はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

気まぐれ罪作り

2016-06-25 13:43:33 | 岩国エッセイサロンより
岩国市  会 員   吉岡 賢一

今年は玉ねきが不作だった。初体験する惨めな姿に「畑作りが悪かったか?」「植えた時期は?」「肥やしの時期や量は?」などとまずは自分の腕を疑った。いずれも例年通り、特別なことは何もしていない。
 あえて言うなら今年は欲張って過去最高600本植えた。「狭い畑に詰めすぎたのが間違い」と結論し、欲張りを犯人にでっち上げた。そのうち専業農家の友人が「今年の玉ねぎは全滅じゃった」と言い、玉ねぎ不作がニュースになった。
 腕が悪かったのでも、欲張りが犯人でもなかった。ただ、おてんとう様の気まぐれだった。
  (2016.06.21 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

誤解です

2016-06-25 13:42:17 | 岩国エッセイサロンより
2016年6月 4日 (土)
   岩国市  会 員   山本 一

「一日中釣り糸垂れて世捨て人」「気の長い釣り人今日も日向ぼこ」「星空に釣り糸垂らし春の夢」。川柳句会で仲間3人がこの句を詠んだ。釣り好きで退職後も週1回必ず釣行きする私は黙っておれなかった。
 「釣れる」ではなく「釣る」のである。一心に獲物に集中し五体を絶え間なく動かし常に誘いをかける。帰宅したら体重は約1㌔、体脂肪も釣1%減少する。健康のためにあえて体を動かす私は極端かもしれない。が、冒頭の句にあるような情景には書物以外では出会ったことがない。大げさに言うと釣りキチの目は血走っている。
   (2016.06.04 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

アジサイ 母の墓前に

2016-06-25 13:41:23 | 岩国エッセイサロンより
2016年5月31日 (火)
   岩国市   会 員   山本 一

 わが家の白いアジサイが、間もなく満開になりそうだ。これから6月中旬まで、6種類のアジサイが庭に咲く。
 アジサイが咲き始めると、決まって母を思い出す。病院に寝たきりで、この時季になると、毎日のように種類を替えて生け替えた。
 3年前の6月9日の明け方、前日に私が持って行ったアジサイに見守られ、母は逝った。
 葬儀は、廃屋になった実家のある島根県吉賀町で行った。この時もアジサイを運んだ。以後、毎年命日には、墓をわが家のアジサイで埋め尽くす。
 今年も間もなく、命日が来る。その頃には全てのアジサイが咲きそろう。白に続いて小柄なヤマアジサイ、追い掛けるように赤、ピンク、青系のガクアジサイと続く。
 既に実家は人の手に渡り、古里は疎遠になった。庭のアジサイに「間もなく命日、墓参りをしなさい」と言われている気がする。今年も、墓をアジサイで埋め尽くそう。 

    (2016.05.31 中国新聞「広場」掲載)