はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

第九 終わりました♪

2013-12-07 18:03:19 | アカショウビンのつぶやき


ブログの更新が遅れました…。

12月1日、県内第九の最初が「かのや第九演奏会」でした。
大隅地域唯一のオーケストラ、かのやオーケストラの皆さんと、歓喜の歌を歌いあげました。

私にとっては、最後であろう…第九でしたが、歌い終わったら、また次も…
なんて気分になるのが、不思議です。

今回は練習の半分は参加ができず、少々焦りもありましたが、高らかに歌いました。

ちょっと出遅れた所もあったのですが、何とか今年の大きな宿題をやり遂げた!
と言うところでしょうか。

あれもこれも、第九が終わるまで…と、後回しにしたツケは、どさっと。
その上、不覚にも風邪をひいてしまい、ブログも更新できず、

ゴメンナサイ。

10円玉

2013-12-07 17:42:35 | はがき随筆
 たばこを買って店を出た。小学生が自販機の底をのぞいている。「僕、どうした」「10円がこの下に入ったの」「おじさんが10円あげるよ」「それ、要らない」と拒否された。
 「じゃあ、2人で捜そう」。店の板切れを借りて10回、20回とかき出す。すると「チャリン」と音がして、10円が転がり出た。半べそをかいていた少年の顔が一気に輝いた。
 さて、どうしようか。彼が受け取っていたら、私の手にはなかったこの10円。そうだ。大型台風で苦しむフィリピンに送ろう。早速、義捐金受付のダイヤルを回した。
  出水市 道田道範 2013/12/7 毎日新聞鹿児島版掲載

広い青空

2013-12-07 17:36:02 | はがき随筆
 青空が広がった。それまで庭の木の枝で暗かった。年の瀬になると、S君が来て庭木を剪定してくれる。年に一度の剪定なので、枝も葉も茂って大変だ。
 ハサミ、バリカンでチョキチョキ、ジャージャーと手際よく刈っていく。すごい、速い、速い。バリカンが枝や葉をどんどん飛ばしていく。太陽の恵みでいっぱい茂っていた木だ。人間の身勝手で刈り取られて寂しく、寒くなっただろう。
 「ごめんね」と思いつつ、うれしくなった。S君も満足気に茶をすすっている。青い空に見事な枝ぶりの木が出現して明るくなった。「ありがとう」
  出水市 畠中大喜 2013/12/6 毎日新聞鹿児島版掲載

有明の月

2013-12-07 17:30:30 | はがき随筆
 朝、小学校の正門の前に立つと、まだ西の空に月が残っていました。登校してくる子供たちにそのことを伝える。
 「かぐや姫の月がまだ残っているよ」と。「何それ」という子も多くいました。「うさぎが餅をついているよ」と言った方がよかったのかな。この状態の月を何というのだろうか。何気なく見上げてきたその時期の朝方の風景。子供たちとの会話の必要上、ウェブをのぞいてみる。「有明月」と出ていました。
 情けないことだけど、知らないよりは死ぬ前に、付け焼刃でも知った方がいいと考えました。
  いちき串木野市 新川宣史  2013/12/5 毎日新聞鹿児島版掲載

決意

2013-12-07 17:24:12 | はがき随筆
 妻も古稀を迎えた。が、祝宴会は子供たちの都合がつかずに延期となった。仕方なくその夜はワインで2人での寂しい乾杯となった。ならば、温泉にと日にちを決めた矢先、母の具合が悪くなり、おじゃんとなった。
 ようやく子供たちから一月遅れのお祝いをすると電話があり、今度こそと喜んでいたが、主人公が風邪をひき、またもや流れてしまった。
 そういえば、2年前の私の古稀の祝いの時は、足の親指を骨折し、うまい酒をなめる程度で終わったっけ。こりゃ2人の70代は前途多難ぞ。いや、災い転じて福となさねばなるまいぞ。
  肝付町 吉井三男 2013/12/4 毎日新聞鹿児島版掲載

感謝の旅

2013-12-07 17:17:29 | はがき随筆
 11月初旬。家族14人だんらんの霧島一泊の旅をした。まず、神宮参り。バスに1人残っていると、孫達が車椅子を借りてきたので行くことにした。
 坂道、砂利や敷石の道、更に車道のない再上段二つの階段は乗ったまま、4、5人で抱え、いつ来たかも分からない荘厳な本殿の前に着いて思いを込めて拝礼した。また帰りの下り坂は、1人が後ろ向きに2、3にんで支えて下さった。
 孫たちよ、ありがとう、ありがとう感謝感謝。そして高千穂河原からえびの、ホテルへ。温泉、食事一切家族に支えられた心に残る旅となった。
  鹿屋市 森園愛吉 2013/12/3 毎日新聞鹿児島版掲載

ひげそり

2013-12-07 17:11:02 | はがき随筆
 最近、高校2年生の長男が私の電気カミソリでひげをそるようになった。細く柔らかいひげに四苦八苦しているので、そり方を伝授。やっと身だしなみを気遣い始めたことに安堵する。
 自分もひげをそり始めたのは高校生だった。以来電気カミソリを愛用してきたが、カミソリのダンディーさにあこがれて、40歳を過ぎた頃からT字カミソリも使うようになった。そり後の爽快感は何とも言えない。
 思えば、2年もしないうちに、長男は1人暮らしを始めるかも知れない。「勉強しろ」以外に、語り、触れ合わねばならぬことが山ほどあると気づく。
  垂水市 川畑千歳 2013/12/2 毎日新聞鹿児島版掲載

事実は小説よりも

2013-12-07 16:49:45 | ペン&ぺん

 事実は小説よりも奇なり──。60年前、生まれた病院で他の赤ちゃんと取り違えられ、別の人生を余儀なくされた男性のニュース。多くの皆さんがご存じだろう。本来なら経済的に恵まれた家庭の長男だったのに……。52歳の私も57歳の姉も病院ではなく、実家で生まれた。助産師に来てもらったが、当時自宅分娩は珍しくなかったという。
 私の長女は1996(平成8)年、旧県立鹿屋病院で生まれた。連絡を受けて駆け付けると生まれたばかりで、顔はしわくちゃ。孫の顔をのぞいた義理の両親は「まあ、(私の妻に)うり二つだね」と喜んだ。次女も大きな病院で生まれたが、今度は私の母が「うわ、あんたかと思った」と驚いた。よほど私に似ていたらしい。娘達は生まれてすぐに腕や足の裏に名前を書かれ、手と足首にネームバンドを巻かれた。2人は高2、中2になったが、妻は今もバンドを大切に持っている。ただ、60年前も病院は細心の注意を払わねばならないことだった。
 医療法人「徳州会」グループの公職選挙法違反事件は全国に飛び火している。猪瀬直樹・東京都知事が「徳州会」グループから多額の資金提供を受けた問題。猪瀬知事は借用証を公開し釈明したが、このご時世に5000万円は変だろう。しかも無利息、無担保、押印なし。記者会見でしどろもどろする姿に、どれだけの人が納得するのか。
 そして鹿児島。伊藤祐一郎知事が「徳州会」グループ所有の軽飛行機を利用していたことが分かった。伊藤知事は「(徳田虎雄・徳州会前理事長)夫人が使う飛行機に便乗させてもらった」と述べ、利用供与にあたらない考えを示している。
 政治家は何事も誤解を受けないよう振る舞い、法に従い文書を作成提出し、管理を怠らぬよう身を律したい。公人なら自ら語り、関係文書を公開する気構えがほしい。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎  
  

隣国の人

2013-12-07 16:40:56 | はがき随筆
 紅葉の時季、友人と旅をしたことがあった。すばらしい景色にお互いカメラを向けていた。その時、女性が話し掛けてきたが、日本語ではない。けげんな顔をする私達に彼女はジェスチャーをする。つまり、2人並んで写してあげましょうかと言っているのだと私は解した。
 お礼に頭を下げて、その場は通じた。言葉は分からなくても心は通じるものだと思った。一瞬の出来事に同じツアーと間違えられたのかな? と2人で笑いながら歩いた。映った2人の表情は固まっていた。国交もお互い通じ会える心を持つ隣国であってほしてし願いたい。
  鹿児島市 竹之内美知子 2013/12/1 毎日新聞鹿児島版掲載

毎日ペンクラブ賞

2013-12-07 16:26:03 | 毎日ペンクラブ鹿児島


 高野さん(鹿児島市)、堀さん(姶良市)
 本紙「ハガキ随筆」への投稿者らが集まる、毎日ペンクラブ鹿児島の秋の研修会が鹿児島市で開催され、毎日新聞鹿児島版掲載の三嶋祐一郎支局長が、他県の各ペングループの活動などを紹介した。
 また、第5回毎日ペンクラブ賞が発表され、鹿児島市の高野幸祐さん、姶良市の堀美代子さんの2人に盾が贈られた。
 同賞は、2009年10月1日から今年9月末、本紙鹿児島版に載ったはがき随筆で、ペンクラブ会員の作品を対象に選考した。選ばれた随筆は、高野さんが「さざれ石」=9月26日付。▽堀さんが「新一年生」=5月13日付。ぬかの3は「他の方々はさまざまな経験、視点で投稿されるが、私は『言葉』を大切にして書いています。夜中に『これは!』という言葉が浮かべば、メモを取るようにしています」と打ち明けた。堀さんは「続けてきてよかった。『継続は力なり』ですね」とそれぞれ受賞を喜び、次作に意欲を見せた。

はがき随筆10月度

2013-12-07 15:56:18 | 受賞作品
 はがき随筆10月度の入賞者は次の皆さんです。(敬称略)

【月間賞】13日「独りじゃないよ」小幡由美子(79)=鹿屋市寿
【佳作】1日「久多島」田中健一郎=鹿児島市東谷山
   △19日「母の後ろ姿」小向一成(65)=さつま町宮之城屋地


 ひとりじゃないよ かつての職場の食堂を、ご主人とこっそり使わせてもらっていると、やはり退職後の顔見知りと出会った。従業員の人たちも含めて、旧交を温める場を提供してもらえる食堂への感謝の気持ちが、素直に表現されています。その奥に、孤独を癒してくれる人と人とのつながりがあり、そこからくる安心感がうかがい知れる文章です。
 久多島 吹上の浜沖合の無人島の、村と村との所有権争いにまつわる伝説、その島を目印に引いた子供の時の地引き網の思い出、それらを懐かしんで吹上の浜を語る内容です。歴史の中に現在の美観を置いてみると、異なる風景が見えるくるかもしれません。
 母の後ろ姿 子供の時母親と一緒に、乾かした稲を自宅に運び込み、脱穀していた思い出が語られています。子供は母親の背中を見て育つとは、よく言われることですが、文字通り小柄な母親の背中の稲の束を見て育ち、今、かつての農作業の厳しさについてある種の感慨を抱いている内容です。
 この他、優れたもの3編を紹介します。
 一木法明さんの「しょろトンボ」は、お盆に先祖の霊を運んでくるといわれる精霊トンボが、国内での羽化ではなく、南方から毎年飛来する種だということを知り、いよいよ、畏敬の念を抱いたという内容です。こういう知らないことを教えてもらえる文章は貴重です。伊尻清子さんの「郷愁」は、週末に来る孫のために、鍋いっぱいカレーを作ったのに、来ないという。子供の頃は、カレーはご馳走で、一家団欒の象徴だった。今は母も1人暮らしだし、また、孫は来てくれないし、さてたくさんのカレーは。カレーの匂いが秋の夜長の郷愁を感じさせます。山下恰さんの「百舌鳥日和」は、秋冷の候、早朝の散歩、澄んだ空気の中での鋭い百舌鳥の高鳴き、通りがかりの老人の「百舌鳥日和ですね」の一言。印象派の絵画でも観ているような、美しい情景が文章になっています。それにしても「百舌鳥日和」とは美しい言葉ですね。
  (鹿児島大学名誉教授 石田忠彦) 
  2013/11/30 毎日新聞鹿児島版掲載
 

雨のパリ

2013-12-07 15:48:27 | はがき随筆
 明日から冬時間になるというその朝、パリの街は小雨に煙っていた。ホテルの裏通りに画家、ドラクロワの生家を見つけた。大学時代に読んだ彼の伝記と肖像を思い出し、しばし遠い日の時間に浸っていた。
 ツアーバスは、パリの市内観光をしながらベルギーのブリュッセルを目指して走った。
 エッフェル塔の先端は雲に隠れている。大木のプラタナスの間に、雨に洗われたパリの街並みが続く。しっとりと落ち着いた無言の彩り──。「パリの街並みはいいなあ! 雨が似合うんだなあ」。今まで気づかなかったことを雨は教えてくれた。  
  出水市 中島征士 2013/11/30 毎日新聞鹿児島版掲載