はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

晩秋の九重

2013-12-28 14:03:53 | はがき随筆
 慌ただしさの中に気がつくと、イチョウの葉が黄ばんでいる。ふと、九重の高原と紅葉を見たくなった。
 11月初旬のやまなみハイウエイや瀬の本高原の眺めは、目を見張らせた。白い穂のススキが群生する、なだらかで広々とした丘は、空との境目が見分けられない先まで続いている。
 旅館への間道沿いの紅葉はまさに値千金。カエデ、ハゼ、クヌギなどの葉がいろとりどりに染まっていた。その木々の下の夢のようなトンネルを通る。
 妻と見た、九重連山のふもとの、高原と紅葉の美しさは私の胸を感動で染めてくれた。
  出水市 小村忍 2013/12/28 毎日新聞鹿児島版掲載

午年に駆ける

2013-12-28 11:01:57 | ペン&ぺん


 師走に入り、京都市で「餃子の王将」を展開する王将フードサービスの社長が、また北九州市で市漁協組合長が撃たれ、亡くなった。共に銃の扱いに慣れた者の犯行らしい。日本の銃社会もここまで来たのか。
 鹿児島では7月、姶良市の女性が借金を断った男により殺害された。県警は粘り強い捜査で容疑者を逮捕、容疑者は強盗殺人の罪で起訴された。
 17日には鹿児島市三和町で女性が頭部を強打され、21日夜亡くなった。県警は鹿児島中央署に捜査本部を設け、殺人事件として全力で捜査にあたっている。でも世界に冠たる日本警察の捜査力。犯人は早く自主すべきだ。痛ましい事件が県内で起きたが期待の持てる明るい話題もある。
 来春の第86回選抜高校野球(日本高野連、毎日新聞社主催)の「21世紀枠」九州地区候補校に、奄美市にある県立大島高校(屋村優一郎校長)が選ばれた。全国9校の中の1校だ。この中から最終的に3校が決まる。
 本社から届いた候補校の表彰盾を贈るため、県高野連の佃省三理事長と一緒に大島高を訪ねると、終業式後に伝達式を開いていただいた。私が歌やユーモアを交えて祝辞を述べると、生徒たちが瞬時にドッと笑ったくれた。仕事柄、高校やイベントであいさつを頼まれるがポカ~ンされることが多い。校外の奉仕活動や文武両道も評価されただけにさすが、生徒たちの理解力は速かった。甲子園に行けたならと大いに期待している。さて最終的に県内からはどこが選ばれるか、1月24日の発表が楽しみ。
 今年は今回が最後です。ご愛読ありがとうございました。皆さんもつらいこと、腹の立つこと、うれしいことなどそれぞれあったことでしょう。来年のえとは午。天馬のように駆け抜ければと思います。どうぞ良いお年を。2014年もよろしくお願いします。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 2013/12/27 毎日新聞鹿児島版掲載

古里の思い

2013-12-28 10:54:06 | はがき随筆
 この秋、中央駅前ストリート美術館に参加した。絵は心が安らぐ、原風景が描けたらと絵筆を握っている。このイベントでじ~っと私の絵を見つめていた1人の少女と出会った。原発事故により鹿児島で暮らしているが、「この絵を見ていると癒し、郷愁を感じます。でもこの地で生きてゆく」と話していた。
 私の想像もつかないほどのつらい経験をしたんだと思うと「マコテ グラシキシカどんキバイヤンセ」と励ました。古里を失った少女の望郷への念が深く心にきざまれ、絵の技術はないが見る人の心を揺り動かす原風景を描き続けられたらと思った。
  さつま町 小向一成 2013/12/27 毎日新聞鹿児島版掲載