はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

安らかに

2015-02-18 21:24:29 | 岩国エッセイサロンより
2015年2月17日 (火)

     岩国市  会 員   横山 恵子

鶏鍋を作ると切ない思い出がよみがえる。子供の頃、田舎にはよく泊まりに行った。それは小学6年の時、3日泊まり帰る日の昼食に叔母が鶏鍋を作ってくれた。脂がギラギラと浮いて、まさにごちそう。「鶏肉いつ買って来たん?」と聞くと叔母は「足は速いからね。あっという間に買うて来たんよ」と笑って言った。食べて庭に出ると鶏たちが「コッコー」と悲鳴に似た叫び声で、あちこち走り回っていた。確か3羽いたはずだが。「えっ、まさかあの肉は」
 以来、聞くことなく叔母は6年前、76歳で天国へ。随分世話になった。田舎の方に向けて手を合わせる。

 (2015.02.17 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載