事実は小説よりも奇なり──。60年前、生まれた病院で他の赤ちゃんと取り違えられ、別の人生を余儀なくされた男性のニュース。多くの皆さんがご存じだろう。本来なら経済的に恵まれた家庭の長男だったのに……。52歳の私も57歳の姉も病院ではなく、実家で生まれた。助産師に来てもらったが、当時自宅分娩は珍しくなかったという。
私の長女は1996(平成8)年、旧県立鹿屋病院で生まれた。連絡を受けて駆け付けると生まれたばかりで、顔はしわくちゃ。孫の顔をのぞいた義理の両親は「まあ、(私の妻に)うり二つだね」と喜んだ。次女も大きな病院で生まれたが、今度は私の母が「うわ、あんたかと思った」と驚いた。よほど私に似ていたらしい。娘達は生まれてすぐに腕や足の裏に名前を書かれ、手と足首にネームバンドを巻かれた。2人は高2、中2になったが、妻は今もバンドを大切に持っている。ただ、60年前も病院は細心の注意を払わねばならないことだった。
医療法人「徳州会」グループの公職選挙法違反事件は全国に飛び火している。猪瀬直樹・東京都知事が「徳州会」グループから多額の資金提供を受けた問題。猪瀬知事は借用証を公開し釈明したが、このご時世に5000万円は変だろう。しかも無利息、無担保、押印なし。記者会見でしどろもどろする姿に、どれだけの人が納得するのか。
そして鹿児島。伊藤祐一郎知事が「徳州会」グループ所有の軽飛行機を利用していたことが分かった。伊藤知事は「(徳田虎雄・徳州会前理事長)夫人が使う飛行機に便乗させてもらった」と述べ、利用供与にあたらない考えを示している。
政治家は何事も誤解を受けないよう振る舞い、法に従い文書を作成提出し、管理を怠らぬよう身を律したい。公人なら自ら語り、関係文書を公開する気構えがほしい。
鹿児島支局長 三嶋祐一郎