母が父の5カ月後に手の届かぬ世界へ旅立って、はや8年となる。生前、私の両手をしみじみと見ながら「あんたの手はお父ちゃんの手に似てよかった。きれいな手だ」と言っていた。
父と2人で畑の土にまみれ、手の節も曲がり、手のひらもガサガサしていた。幼いころ「背中がかゆい」と訴えると「ガサガサしているから気持ちよかろうが」と言いながら、かいてくれた。髪の毛も編んでくれた。
できるものなら母の指を一本一本なでてあげ「ありがとう、ありがとう」と言ってあげたい。庭を吹きわたる風に、母子草がかすかにゆれている。
外薗恒子 2016/6/20 毎日新聞鹿児島版掲載
父と2人で畑の土にまみれ、手の節も曲がり、手のひらもガサガサしていた。幼いころ「背中がかゆい」と訴えると「ガサガサしているから気持ちよかろうが」と言いながら、かいてくれた。髪の毛も編んでくれた。
できるものなら母の指を一本一本なでてあげ「ありがとう、ありがとう」と言ってあげたい。庭を吹きわたる風に、母子草がかすかにゆれている。
外薗恒子 2016/6/20 毎日新聞鹿児島版掲載