はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ご近所の目

2014-07-28 19:17:03 | ペン&ぺん


 兵庫県の野々村竜太郎前県議(47)=西宮市=による政務活動費の不自然な支出疑惑、通信教育大手ベネッセホールディングス=岡山市=の顧客情報漏えい事件、岡山県倉敷市の小5女児監禁事件――。なぜと憤る事件、疑惑が後を絶たない。 
 政務活動費は公費で税金だ。公人たる県議はその使途を明らかにするのが当然。野々村氏は県民に説明する義務がある。
 人ごとと思っていたら、北九州市の自宅に知らない会社から、我が家に中高生2人の娘がいることを知った上で勧誘の電話があった。娘たちの個人情報はどこから漏れたのか。
 多くの人が心配していた監禁事件は女児が無事に保護され本当によかった。相も変わらず、なぜこんな事件が続くのか。
 私は娘たちに幼稚園から空手を学ばせた。加害者が成人の男なら、女児の空手は気休めかも知れない。それでも、我が身を守ってほしいとの願いを込めた。寸止めなしの流派で、体中に青あざがあったが、心身共にたくましくなった。更に出たばかりのGPS機能付きの携帯電話を持たせ、外出した際、妻がいなければ私が幼い娘を男子トイレに連れて行き、用を済ませていた。
 今回の監禁事件解決の一つには、近所の人がナンバープレートを二重装着した不審者を目撃していたことなどが挙げられる。他にも周辺住民から寄せられた多くの情報が容疑者逮捕につながったようだ。幼い子やお年寄りといった弱者を守る、かつて日本のどこにもあったご近所の目が生きていた。確かに、町内や地元の校区に見なれない車や人が出没すると「おかしい」と思わねばならなくなった悲しいご時世になった。
 夏休みに入った。お子さんやお孫さんに今回の事件を教訓に、川や海の事故なども含め自分の生命を守る手立てを人生の先輩から話してほしい。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 2014/7/22 毎日新聞鹿児島版掲載

友、墓を買う

2014-07-28 19:10:48 | はがき随筆
 友人が墓を買った。そのお披露目と娘の三回忌の法要をすると連絡がきた。2年前、一人娘を事故で亡くしたが、遺骨は娘婿の実家の墓に納めてあった。友人自身独り身で、近い親族もいないが、娘には子もなく、婿の将来を考えると自分が引き取った方がいいと考えたらしい。
 友人の死後、葬式と三回忌までは娘婿にしてもらうよう遺言証書を作ったという。その後、母子のお骨は合葬墓に移し、墓を処分する手はずという。
 「死に支度も終わったようなものね。大枚はらったのだから長生きして元を取らないとね」。返信メールに書き添えた。
  出水市 清水昌子 2014/7/22 毎日新聞鹿児島版掲載

婦唱夫随?

2014-07-28 19:05:34 | 女の気持ち/男の気持ち
2014年7月28日 (月)

 
  岩国市  会 員   沖 義照

 「最近、よく眠れるようになったわ」。

朝食をとりながら奥さんが言う。そういえばここ半年、隣のベッドで何度も寝がえりを打っていたような気がする。そんな奥さんが、最近よく眠れるようになった訳は、はなはだ単純なことであった。

 もともと、ちょっと油断をすると肥えてしまう体質らしい。何とか人並みにスリムになりたいため、好きなものを腹いっぱい食べることを我慢する。やがて少しスリムになるが、成功した途端、また好きなものを好きなだけ食べる。すると元の木阿弥に……の繰り返しが、ずっと続いていた。

 ここ半年は食事を工夫しダイエットに頑張っている期間だったらしい。先日、目標の体重まで減量したので、最近はおいしいものを十分に食べるようにしたという。腹は正直なものである。一晩中ぐっすりと眠れるようになったそうだ。

実は数ヶ月前から私の体重が少しずつ落ちていた。どこかおかしいのかなと少し気にはなっていたが、先日、顔を洗っている時に頬の膨らみを感じた。

「おっ、体重が戻ってきたぞ」

そう思いながら朝の食卓についていたとき、この話が飛び出したのである。

何ていうことはない、ダイエットの必要のない私が、奥さんのダイエットにつきあわされてスリムになっていただけである。

奥さんと私、夫唱婦随ならぬ婦唱夫随。同じように体重が増減している。
(2017.07.28 毎日新聞「男の気持ち」掲載)岩国エッセイサロンより転載