はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

母の日に思う

2016-06-20 22:00:05 | はがき随筆
 母が父の5カ月後に手の届かぬ世界へ旅立って、はや8年となる。生前、私の両手をしみじみと見ながら「あんたの手はお父ちゃんの手に似てよかった。きれいな手だ」と言っていた。
 父と2人で畑の土にまみれ、手の節も曲がり、手のひらもガサガサしていた。幼いころ「背中がかゆい」と訴えると「ガサガサしているから気持ちよかろうが」と言いながら、かいてくれた。髪の毛も編んでくれた。
 できるものなら母の指を一本一本なでてあげ「ありがとう、ありがとう」と言ってあげたい。庭を吹きわたる風に、母子草がかすかにゆれている。
 外薗恒子 2016/6/20 毎日新聞鹿児島版掲載

ガリレオ温度計

2016-06-20 21:44:51 | はがき随筆


 正式にはガリレオガリレイ温度計。炭化水素溶液入りの透明な円柱に、数字付きの楕円のガラス球が数個浮かんでいて、その球体が上下して気温を示す。
 初めて見たのは20年ほど前で、欲しいなあと思いながらも買わずにいたのだ。転居した際、北海道のいとこからお祝いをもらい、何か「普通でない」お返しをと考えているうちに時宜を逸してしまった。
 定年を迎えたときに、退職のあいさつとして贈り、自分にも小型を買い、職場の机に置いている。先日、テレビドラマで大きなのが映っているのを見て、一人にんまりした私である。
  鹿児島市 本山るみ子 2016/6/19 毎日新聞鹿児島版掲載

ワクワクな人生

2016-06-20 21:33:55 | はがき随筆
 「キャー! これは何なの? 挑戦状? それともパズル?」。送られてきたメールはたくさんの数字の羅列と少しの漢字が画面いっぱいにはいったものだった。私のメール史上、初の大事件である。
 「ああ、これは『文字バケ』っていうんだよ。コンピューターが上手く変換してなかったのかも……」。19歳の娘のことばで、この症状が『文字バケ』と知った。『バケ文字』と覚えて娘には笑われるが、こんなことでもちょっとワクワクする。残りの人生は、感官の全てを使い、ワクワクドキドキしなから生きるつもりだ。楽しみ!
 鹿児島市 萩原裕子 2016/6/18 毎日新聞鹿児島版掲載