はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

うん、和むね

2013-12-30 11:47:53 | はがき随筆
 暮れになり、近くに4棟新築された。洋風が多い中に、1棟だけ瓦ぶきの和風家屋。洋風は若い人かな。和風はお年寄りの家だろうと思っていたが、外国人の住まいであった。庭は手作りでぼつぼつ、趣味であろう。「素晴らしいですね」とあいさつしたところ、「うん、和むね」という返事。 30代だろう。流暢ではないが、ぽわーと心が温まる言葉だった。若い時、趣味は庭園と話した覚えがある。その実力といえば、垣根を裸同然にし、失笑を買った。庭園というのは性分から不似合いだ。庭園巡りならどうだろうか。
  姶良市 山下恰 2013/12/30 毎日新聞鹿児島版掲載

からたち日記

2013-12-30 11:41:46 | はがき随筆
私が3、4歳の頃、父の田舎に行く度、祖父のリクエストで「お富さん」を歌っていたらしい。自分ではよく覚えていない。島倉千代子さんが逝去され、ふと思い出した。
 5歳の時、叔母と田舎道を歩きながら「からたち日記」を口ずさんだら、生真面目な叔母に「そんな歌、幼稚園で習ったの?」と叱られた。歌謡曲を歌っちゃダメと言われたことがなかったので驚いたことと、あぜ道の風景が鮮やかによみがえる。
 その叔母も今は病院暮らし。話もうまく通じない。あの日の事はもう彼女の記憶にないだろう。私だけの思い出になった。
  鹿児島市 種子田真理 2013/12/29 毎日新聞鹿児島版掲載