はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

時代

2014-07-03 10:13:36 | はがき随筆
 ある職場から「コーラス部を作りたい。力を貸して」と乞われた。
 「私でよかったら」と請け合ってしまった。まず注文の曲、中島みゆきさんの「時代」で困った。こちらは知らない。彼ら若者は多分、知っている。こちらは習う方に回りたい気分だ。
 音符を見ると、2部合唱になっているので、急ぎ教材研究へ向かう。練習を重ねて、発表会にも無事参加でき、楽しみを分け合った。続いてこちらから「雨降りお月さん」を持ち出した。この童謡を知らない。が数人いた。
 時代の差なのでしょう。
  出水市 松尾繁 2014/7/3 毎日新聞鹿児島版掲載

造林鎌

2014-07-03 10:07:12 | はがき随筆
 13坪の貸農園へ行き来する小道に雑草がかぶさってきた。草刈り鎌で刈り取れるようなものではないし、刈り払い機もない。実家の倉庫からさびた造林鎌を持ち出した。刃渡り60㌢、柄の長さ1㍍。亡き父が造林作業で使っていたものだ。それを研いで使った。
 2㌔の造林鎌は重たく、全身で雑草をたたき切るような力と根気がいる。肌着も上着も汗でびっしょりになった。
 夏の山仕事で汗まみれになった服を絞っていたと父が語ったことを思い出した。働き者で身を粉にして働き、家の暮らしを支えていた父を思った。
  姶良市 中馬和美 2014/7/2 毎日新聞鹿児島版掲載