はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

由緒ある大慈寺での取材

2013-12-17 22:32:38 | アカショウビンのつぶやき








今年もラジオ番組の取材で志布志市の大慈寺に行ってきました。

この寺は、室町時代(1340年)の創建で、臨済宗京都妙心寺の末寺であり、
江戸時代には16の支院と100名以上の僧侶が学問に励んでいたそうですが、
廃仏毀釈により、一時は廃寺となりましたが、
明治12年に旧大慈寺宝地庵跡に再興され今に至っています。

ここの住職さまのお母様は歌人で、
私が関わっている地域エフエムのラジオ番組「心のメモ帖」で、
お歌を紹介させて頂いています。

久しぶりにお邪魔してきました。
「短歌は日記代わりです」とおっしゃる86歳歌人、イツ子夫人は、
穏やかな口調で、先々代の住職様の逸話もお話下さいました。

珍しく暖かな日だまりの中で、取材をさせて頂きました。
いつまでもお元気でと祈りつつお寺を後にしました。

人生いろいろ

2013-12-17 22:03:35 | ペン&ぺん
 2013年も残すところ、あと2週間余り。年末の大掃除や年賀状書きに忙しい毎日を送っておられるだろう。今年の流行語大賞や1年を現す漢字も「輪」と決まった。皆さんの我が家、職場の流行語や漢字はどんなものがあるのだろうか。
 今年は7月の参院選、公金を投入した県職員らの中国・上海研修、桜島の噴火・大量降灰と慌ただしかった。今は医療法人「徳州会」グループによる公職選挙法違反事件が県政界を巻き込み、気が抜けない。いずれもこれらのニュースを鹿児島支局から発信し、全国に伝えている。
 選挙に金がかかるのは想像はつく。でも今も昔ながらの手法が鹿児島で取られていたとするならば、これを機会に一掃すべきだ。組織内で反目し、干された人物が金の流れを示すチャートや名簿、通帳など一切の資料を持って警察や地検に駆け込むのは世の常ではないか。「有らぬ疑い」に迷惑しているなら、まして薩摩の男なら、正々堂々と真実を語ってほしい。
 伯父、叔母が相次いで、がんで逝った。2人は開腹した時は手遅れだった。伯父は戦争末期、小型ボートに爆薬を積み、敵艦に体当たりする訓練を受けていた。貴重な生き証人だったのに、ついに詳しい話を聴けなかった。悔みきれない。
 今年も多くの著名人が鬼籍に入った。「大地の子」で知られる作家の山崎豊子さん、「人生いろいろ」と島倉千代子さん、「恋の季節」「君といつまでも」など数々のヒット曲を世に出した作詞家の岩谷時子さん。島倉さんは他人の多額の借金を背負い、がんを患ったりとまさに波乱万丈の人生だった。
 皆さんもご家族、友人、知人で亡くなられた方がおられるでしょう。きっと天国から見舞ってくれているはずだ。だから、天国のご先祖さまから叱られるような生き方だけはしたくない。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎

はがき随筆11月度

2013-12-17 21:38:25 | 受賞作品
 はがき随筆11月度の入賞者は次の皆さんです。(敬称略)

【月間賞】25日「CD文庫」鵜家育男(68)=鹿児島市武
【佳作】7日 「思秋期」西田光子(55)=志布志市有明町 原田
▽17日 「皇帝ひまわり」伊尻清子(63)=出水市武本


 CD文庫 老眼で活字が読みづらくなり、CD文庫で朗読に親しむようになったという内容です。文学の受容が始めは音読による聴覚からのものであったことを考えると、この読書法もあながち不自然なことではないでしょう。CD文庫の朗読が、かつての祖母の絵本の読み聞かせを思い出させたというところは、新しさと古さの絶妙の対比です。
 思秋期 子供は自立し、夫は転勤になり、専業主婦の毎日、時は秋。こういう状況で思うのは、社会のために役に立つ仕事をしてみたいということ。といって何をしたらよいのか。気候も年齢もまさしくもの思う秋ですね。1人になって時間ができて、社会という存在を考えるようになった気持ちがよく表わされています。
 皇帝ひまわり 晩秋に咲く皇帝ひまわりの花を見上げていると、いきなり孫娘の来襲。母親との感情的な行き違いからの小家出。2.3日間の山村留学を楽しんで、けろりと帰って行った。どこにでもある親子げんかの小事を、皇帝ひまわりという名前のもつ威厳が見守っているという取り合わせが、優れた文章にしています。
 この他、興味を惹いた3編を紹介します。
 津島友子さんの「運動会準備」は、鹿児島に越してきて、幼稚園の運動会の家族ぐるみ地域ぐるみの準備騒動に圧倒されたことが、素直な驚きとして表現されています。住んでいると当たり前のことですが、初めての人には驚きでしょう。すぐ慣れますよ。 
 一木法明さんの「ヤー、久しぶり」は、今年もジョウビタキの番が庭に来た。その渡り鳥を擬人化しての表現が、まるで遠来の客をもてなすような、楽しみと親しみとをもって描かれています。
 種子田真理さんの「私の社会勉強」は、裁判の傍聴に行って、いろいろの事案を見学するにつけても、素直に罪を認めない被告人の言動に悲しい憤りを感じるという内容の文章です。「ハガキ随筆」の素材はどうしても身辺雑記にかたよりがちですが、こうしう文章には新しさを感じます。
  (鹿児島大学名誉教授 石田忠彦)

せっかち

2013-12-17 21:29:25 | はがき随筆


 年賀状にえとの動物の顔をだるまにのせた絵を描き初めて12年、午年でとょうど一回りした。さて来年はどうするか……。
 天井を見上げていたら、カミさんが「何考えているの?」。来年の年賀状の図案を考えていると答えたら「まだ懲りないの? 毎年書き終わってから喪中の知らせが届くことを繰り返しているのに」。
 そうなのである。今年も6通届いた。カミさんもせっかちだったのだが、自分をのんびり派に変えて、釣り合いを保っているのかも。カミさんは……偉い? それはそれとして、未年の図柄をどうするか……。
  西之表市 武田静瞭 2013/12/17 毎日新聞鹿児島版掲載

住職退任の日に

2013-12-17 21:13:29 | はがき随筆




 住職継職法要の冒頭、決意を仏前に向かって述べる表白で、長男は次のように結んだ。
 「私ははなはだ浅学非才にして、その力は十分ではありませんが、歴代住職の足跡をたどり、門徒同行のご助力を得て、み教えの灯を絶やさぬよう精進いたします」と。 後継ぎの彼は大学卒業後、約20年間会社勤めの後、大学院で宗学を学び昨年9月に帰山してこの日を迎えた。当日は近隣の寺院や門信徒が集まって退任と新住職の就任を祝っていただいた。私は、住職の座を去る惜別よりも、息子の今後の努力に期待する思いで胸が熱くなった。
  志布志市 一木法明 2013/12/16 毎日新聞鹿児島版掲載

クリスマス

2013-12-17 21:02:48 | はがき随筆
 クリスマスには苦い思い出がある。若い頃、上司から小倉のキャバレーの招待券を2枚もらったので同僚を誘い、2人で大いにクリスマスを楽しんだ。トイレに行こうとしたら、同僚が「ボーイがトイレにいて客がチップを渡している」と言うので、辛抱することにした。
 終電車に乗ったが、我慢ができなくなり、途中の駅で降りた。酔いも覚めて、寒い夜道を門司の寮へと2人で歩いて帰った。
 当時の寮生はよく飲みに行っては金欠病になり、給料を前借りして評判になった。クリスマスの声を聞くと、あの夜の記憶がよみがえり、苦笑している。
  鹿児島市 田中健一郎 2013/12/15 毎日新聞鹿児島版掲載

晩秋のある日

2013-12-17 20:55:45 | はがき随筆
 76歳。いつ、何があってもおかしくない。かかりつけの歯科医院の隣に葬祭場ができた。「見学できます」の張り紙に、治療の帰りに寄ってみた。
 係の方に案内していただき、パンフレットをもらって帰った。中規模で一日一つの葬儀。家から近いのもよい。雅楽が縁で結ばれた娘夫婦には竜笛を奏して送ってほしい。娘は涙で吹けるだろうか。いろいろ考えていると、不覚にも涙が出た。
 「死は古い着物を脱いで新しい着物に着替えるようなもの」。またこの世に出直してくる。明るい展望がある。涙を拭って夕げの支度にとりかかった。
  鹿児島市 内山陽子 2013/12/14 毎日新聞鹿児島版掲載

バレイショ

2013-12-17 20:39:48 | はがき随筆


 北海道を旅した時、ちょうどバレイショの花盛りだった。濃緑の葉に白色の花が丘一面に広がり、その先は青い空。その広大なイモ畑の素晴らしさは脳裏に残っている。
 家庭菜園が趣味となり、2月に植えたイモは白い花が咲き、梅雨前に収穫した。この9月、また植え付けをした。年に2回収穫できるのはうれしい。
 先日、畝に手を入れると、卵くらいのイモが手に触れた。間もなく収穫できる。だも花は見られなかった。秋植えは花が咲かないのだろうか。ホクホクしたイモも好きだが、花もいい。ちょっと寂しかった。
  出水市 年神貞子 2013/12/13 毎日新聞鹿児島版掲載

災難

2013-12-17 20:30:32 | はがき随筆
 畑の草取りを終え、ポカポカ陽気に誘われ、弁当を片手に浜に下った。海は穏やかで沖を行き交う船を眺め、のんびり取る昼飯は格別。景色もおかずにして世の中を独り占めと思った。その時だった。いきなり背後から黒い物体が弁当をわしづかみ。一体何事が起きたのか。我に返ると、トンビが油揚げをつかんで飛んでいったではないか! 上空から隙をうかがっていたのだ。ヒエーッ! たまげた。突然の出来事に肝がつぶれた。
これが本当のトンビに油揚げじゃなあ。教訓その一 男たるもの一歩外に出たら油断大敵、何が起きるか分からんぞ!
  指宿市 有村好一 2013/12/12 毎日新聞鹿児島版掲載

ですです

2013-12-17 20:24:13 | はがき随筆
 「そうですよね」「ですです」。鹿児島暮らしは初めてなので、随分親しげな話し方をするなと思っていた。しかし「そうでしたよね」に対する「でした」には驚いた。メールだったので、一言「でした!」とあり、訳が分からなかった。ちなみに「だよね」「だよー」もある。
 「うれしいでした」にもちょっと驚いた。「『うれしかったです』じゃないの」と思ったが、これも方言の一つという。
 鹿児島弁の本を開くと、「地方共通語」とあった。こちらの人は共通語、標準語として話しているそうだ。「なるほど!」。鹿児島弁は奥が深いのだ。
  鹿児島市 津島友子 2013/12/11 毎日新聞鹿児島版掲載

思い思われ

2013-12-17 20:16:14 | はがき随筆
 5台あるレジ係の中からNさんを見つけた妻が「居るよ」と言い、カートを押す私を促す。「お待ちしていました」とNさん。笑顔がうれしい。並ぶ客が少ないと、マイバッグに商品を入れながら「いつもありりがとうございます」の言葉に心がこもっている。効き手が動かない妻の財布からカードやお金を出してくれるので、妻も助かる。
 数年前、スーパーAで客への応対が気持よく、商品さばきやレジ打ちが速いNさんに感嘆して夫婦でファンになった。明日はポイント5倍の日。彼女は遅番だ。心配をかけないためにも夕方でかけよう。
  出水市 清田文雄 2013/12/10 毎日新聞鹿児島版掲載