないほど成長したヒナが6羽いた。ただひたすら種をつなぐことに没頭する姿に打たれ、感動を味わう。
  志布志市 若宮庸成 2013/6/9 毎日新聞鹿児島版掲載